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理想は儚(はかな)く現実は足音を立てて近づいてくる

 さらに奥に進むと池が見えてきた。浅瀬のエリアが数カ所あり水辺まで近づけそうなので、周囲の家族連れや遊んでる子供達に遠慮することなく池に近づいた。すると運良く、池の向こうから鴨が数羽ほど、こちらに近づいてきたのだ。この鴨たち……流石に公園内にいるだけあって、そこそこ人に慣れているのだろう。


これはシャッターチャンス‼︎


ところが、写真を撮ろうしたら後方にいた子供達も鴨の存在に気づき、騒ぎながらこっちに走ってくる気配を感じた。


当然、鴨は子供達の足音と騒ぎ声に警戒し、速攻で逃げていった。子供達は逃げる鴨を見て、まだ大喜びをしていた。……当然、写真は撮れなかった。




 池の奥には、まだ全体で言えば3割くらいしか紅葉になっていない風景だった。20mくらいに高さの揃った枯れかけた木と緑の木とそしてわずかな紅葉。圧巻な光景とは言えないが、それでも季節の移り変わりを一度に味わえた気がした。


池の隣にある森に囲まれた広場では多くの家族連れが食事をしたり、ボール遊びをしたり、昼寝をしたり、各自が思い思いの好きな事をしていた。最初は、この芝生の場所に座ってのんびりしようかと思ったのだが、子供達の声が耳に入るので、もっと奥に進む事にする。



 広場から離れ、木々が生い茂る森の雰囲気が漂う場所までくると流石に人の数は減った。

ちょうどいいベンチも見つけ、ここに決めた。ベンチの前には先ほど見た池よりは一回り小さい池もあり正面を人がわざわざ横切るスペースはない。これはシチュエーションとしては最高な場所だと思った。これでばしょから入ることには成功した。あとはアイデアを絞り出すだけだ‼︎


ところが、静かだと思ってベンチに座って見たものの、以外と周囲の音が気になってしまう事に気づく。


この場所に来る途中に、ストリートライブのようにハーモニカをひたすら吹いているおじいちゃんがおった。結構離れたつもりでいたのだが、そのハーモニカの音量が微妙に聞こえてくる。


森の中に潜む鳥たちのさえずりも、やたらと騒がしい。目の前の池では水面をバチャーんと叩いたり甲高い声を出す鴨の集団。精神を落ち着かせて、森に寄り添うば寄り添うほどそういう音が気になってくる。それでも我慢して瞑想めいそうしていると、いつの間にか座っているベンチのすぐそば、ほんの1mくらいの距離まで鴨たちが近づいてきていた。人を恐れない鴨の積極的な行動に驚きながらも観察をしていると、やっぱりというか当然というか、どっかの子供達がまた大騒ぎでドタバタ近寄ってきた。……そしてまた鴨が逃げるという、さっきと全く同じ光景リプレーを見る事になる。



……なんなんココ⁉︎ 思ってた場所と違うんだけど‼︎


心地よい静かな場所だと想像していたのに、まるでドッキリのように、突然前触れもなく鴨が池の水面を叩く音が響く。木々の何処かにいるであろう鳥の鳴き声はひっきりなし。微妙に上手くもなく下手でもないおじいちゃんがかなでるハーモニカのメロディーがちょいちょい聞こえる。子供達や親子の遊ぶ声が気になるし、こっちくるなオーラにも動じない。逆光を嫌うあまり日陰の場所を選んだら、めちゃ寒い。



こ、こ、こんな場所で、創作なんて出来るわけないやん‼︎

……鼻水すすりながら、逃げ帰る事にした。



 帰宅途中、自転車に乗りながら『これが公園だから、ダメなのかなぁ〜』とも思ったが、ガチの森林に行ったら行ったで、虫に刺されまくるとか、またトラブルが起きるんだろうと容易に予想出来た。


 と言う事で、アイデアをひとつも浮かぶことなく現調(現地調査)は完全に徒労とろうに終わるのである。

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