08話ダンジョントライ
3年の修行を終え準備は整った。整ってしまった。
野良ゴブリンとの試し戦闘も何度も行い、槍でさくさく刺し殺せた。
弾丸の魔法もボッとかいって着弾して楽勝だった
自動目測と弾道予測からの自動照準補正を追加した。
打ち下ろしや打ち上げではまだ誤差が大きいがまあ十分だろう。
さて、町を探しにいくか
とか言ったら怒られるだろうか?
ただ、ダンジョンよりも、町に行く準備のほうは
残念ながらまだ足りてない。
言葉の確認と服がないのだ
元着ていたものはズタボロの糸くずと化しており
今は皮のふんどし状態である
小動物の皮をつなぎ合わせてなんとか身につけている状態で、
なめしの質も悪く、臭い。
打開案は盗賊狩りか、盗賊するか、物乞いするかしかない状態だ。
というわけでやはりダンジョンを覗いてみようと思う
ダンジョン向けの用意として
開閉式ランタン(木製の外枠、陶器の油壺、金属の反射板)
楔、手鏡を持っていきます!
保存食、水、ロープ、シャベル、寝具なんかは基本装備だからな忘れてるわけじゃあない。
入り口に着くとキノコの食いカスと魔石が落ちているので拾う。
中は相変わらず暗く音もしない。
ゴブリンが出てくるのにグギャグギャ聞こえてこないってのが
やはりおかしい、何らかの遮音が行われているのだろう。
「UI」を警戒モードに変える。
全天に暗視、サーモ、動体強調、金属探知、を合わせて起動し
「矢よけ」も起動する
モードとかいってもUIの配置と起動する術式のプリセットだ
暗視は視界全体に使い、
それ以外は視界上部に帯状表示した半透明の全天に被せる
土の壁面は触るとぽろぽろと崩れる。
崩落が怖い、下り坂は結構急な坂道だ。
少し進むと道はゆっくりと曲がり始めた
ん、まてよ?
これだけ暗いってことはゴブリンは暗視能力があるのか?
意外と面倒な能力だな。
どういう仕組みだろうか?捕まえて調べとけばよかった。
ちなみに暗視とサーモはほぼ同じ仕組みだが、
暗視はこちらから照射することで
反射からより自然な像を得ることも出来る。
ただし当然発見される可能性があがる
サーモは一定温度以上のものに色をつけるようにしている。
黒体放射ってすげー。魔法のセンサーさまさまである。
動体検知は周囲を映像から立体的に把握し
大きく動いているものを明確に強調する。
坂道が水平に変ったところで道幅がだんたんと広がった。
壁際を警戒しながら進むと
部屋?で出口側の壁際にゴブリンがたむろしていた。その数5匹。
今までの最大は3匹でそれも1度だけ。毒キノコで倒れていただけだ。
同時戦闘は2匹が最大であり、森の中では殆ど1匹だった。
動揺してワキが痒くなる
あわてて袋から弾丸をつまみ出し、照準、と口頭で起動する
対象へ直線が引かれ手もとの弾丸に繋がると
弾丸の向きが修正されるのを指先に感じる
魔法が機能したことを感じて心に余裕が生まれた、
指を離せば、ブッと音を立てて発射され、
ボッと命中音を立ててゴブリンが倒れる。
「ギッ!?」っと驚きの声を上げるゴブリンたちに
さらに追撃を発射し、3匹まで倒した
一匹は掴んだ石を投げつけてきており、
もう一匹は棒を構えて駆け寄ってきていた。
「グギィィーッ」とゴブリンの甲高い叫びが響く。
俺は練習どおりに槍を構えて横へステップしながら
突っ込んできたゴブリンに槍を突き込み即座に引く
同時振り下ろされていたゴブリンの棒は当然空振りし、
勢いそのまま倒れて転がる。
なにか喚いているが無視して投石を回避し、弾丸を構えて発射した。
戦闘はあっという間に終わった
声に引かれて増援がくるかもしれないので
聴覚拡張を起動して警戒する
まだ突いたゴブリンは生きてるようで弱いうめき声が聞こえる
弾丸で倒した4匹から魔石を抜き出し、死体をその場に1匹、
もう一匹は部屋の真ん中、一匹は壁際、
そして残りは道を少し戻って設置した。
死んでいた5匹目のゴブリンは真ん中に重ねておく。
棒は一本残して回収する。
持ち込んだ木の枝を同じように設置し、
死体を設置していない壁際にしゃがみ込んで休憩を取り、
弾丸を作成しつつ、死体を観察する。
ダンジョン内でのゴブリンの死体の消え方を
観察しなければならない。
外では末端から時間をかけて解けて
霞になるように消えていった。
途中経過はとてもグロ注意だった。透過光処理とかしてない。
ここが自然洞窟ならば同じ消え方をするだろう。
しかしダンジョンならば違うのではなかろうか?
テンプレならばダンジョンにはマスターと核があり、
内部の生命体からエネルギーを集めているとされる。
または巨大な魔物の一種とする説もある。
単純な構造物で防衛要塞である可能性もあるが、
前者2つならば死体はエネルギーとして吸収されるはずである。
消える際の霞を吸収するのか、消える前に吸収するのか、
棒は残るのか?枝は?
そもそもダンジョンが
様々なコストと吸収したエネルギーの収支をとるには
不合理な気がするのだ。
どうみてもコストのほうが大きい気がする。
内部の魔物は招き寄せるにしろ生み出すにしろ、
その設置コストがかかり、さらに維持コストがかかる。
ダンジョン構造の拡張と維持のコストも考えれば
魔物は外部から招きよせて内部で死なせるのが良い。
維持コストなど払う必要がない。
つまり、この中では魔物が日夜殺しあったり
餓死したりしているわけだ
何か目的を持ってダンジョンに入ったとして
それが叶わないと分かれば、普通は逃げ出さないだろうか?
確かに出て行くゴブリンはいても、
入っていくのは確認できていない。
しかし、ゴブリン以外が出てきたところを確認できてない。
ダンジョンに魔物が入る仕組みは入り口とは別にあるのだろうが、
人間は入り口から入る理由が分からない。
人間がダンジョンに入る理由と、
魔物がダンジョンに留まる理由は同じだろうか?
そして下層に行くほど強い魔物がいるというのは
ゲーム的で意味不明だが
実際このダンジョンは入り口付近はゴブリンばかりなのだろう。
そんな益体もない考察をしていると死体に変化があった
そのままにしておいた死体が地面に沈み込んでいる!キモイ!!
ビビッて自分の足元を確かめるがなんともない、ふぅ。
一息つきつつ他の死体もみるとやはり沈み込んでいる。棒もだ。
どうやら解ける前に吸収されるようだ。
思ったより吸収開始が早い。
これだと多数との長期戦になった場合回収が難しいかもしれない。