38話九層とスライム
くっそムカつくモテモテ大狼葬別会が終了し、
俺は九層入り口へとたどり着いた。
最後に打ちのめされた俺はその場で休息を取らざるをえなかった。
なんだこれ?なんだこれ?なんでこんなに心が痛いのか?
大狼はそんなにイイ雄だったのか?
あんなところに陣取って雌を侍らせてたのが悪いのではないのか?
ていうか、魔物にこんな知恵があるのか?
これから八層でやりづらいじゃないか。
九層以降を拠点にできればいいのだが。
抱えた大狼の革を再び被るのに少しためらったが、
仕方が無いので被りなおした。
するとなんだかすこし、感じが違う。軽くなった?
いや、ちょっとちがう。調子が良くなった。
というのが適切かもしれない。
あの送別会の特殊効果だろうか?
しかしこれ、新しい魔石を手に入れたらどうすりゃ良いんだろうか。
まあいい、考えても仕方が無い。俺は九層へと階段を下りた。
九層には誰も居ない。不人気階層らしいからな。
それ以前に魔狼を狩れるPT自体がそんなに多くは無いようだ。
スライムというからには扉を開けなくても
この広場に入って来かねない。あまり油断できないだろう。
ゴブリンのコンボウにコボルトの皮を先端に巻きつけ、
油を染み込ませれば松明の完成だ。
だがそれでは効率が悪い。黒い煙が出まくりだ。
燃焼効率を上げ、青い炎を作らなければならない。
油瓶に紐を刺し芯にして火を点け、魔法で酸素を十分に送り込む。
炎が青くなった。不純物も紐を上る間に濾過されるというわけだ。
本当かどうかはしらん。
一旦火を消して準備万端。扉の向こうを確認する。
すぐそこに一匹スライムが居た。とても近い。
どういうことかね?
スライムはぬるりとこちらに近寄ってくる。遅い。
まずは見。どこに魔石があるのかわかればまず負けない。
だが、スライムは不透明でどこに魔石があるのかわからなかった。
半透明じゃない…だと?
しかも黄緑色だ。これは優秀なスライムですね。
大体、核が弱点なのに半透明だなんてテンプレのほうがおかしい。
不透明一択である。進化論的に考えて。
それにしてもやりづらい。遅いし、位置が低い。
いきなり尖って突き刺されそうで手が出しにくい。
まずは離れて床ギリギリの高さで弾丸を撃つ。
ボンッと音を立ててスライムは破裂した。
弾道ゼラチンより柔らかいようだ。
そしてジワリと形をなくして広がっていく。
ん?死んだ…のか?よくわからない。
元の形は床にベッタリと張り付きながらも
中央が少し盛り上がったような形だった。
それがまったいらになってしまった。魔石はどこに行ったのか?
飛び散った破片も良く観察すると、
一個とその近くだけまだ動いている。他は全部まったいらだ。
なるほど、核と大きく分離させれば動かなくなるのか。
再度合体しようとする欠片に今度は槍で遠くから攻撃する。
槍の穂先を加熱状態にしてつんつんしてみる。
ジュワっと音を立てて蒸発する。
スライムは嫌がるように避け始めた。
べたりと押し付ければジュワーッと音を立てて縮んでいく。
もんじゃ焼きがたべたいなあ。
周囲でうにょうにょ動いていた欠片も動かなくなった。
今度こそ死んだようだ。
弱い。弱すぎる。
核から一定量組織を引き剥がせば死ぬようだ。
接近しない限りまともな攻撃手段も持っていない。
小さくなってしまえば触手をびゅっと伸ばしてきたり、
酸を吹いたりもしない。一応武器で攻撃すると酸で壊れるらしいが
俺の槍は酸にも強い。蟻の酸を使って試し、改造した。
こういうスライムは暗い天井から音も無く垂れ下がってくるのが
基本的攻撃パターンの待ち戦法なので仕方ないのかもしれない。
明るいので、避けて歩けば10階まで行けるんじゃなかろうか?
魔石を穿り出して射程を確認すると魔狼と大差ない。
大狼でいくつか段階を飛ばしているだろうから、しかたない。
ここを足がかりにするために、スライムの魔石は大目に
確保しておこう。魔法用としても優秀だ。
俺は同様にしてスライムを狩りまくった。
誰も居ないし、とてもおいしい狩場だった。
そして十層に到着した。
モンスターを解体するPTが一組いた。
解体しているのは巨大な蛇だ。
コボルトやゴブリンなら丸呑みできそうだ。
人もいける…のか?
いわゆる大蛇。モンスターとしてはよくある感じだし、
結構歴史深い存在だが、あまり強いという印象が無い。
攻撃も毒、巻きつき、体を打ち付けるぐらいしかなさそうだし。
まあ、その毒が強力なのかもしれないが。
毒対策はそこまで難しくない。
ようするに毒液の進入を拒めばいいのだ。
先着PTに軽く挨拶すると、部屋の空いてるところに陣取り
休息を取りつつ、毒対策魔法を考える。
毒のサンプルが手に入ればいいのだが、
声をかけて少し分けてもらうとか難易度が高すぎる。
毒がかかるだけで酸のように溶ける的な表現もよく見る。
食いつかれたならダメージは覚悟しなければならない。
噛まれる気はもうとうないのだが。




