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37話ダンジョントライⅣ

行きがけに道具屋で燃料を見繕うが油は結構高い。

品質もイマイチで臭い。これでは結局割に合わない。

イフリートボトルがほしい。又は盗賊のおねいさんがほしい。

通行料分のスライムを倒す最低限を用意して道具屋を出た。


ダンジョンに着いたら、なんだか妙に若い冒険者が多い。

練兵場で見かけたようなのまで居る。

ああ、そうか冒険者に被害が出たからだ。

その分子供たちが稼がねばならないのだろう。

引率する冒険者の姿も見える。

これを利用すれば新人とPTが組めるかもしれない。


だが、今回の目的はリベンジとさらに先へ行くことだ。

足手まといがいてはどうにもならない。

ジャイアントアントの魔石を使ってエレベーターで七層へ降りる。

よくかんがえるとダンジョンマスターの魔法でこれらの仕組みを

構築していると考えると、相当に高度な魔法ではなかろうか?


七層に着いたら背負っていたカートと荷物を降ろして

まずは馴らしと、使った分の回収を兼ねて、アリを倒す。


地派を使えるようになっている今の俺は以前とは違う。

槍で十分にアリを倒せる。

アリの動きは画一的で思考が殆ど感じられない。

誘えば酸を吐き動きが止まる。

その隙に近づき、相手の対応を誘えば、前足かアゴを出してくる。

どちらかを見切って払い避け、アゴならそのまま首を突く。

足なら足の付け根を突く。大抵続けてアゴが出るので後は同じだ。

だが、他のアリが突っ込んでくるか、酸を飛ばしてくる。

どちらも避ければ同士討ちだ。

酸なら飛ばしたほうへ向かう。

突っ込んできたなら絡まっているところを好きに突く。


アリを問題なく処理して荷車に乗せて広場へ戻り、

魔石と酸袋、甲殻を少し補修用に確保し、八層に進む。


今回も一つのPTが解体作業を行なっていた。

軽く挨拶をして扉の向こうを覗く。何も居ないようだ。

「大狼なら見てないぜ?」

話しかけられた。

「見てたら俺たちゃここにいないぜ。」

「ちげえねえ。ま、俺は逃げ切るがな。」

何か言う前に勝手に話が進んでいく。

こういうときに口を挟むタイミングを計るのが苦手だ。

「噂は聞いてるぜ。ここから見えるところに

大狼が張ってたらしいな。それを一矢打ち込んだだけで

扉の先に乗り込んだってよ。」

「とんでもねえ命知らずだぜ。」

「やつらは用心深い。矢が届くような場所に陣取ることも無い。」

「秘密の切り札って奴が気になって仕方ないぜ。

また準備してきたのか?」

三層のアイツ広めやがったな。

「まあ、な。だがアレとやりあうのはもう御免だ。」

適当にごまかす。

「まあ、気をつけろよ。ソロってだけで命知らずすぎるからな。」

心配された、イイ奴過ぎる。軽く手を振って扉を潜った。


さて、ここからだ。

修行を積んだとはいえ、槍で一度に相手できるのは2、3匹が

精一杯だろう。鼻がいいので曲がり角で待ち伏せされれば

非常に厄介だが、このダンジョンは狩らせるために出来ている。

通路はほとんど待ち伏せ不能な形になっている。

代わりにこちらも待ち伏せできない。

さっきのPTが狩った後だから少し先に行かねばならない。


しばらく進み、遠吠えや、足音に混じる爪の音。

それらを聴覚拡張で探知する。

カートを手放し、弾丸を指の間に挟んで四発構える。

連射に悩んだ結果の新技、4wayだ。

ハッキリ言って微妙な感じだが、先行初撃には悪くない。

姿を見せた3匹はこちらに突進を始めているが、問題ない。

それぞれに一発づつ打ち込み、一匹は倒れたが、

2匹はそれでも向かってくる。

だが動きに余裕が無い。払い避け、払い避け、突く。

通常なら一匹目が即座に切り返してくるだろうが、

手負いで踏ん張りが利いてない。

遅れた一匹目が向かってくるが、同様に倒した。


3匹ともオスだった。

徒党を組んでナンパでもしていたのだろうか?


その場でナイフで切り込みを入れたら魔法で一気に皮を剥ぐ。

あっというまにズル剥けだ。正直グロい。

血抜きしてあればまだマシなのだが、

こんなのがゾンビ犬として襲い掛かってきたら泣く。

皮は畳んで脱水して終了。魔石、牙、爪、腿を取って荷物に加える。


腿肉は食べるのではなく、スライムに使ってみる予定だ。

肉に気を取られている間に核を何とかできるかもしれない。

けっしてゾンビ犬予防ではない。


八層となると大分短い。

奥は広いが、九層へ向かう最短経路はクルリと回ってすぐだ。

奥には魔狼の巣があるらしい。

巣に子が居たりすると殺気立っていて大変危険だそうだ。

子魔狼を育ててテイマーになるルートを考えるが、

なんだか余計にヒロインが遠ざかる気がする。

それに、毎日散歩するのもだるい。おそらく、距離がヤバイ。


最短ルートを進みながら魔狼を狩る。

なぜか一部は踵を返して去っていく。

そして倒した魔狼はすべて雄だった。

装備してる大狼素材が原因だろうか?謎だ。


わざと弾丸を当てなかった魔狼も

十分に対処できた。手ごたえを感じる。

魔狼の突進を受け流してもパワー不足は無い。

きちんと当てることさえ意識すればいいというのは存外に楽だ。


驚いたのは魔狼の咆哮に効果があったことだ。

何かを叩きつけられたような衝撃を受け、バランスを崩した。

慌てて飛びのいて体勢を整えることが出来たが、ワキ汗がやばい。


これも魔法の一種だろうか?だとすれば防御方法を検討したい。

だが、今回は九層を目指す。メモに残して、先に進んだ。


そして九層入り口広場の扉前。

10匹以上の魔狼に待ち伏せされていた。


賢い。行き先はわかりきっているんだからこうなる罠。

大狼が居ないのがせめてもの救いだが。


絶望的な気持ちでほうけていた俺を見て、

しかし、魔狼たちはこちらに気づくと弱めに遠吠えしてから、

一匹だけこちらを見据えて「歩いて」近づいてきた。


なんだこれ?!どうする、迎撃すべきなのか?

槍を握り締めて考えるがどう考えても異常だ。


迷っている間に近づかれてしまった。

魔狼は俺の横を通り過ぎるのかと思ったら、

被っていた大狼の革の匂いを嗅ぎ、頭をこすりつけ、小さく鳴いた。

別れの挨拶がしたいってのか?


俺は仕方なく大老の革を外して魔狼へ差し出した。


すると魔狼は遠吠えし、待ち伏せていた魔狼たちも近寄ってきた。

そして魔狼に囲まれてしまった。

ケモナー大歓喜かもしれないが、俺は残念ながらケモナーではない。

モンよりトレーナーの方に興味がある。

新しい現地妻を毎年作って旅をしたい。

魔狼たちは大狼の革の匂いを嗅ぎ頭をこすり付けていく。

それが一通り終わると、揃って遠吠えし、そして去っていった。

全部雌だった。どんだけモテモテだったのかこの大狼。

嫉妬の炎が心を焼き尽くしそうになる。

ざまあとか思っていた己の矮小さがさらに絶望を深めた。

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