49話魔物図鑑と満室
食事を終えほろ酔いで酒場を出る。
感覚は正常に機能しているようだ。ちゃんと酔える。
来た道を戻って冒険者ギルドに入る。
仕事を終えて戻ってきた冒険者が増えていた。
若手ばかりで知っている顔は無い。
「なんだありゃ?仮面?」「あれ大狼の革だぜ。」
「ださくね?」「あの格好は無いわ」「悪い奴か?」
なんかいろいろ言われているがまあいい。
受付嬢に酔った勢いで突撃だ。
「魔物の情報を買いたい。」
「はい、どのような魔物の情報でしょう?」
うん?単品バラ売りなのか?一々買いに来るの面倒じゃね?
だけど、普通は何階層も進む目的でダンジョン入らないからな。
「できるだけ沢山知りたいのだが、
いくら位かかる物なのか分らないんだが?」
金が足りない場合、さらに売りに出す必要がある。
「でしたら資料室にて図鑑の一定時間の貸し出しを
有料でご利用できます。3時間からで~…。」
それだとばかりに有料3時間パックで一気読みすることにした。
しかし資料室は町のギルドにしかないので、移動する。
宿探しがどんどん遅れて行く。これはまずい。
OCRはあまり進歩していないが、
癖字になりやすい文字の傾向は把握した。
間違って変換しても頻出単語を利用して誤りを検出し
補正することで対処できる。
魔物図鑑というからには挿絵も多いだろう。
画像圧縮技術も取り入れた。
素人考えなので大した圧縮率は出ない。不可逆圧縮だ。
色幅を分けて輪郭だけ記録し、中間色で塗りつぶし、合成する。
版画っぽい。2値化まで持っていけばまんまだ。
あとは基礎的な数字の圧縮だ。
メモリ上の長い数列は素数で探索して数式にして短縮する。
これがマナコンピューティングだ。なんつって。
逆に長くなりかねないところがしょぼい。
安直な輪郭線は数学的な曲線に置き換えられれば
さらに圧縮できるかもしれない。検出が難しい。
BASICで遊んでいたときはLINEで描いて、FILLで塗っていた。
ちなみに「BASIC FILL」でググると女性用下着がヒットするぞ。
そんなこんなで町ギルドに到着し、魔物図鑑を複製した。
だんだん持ち運ぶ魔石が多くなってきた。
随時大きい魔石に移行してはいるのだが、図鑑は嵩張る。
うろうろしている内にすっかり夜だ。
ついに宿屋に泊まるときがキタ。
冒険者ギルドの有る通りのすぐ近くには冒険者向けの宿屋がある。
前から目をつけていたのだ。
女将は樽のようだが、娘は可愛らしい宿屋を。
「すまないね、満室なんだよ。
この時間じゃどこもそうじゃないかね?」
予想通りの展開がキタ。あ~困ったなこれは困ったな~。
通りの宿屋に当たってみるが言われたとおりどこも満室だ。
寝る場所が無いな~これは仕方ないよな~。
適当に屋台で夕食と酒を買い込み、ふらふらと移動する。
俺は娼館にたどり着いた。
「いらっしゃいませ。新規のお客様で
いらっしゃいますでしょうか?」
「ああ、そうだ。」
「ではこちら宿帳となっております。
ご記帳をお願いできますでしょうか?」
記帳しながら説明を聞く。
「普通の宿を取ろうと思っていたのだが、どこも満室でな。
正直眠れさえすればいいのだが。」
そういって契約不要の者が居ないか聞く。
やっぱりまだ契約するわけには行かない。
「本当にそのような条件でよろしいのでしたらば、
少々お待ちください。」
そういって受付は奥に引っ込んでいった。
待機している女たちとの話し合いに行ったのだろう。
俺の言ったことは真意も図りづらい話だ。
娼館に来て女を抱く必要が無いというのだから。
しかし、避妊具なしで妊婦とするのはいただけない。
だからシステムとしては存在していても
基本的には選択されないものなのだろうと思う。
だが、上手くいけば双方にとって利点もある。
相手を見定められるという利点だ。
こちらが約束を守れれば、俺の理性の信用度が上がるだろう。
俺からすればこの娼館を偵察できる。
バイオハザードが起こっていないか?
大妖怪が現れたりしないか?だ。
たとえば
クラスの仕事であまり接点の無い女子と行動してたら
急に土砂降りにあってしかたなくラブホに入るアレ。
あの展開って望ましいと思うだろうか?
俺からみれば詰んでいるといいたい。
理由どおりに手を出さなければインポ、意気地なし。
手を出せば嘘つき、理性の無い性獣扱いだ。
女側にとって良かろうが悪かろうが噂が広まる可能性が高い。
よってそんな状況になるべきではないと思える。
ヤリタイならヤレば良いとは思うが。
そうこうしている内に受付が一人、女を連れて戻ってきた。
「ホントに何もしなくていいならアタシんとこ泊ってもいいわ。」
受付はめちゃくちゃ丁寧だったが、女のほうはフランクだ。
唇が印象的な少しタレ目の美人だ。
もう結構おなかが大きい。安定期という奴だろうか?
精神的に余裕が無ければこんな話は受けられないはずだ。
「ああ、問題ない。飯も買い込んできたしな。」
こんな風にスタンスを決めて、
嘘でもいい相手ならいくらでも喋れるのだが、
日常生活はそうは行かないのがつらい。




