真理
まさか、ああも簡単に死んでしまうとは…
気が付いたらいつもの村に転移していた。
よかった、このまま死んで終わりかと思った…。
直後にフタバがやって来たけど、
かなり動揺していたようだった。
確かに死んで生き返るのは不思議な事だけど、
他の冒険者もそんな感じだし特に驚くような事は無いと思う。
そんな事よりも、
良太くんに問いかけても返事が無かった。
私が死んだのはコレが初めてだし、
彼の性格だと、もしかしたら責任を感じて塞ぎ込んでいるかもしれない。
でも私は生き返っている。健康そのものだ。
…いい加減、正体を隠すのは限界かもしれない。
出来る限り黙っているつもりだったけど、
いい機会だし、しっかり事情を説明しておこう。
明日も学校だ、
いつもなら、取るにならない日常のごく一部に過ぎないけど、
良太くんにこの事を説明するとなると、何だか緊張する。
そう言えば学校に行く事でこんなに緊張するのは初めてかもしれない。
…顔が熱くなってきた。
普段は血の気の無い蒼白した顔だと言われているけど、
たぶん今は真っ赤だろう。
何て説明しようか…、
「実は私がマリーでしたー、生きてマース!」
これじゃないな、バカ過ぎる。
「黒田くん、いえリョータくん!今まで黙っていたけど…、そう!私がマリー!安心して、私は生きている!」
─────これだっ!
よし、これでオッケー、
早くもベストなセリフが完成した。
念の為に後何パターンか考えておこう。
シチュエーションも大事だよね、
放課後かな、話しかけやすいし。
場所は…、どうしよ、
帰り道かな…、通学路がだいぶ被っていたようだし。
良太くんが一人になった所を後ろからこっそり近づいて仕留める。
いいかも、いつもの攻撃パターンでやりやすい。
よし、これでオッケー、
ところで、良太くんはマリーが私だって気づいてないよね…、
こんなビシッとセリフを決めて
「うん、知っているよ」
何て言われたら恥ずかしくて、それこそ死んじゃいそう…。
まあ、大丈夫か…、
今まで気づいている様子は無かったし、
それに普段の私は、マリーの時と髪型が違うし、
そこはかとなく、雰囲気も違うしね!
なんだか、テンションがおかしくなってきた…。
生まれて初めて「死」を体験したから無理もないか。
そう何度も味わいたいものじゃないねアレは。
普通何度も味わうものでも無いか、
どうでもいいや、
明日も学校だし早く寝よう。
いや、今日か、もう12時を過ぎているし。
…
…
…
…
…
10月も中旬に入り夜間は気温が一気に下がる。
布団を深く被り、真理は眠りについた。