41話反省Ⅱ
荷物を片付け、もくもくと一匹を解体する。
まただ、また油断していた。
これから先、ずっとこれが続くのだ。
反省というより自虐が始まる。
自虐というのは、自分に能力が無いことを言い訳にして
難しいことをしなくてすむようにお願いする行為だ。
要するに逃避と怠惰だ。
何もしなくても親族に迷惑をかけ続ける。
かといって何かしても失敗して他人に迷惑を撒き散らす。
失敗しないように努力すればいいなんていうのは
出来る奴の言い分だ。
想像以上に出来ない奴がやらかす失敗を、
想定できる「出来る奴」はあまり多くない。
いや、元の世界でも俺はずっと油断し続けてきた。
なんとなーく、いろんなことがどうでもよくなって、
なるようになっていくんだろう。と高をくくっていた。
そしてズルズルと40歳無職童貞大学中退ヒキオタヒョロガリメガネ
になったのだ。このフレーズももう懐かしいな。
たとえばこの生活を文章にして公開したとしよう。
それは油断以外のなんだろうか?
親に刺されたなんて出だしからして親に見せられない。
それどころかこんな自虐と妄想丸出しの公開露出などしていると
リアルでバレたなら、他人であっても
顔を合わせられないのではないだろうか?
正直言ってイカレていると思われるだろう。
イカレうんぬんでいえば
はじめて生き物を殺して解体するとき、
平気でないのは、残酷だからとか見た目が気持ち悪いから
ではなくて、単に臭くて汚らしいからだ。
と、俺は考えている。
元の世界には死体の解剖動画というものが存在する。
医療や司法の関係で公開されてるのか理由は知らない。
モニター越しなら臭いは感じない。
ぐちゃぐちゃに腐っていたりするとさすがに気持ちが悪いが、
そうでないなら逆に興奮を覚える。若い女性死体ならなおさらだ。
新鮮な肉は美味しそうですらある。
フェイクかもしれないが、不埒なことをする解剖もあった。
よく、転生モノで死体を見たり獲物を解体して嘔吐するシーンに
んなわけあるかと、いつも思っていた。
奴らは悪臭すら「耐性」で防いでいるのだから。
多分、臭ささえなければ憐れみの方が先に来るだろう。
それから子供の頃、皆はどうだっただろうか?
昆虫採集をしたことは?
俺はコオロギを捕まえて蟷螂に食べさせて遊んでいた。
足や羽を取って遊んだこともあるし、
蟻の巣に水を流し込んだこともある。
それから粘土で人形をこさえては、
いかにめちゃくちゃに破壊するか考えていたし、
わざわざ内臓を作って入れたりしていた。
どうだろう?こんな文章を晒して油断してないといえるだろうか?
ネットなんて少しも匿名じゃない。
本気で調べようとすれば国内の通信はおそらく丸裸だ。
俺がやらかす失敗を、ニコニコしながら見ていてくれる
そんな環境でもない限り生きていかれないのだ。
俺という存在そのものが油断の塊であること
わかってもらえると思う。
だから俺はこれから先も油断して失敗し続けるだろう。
そんなことをぶつくさ考えながら解体は終わり、
脛当ての修復に入る。
ここでは太陽光は使えない。
買った油に火をつけその熱を操作し、作業する。
空気の熱量を使えば部屋が寒くなるし、
宇宙を行く運動エネルギーを使えば微々たる量でも
星の運行にどんな害が出るかわからない。
とりあえず直ったが脆くなっている可能性もある。
作り直したほうがいいかもしれない。
それにしても大蛇は強かった。
これで魔石は殆ど据え置きなのだからたまったものではない。
来たときにいた冒険者たちは腕利きなのだろうか。
それとも何かコツがあるのか。
こういうときやはり現地人の仲間が欲しくなる。
いや、そもそもソロで何でもしようというのが
間違いなのではないだろうか?今更過ぎる話である。
今更ついでだが森のことについて未だに人に聞いてない。
資料を見ればわかると思っていたのだが、資料にも無い。
噂も無い。どうやらあまりに常識過ぎて話題にもならないらしい。
日本でだって缶詰の蓋の開け方は話題にもされない。
缶切りって缶詰が出来てから大分後に発明されたらしいぜ?
臨時PTに参加してみるか、新人を見繕ってPTを組んでみるか。
だが俺と同じような癖のあるソロ冒険者とは
PTを組みたいとは思わない。
それって俺も敬遠されるということではないだろうか?
できれば女性冒険者と交際を前提としたお付き合いがしたい。
結婚ではない。結婚は人生の墓場だ。
この時点で高望みであり、アウトなのだろうか。
さて、もう一戦やらかすか、もう帰るか。
あー迷うなあ、また迷うなあ。なぜか帰りたくない。
大蛇に安定して勝つには弾丸を除いてだと
頭部にしっかり攻撃を当てることだろうか。
その一撃で頭部を破壊できればいいが、難しい。
体に当てるのも難しく、当ててもほとんど怯まない。
なのでできるだけ弾く。弾き返して返して間合いを取る。
そうやってダメージを蓄積させるしかない?
尾を叩きつける攻撃も相当の威力だった。
相打ちに出来たが、微妙だ。
あ、槍が曲がってたりしないだろうか。確認しなければ。
近づきすぎれば締め付けももちろんあるだろう。
確実に骨が砕ける。
パワーも瞬発力も想像以上だった。
遠距離安定すぎる。
しかし、弓であの皮膚と筋肉をどうにかできるのか?
頭が悪いから毒肉でもくれればいいのだろうか?
大蛇に毒って効くんだろうか?わからん。




