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プロローグ 或いは、チエ先輩の依頼





「はぁ?裏野ドリームランド?」


『そう、大学の駅のバス停から逆のそれ。』


「あーはいはい、バブル崩壊の煽りで私が小学生ぐらいの時に潰れた心霊スポットでしょう?」



 お盆が終わってしばらくした頃だった。

 もっと言うなら、二十代後半の頃だ。

 昼に、チエ先輩……癸坂智恵先輩は、大学の時の先輩でサバサバとしたコケティシュ?な感じの可愛いより綺麗系だ、それなりにボンでキュな体系の。ちなみに、最近結婚したらしいがまだ子どもはいない……からメールがあり、電話をしたのだ。

 10月中まで裏野ドリームランドに取材に行きたいらしい。


 ただし、この裏野ドリームランドが曲者なのだ。

 7つの噂があって、それが未だに有効らしいのだ。

 かつ、その手のサイトをあまり熱心に見ない蒼真さんすらうっすら知ってた。

 ……だから、かなり有名なんだろう。



『そうそう、なに、ゆみっち何か知ってた?』


「七不思議関係で行方不明者がいて最近増えてる程度には。

 大学ん時ほど、そういうサイト行ってないですし、うまか棒アホ一代も最近更新無いし。」


『うちのとこで、年末に発売する本にその特集組むのよ。』


「控えめに言って、自殺したいですか?」


『そんなにヤバい?』


「霊視しないで、調べても、ガチですよぅ?」


『ラスボス、お城?』


「正解。

 感覚的なもんだけど、赤いんですもん、ドリームランド全体が、特にキャッスルがヤバいです。。」


『………………』


「宿泊費と交通費、フクロウ印二十冊相当の資料か同人誌六万円分でどーです?

 安全を買うなら、最低で宿泊費と交通費二倍で。

 成功報酬でいいですよ。」


『蒼真さん?』


「感だけど、チエ先輩とカメラさんぐらいなら、私だけでも連れ帰れるけど、それだけじゃ終わらないからです。」


『交通手段は?』


「新幹線でしょう?」


『となると往復の、駅前のビジネスだとしても、八千ぐらいだとして。』


「ついでに、週末だとしたら割り増しですね。

 蒼真さんは今、大阪です。」


『二泊だとして、二十万ぐらい?』


「雇える霊感屋、本物じゃなかったら、多分、死ねますよ、昼間でも。

 行くの、夜でしょ?」


『あー、はいはい。

 アマチュアだけど、最低限は仕事する私を雇えって?』


「うん。マジメに、直接知らないのに此処までヤバいのは、無理。

 と言うか、多分、チエ先輩レベルでも美味しいエサは逃がす道理はないでしょう。」


『ああいう楽しむところの妖怪特有の仕掛けを全部食い破るような奴じゃないと生き残れないと思うわね。

 カメラマンも、虎徹さんにするつもり』


「へぇ、やる気じゃないですか。」



 虎徹さん、虎徹鏡こてつかがみを名乗る本名は、加々美大我かがみたいがだったか、ソイツは、写真家だ。

 本名ではなく、通称・トラ先輩で通じる人。

 全く写真で食べれないわけじゃないが、今は栄で居酒屋をやってるオネエ。

 ただし、バイで可愛いもの好きな。

 かつ、除霊(物理)を地で行くようなナイスガイだ。

 外見的には、ピンクとライトグリーンのソフトモヒカンに、ちょっと潰れた鼻が特徴的なガチムチ系な元アメフト部で、殴り合いの喧嘩も大好きないかにも男性的だったのだが、十年ほど前の地震をキッカケに吹っ切れてオネエになったうちのサークルのOB。

 写真家を選んだのもその時のようだ。

 なんというか、私が幽霊関係を頼りにされてたのと違い、物理的な困り事があったら、トラ先輩を頼れ、と言われる先輩。

 金が無くて食ってない時など、バーの皿洗いと引き換えに賄いと少々の金を貸してくれたりするようなそういう先輩だ。

 一応、男も女も、可愛い系が好きなバリタチではある。

 かつ、写真も芸事な範疇なせいか、写真家を選んでから、そういう素養が開いたタイプだ。

 私と同じ『見たものは』信じるタイプのリアリストでもある。

 そして、最重要な点として、最悪チエ先輩を担いで逃げられるぐらいは出来る人だ。


「一応ね、そういうのは解る方だし、解るなりに私には出来ないことが多いってわかってるわ。」


「チエ先輩のそういうとこ好きですよ。」


「とりあえず、また連絡するわ」


「解りました。

 九月末ぐらいでお願いします。」


 チエ先輩の電話が終わった後、時計を確認する。


 夜の十時前。

 本来なら、かけないけども、「オネエちゃん」で登録してある番号を回す。



 しばらく して出たオネエちゃんは、相変わらずだった。

 それを聞きつつ、話をズバンと切り込む。


「チエ先輩から話行きました?」 


『聞ぃたわよぅ!

 ゆっちゃんが連絡するってことは石?』


「はい、なるべく早く、勾玉十円サイズの水晶系であれば種類は問いません、四キロ。

 後、トラ先輩の人差し指ぐらいで水晶で剣を十本。

 お願いします。」


『本気ねぇ。

 北海道のあれ、繰り返す気ないみたいで安心したわ。』


「あれはねー、それに近くて遠いもの、 昭和って時代はね。

 だから、ある意味で復讐戦だよ、これはね。」


『わかったわ、そうちゃんも来るのよね。』


「そう」


『なら、そっちもついでに用意するわ。

 サドゥじゃないけど、私もそっちだしね?』


「生きて、無事に帰るぞ?

 駅近くの小樽食堂かはなの舞なら次の夜飯に奢るわね。」


『うふふ、楽しみにしてるわ。』



 そんな会話をトラ先輩と交わした。

 今思えば、立派にフラグになってた。


 本当にね、どうしようもない。





作中で言ってる前の事件云々は、百物語内でいつかは語るお話。

今は、「あ、なんか昔ミスしたんだなぁ」程度で。


しかし、トラ先輩。

頼りになるのに、自分のアバターをソフトモヒカンにするあたり謎なお人だ。




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