50話娼館、そしてなんとなく旅立ち
先を行く女について娼館内を行く。
そこかしこからアレな声が聞こえてくる。
防音魔法さん仕事してください。
やれるマダムを詰め込んだ夢のエロマンションだ。
「あら、声が気になる?」
挑発してくる娼婦がいた。
「まあ、そうだな。少し気になるな。」
「興奮しちゃったかしら?」
この国でのあえぎ声のパターンが気になる。
シーハーシーハーでは萎える。洋物もニワカだ。
説明しようが無い。
「さ、ここよ」
部屋に着いた。せっかくだから俺はこの赤の扉を選ぶぜ。
廊下を歩いていてもそうだったが、やはり香の匂いがキツイ。
まあ、カットできるんですがね。
部屋はそれぞれの娼婦に宛がわれた仕事場兼居住空間でもある。
部屋の主それぞれの内装や、家具が置かれている。
他にも部屋はある。1Kではない。
「荷物はそこに置けばいいわ。それにしても大荷物ねぇ。」
「ダンジョンから殆ど直でここに来たからな。」
「何が入ってるのかしらね?なら、お湯は居るかしら?」
体を拭くためのものだ。こういう場所だから当たり前の作業だろう。
「もらえるものなら貰おう。荷物は肉と皮と魔石ばかりだよ。」
たわいの無い会話をして、装備を外し、湯を貰い、体を拭く。
魔法でなんとかしていたが、やっぱり拭いたほうが気持ちが良い。
何日風呂に入らずに居られるか試してみたことが有るが、
どう頑張っても一ヶ月が限界だった。
でも毎日はメンドイ。それが風呂。
しかし、働いて汗をかくなら毎日入らないといけない。
社会人なら身だしなみ云々というわりに、
労働時間にも経費にも含まれない。
ああ、なるほど。
体を拭くという過程で肉体をアピールするわけだな。
不潔かどうかも分りやすい。
さて、問題は股間の拭い方である。
カッコいい股間の拭き方とはなんぞ?
この思考実験は消防が学校のトイレで堂々とウンコする、
リア中が街中で堂々と連れの女に触る、
パンツにしか見えない下穿きで空を飛ぶなどといった
論理的に恥ずかしい行為を堂々と行なうことで
恥辱を跳ね返し、そのうちにあるセクシャリティを引き出す。
姿勢、視線、動き。全体的にまず恥ずかしがるような
隠そうとするようなしぐさはしてはいけない。
恥じらいはまた別。
動きに無駄や、失敗、迷い、ブレがあってはならない。
細かく下を向いてこそこそせずに、
まだ熱い湯で絞った手ぬぐいを楽しむように
前を向いて背筋を伸ばし、布全体で大きく、ダイナミックに拭く!
拭き終わったら簡素な服に着替える。
装備を外すことが滅多に無いので使うことが無かった。
買い込んだものを広げて食事を始める。
「あなたってスラムで前に噂になってた仮面の冒険者よね?」
一緒に料理を摘みながら話す。
お酒は控えるとか知識はあるのだろうか?
「どんな噂か知ないがそうだろう。質問仮面とか言われたな。」
「ああ、やっぱりそうなのね。いろんな噂があったけど
ホントにずっとダンジョンにいたのねぇ、すごいわぁ。」
なんだか分らんがスゴイらしい。
ほめるのも娼婦の接待テクニックだろう。
流れるようにほめる。そのプロ根性がすごいわぁ。
その後名前も聞いて無かったと思い出し、名前を聞いて、
おなかの音を聞かせてもらったりしてお喋りしてから寝た。
一人でただ、寝ました。
仕事用と生活用のベッドは別にある様だ。切り替え大事。
こっそり抜け毛などを調べてみたが、
病気の有無はやはり良くわからない。
魔法で水の問題がなんとかなってるので
疫病は流行り辛いのかも知れない。
朝になってもグースカ寝ていたら起こされた。
「おはよう。もう昼よ。ホントに何もしないし、
寝てても仮面とらないし、いつまでも起きないし、
ホントに変な人ね。」
笑われてしまった。
そろそろ仕事の準備をするということで
荷物をまとめてチェックアウトした。
料金はちょっと良い宿屋素泊まりに色着けた程度で済んだ。
お姉さんとのお喋り料金だ。これは得したと言って良い。
良く考えるとこの世界に来て初めてベッドで眠ったのだった。
道理で良く眠れたわけだ。
大体いつも昼まで寝ているのだが。
地下室に放り込んでいたものをどうやって回収しようか悩む。
他の冒険者は宿の部屋に備え付けの箱か、預かり屋を使う。
どちらも高額なものを置くには不安がある。
チャリは預けられないな。
通りを歩いて宿屋に再度当たってみるが、やはり満室だった。
聞いてみれば宿屋とは、2泊3日とかの客室は殆ど無く、
月、年単位の賃貸の面が大きいそうだ。
流れの冒険者や商人は町の外でキャンプしているものも多いという。
それがまた発展すればスラムだ。
外にはダンジョン向けの宿も出来たがもう満室らしい。
冒険者居すぎじゃないかな?
しかし賃貸か。ここでやっていくなら必要なのか。
どっちかと言うと小さな土地を買うほうが安定なのだが。
そこまでしたらこの町から出られなくなる。
ダンジョンでの戦いは外よりも安全度が高い。
ここで出来るだけ良い魔石が欲しいとは思うのだが、
大狼の魔石は良い部類だ。あと何層潜れば得られるのか分らない。
出会いも無かったし、
ここで一旦切り上げて、旅に出るほうが良いのかも知れない。
大分強くなったとは思うが、層を降りるたびにツエエ奴が現れる
こんな状況で安穏としているほうがおかしいと思うのだが。
領主や盗賊の問題がどうなったのか知らないが、
町は何の変わりも無く動いている。
道具屋や屋台を冷やかして回る。
結局これだというような技術や商品は見つからなかった。
町を出てダンジョン街の酒場へ行く。
今日は飲んで食ってクダを巻くぞ。
「主人~、俺の小屋なくなっちまったよ~」
「ああ、そうだな。」
「マールクは元気でやってるのかぁ?」
「ああ、やってるよ。」
「若手の冒険者はうまくやってるのか~?」
「ああ、やってるよ。」
「盗賊はなんとかなったのか~?」
「ああ、どっかいったよ。」
「そうかぁ~」
夜になってから
スラム跡地の小屋の有った場所へ向かう。
テクスチャを張って身を隠し、穴を掘る。
荷車を組み立てチャリにつなぐ。荷物を積むと結構な量だ。
大狼の大腿骨を見て笛を作ろう!と思いつく。
きっと魔法の笛っぽいことになるに違いない。
穴を片付け、チャリに跨り、新たな旅に出発するのだ。
ここからは一端の冒険者として。
これで一区切りとして、一旦更新を終了します。
元々ほっといてもダンジョン以外の問題は
マールクたちがすべて解決していたことであり、
こいつの存在はイレギュラーでしかありませんでした。
続きがあったとしても同じような感じでチンタラするだけでしょう。
書いてないことは多いですが、やりたいことはやった。




