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パニック作品

条件


1週間近く降り続いた雨が止み、久方ぶりに雲1つ見えない空に太陽が昇った日曜日。


家々の窓は大きく開け放たれ、洗濯物がベランダや庭に干され丘の上から吹き下ろす風ではためく。


その町を見下ろす丘の上の公園で1人の男が身体を掻き毟っていた。


ボリボリボリボリ


悲痛な声を上げながら身体を掻く。


「痒い! 痒い! 痒い!」


ガリガリガリガリ


Tシャツに短パン姿の男は、身体のあちこちにミミズ腫れが出来る程の力を込めて両手で身体を掻き毟る。


ボリボリボリボリ


ミミズ腫れの幾本かには血が滲んでいるにも係わらず、男は身体を掻き続けた。


ガリガリガリガリ






月曜日


洗い立ての下着や服を身につけた人たちが会社や学校に向けて歩む。


その内の幾人かはむず痒く感じる身体を服の上からポリポリと掻いていた。


火曜日


フル回転している冷房が役立たずに思える程の満員電車の中で、会社員や女子高生が痒く感じる身体をカリカリと掻く。


水曜日


蒸し暑い満員電車の中で、昨日身体をポリポリと掻いていた人たちと半袖から露出していた腕が接触した人たちや、身体を掻く女子高生のスカートの中に手を入れ尻を撫でた痴漢がむず痒く感じる身体をカリカリ掻いていた。


木曜日


町に住む住民全員と沿線の市や町に住む大部分の人たちが身体を掻く。


ガリガリガリガリ


悲痛な声を上げ泣き叫びながら身体を掻き毟る。


「痒い! 痒い! 痒い!」


「助けてーー! 痒いよーー!」


ボリボリボリボリ


金曜日


政府は非常事態を宣言し国防軍の兵士や警官を動員して、身体を掻き毟る人たちがいる地域を封鎖。


土曜日


封鎖地域以外で身体を掻き毟る者が見つかると、防護服とガスマスクを着用した兵士や警官に保護され隔離される。






町を見下ろす丘の上の公園で全身を掻き毟っていた男の身体で培養された突然変異して猛烈な痒みを感染した者に与える白せん菌。


男が身体を掻き毟る事によって生じた微少な皮膚の断片が風に乗り、ベランダや庭に干されていた洗濯物に付着したり開け放たれた窓から家の中に入り込み畳や壁に付着したりした。


それらに付着した白せん菌は蒸し暑い梅雨の天気に助けられ、洗濯物を身につけた者や畳に寝転がった者それに壁に寄りかかった者の身体にうつり、うつった者の身体でさらに増殖して彼等に接触した人たちにも次々とうつる。


条件が整っていた梅雨時の悲劇であった。




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