32話奴隷商と裏?の遊び
なんだか腹が立ってきたおれは思い切って奴隷商へと赴いた。
意外にも奴隷商は貴族街近く、上流寄りの地域にある。
とりあえず相場を聞く程度ならいいだろう。
たどり着いたそこは、
大きな屋敷へ続く広い庭の前の門だった。
あれ?おかしいな?おれは店に来たのであって
屋敷を訪ねたわけではないのだが?
屋敷前の門番2人に話しかけてみる。
「ここは奴隷を商っているお店であっているでしょうか?」
おもわず丁寧にならざるを得ない。
「なんだおまえは?…町で噂の仮面の冒険者か。」
知名度フラグはクリアしているようだ。
「そうだ、ここが奴隷商会だ。」
「最近、被る革を変えたと聞いていたが、それが大狼の革か。」
鎧と革を変えたことによって、熊革と竹アーマーはお役御免だ。
それにしてもイメージと違いすぎる。
これでは相場を聞くどころか、商品の質も見えない。
いや、高級に見えすぎる。実際高級品なのだろう。
これは手が出ない。
「私は町を散策するのが楽しみでして、立派な屋敷だと聞いたので
遠目にでも見てみようと思ったのです。」
「お前は日がな一日ブラブラして買い食いしていると有名だな。」
「そうか、だが、あまり近くをうろうろするなよ。
サッサと行け。」
しっしと追い払われたが、門番の質もすこぶる良い。
この世界では奴隷は高級奴隷タイプなのだろうか。
キッチリ教育した有能なタイプだ。
逆に尻に敷かれかねない。
孤児院とは別の意味で遠い。
ここで奴隷を買うということは貴族の客にも近づくということだ。
面倒ごとの匂いがぷんぷんする。
来たときと同じように、貴族などに捕まらない様にさっさと帰る。
ことごとく俺のヒロイン計画は頓挫した。
「やることがないな。」
衣食住がみたされ、ダンジョンでそこそこ稼げるようになり、
コツコツやれば貯金も貯まるだろう。だが、それだけだ。
だからラノベの主人公達はあんなにイベントと戦い、働くのか。
そうしないと全く間が持たない。
表の楽しみが無いなら裏だ。博打を打ちに行こう!
気を取り直して賭場のある下流に向かった。
貴族街にも高級なカジノが存在するらしいが、
入りようが無いしな。
しかし、まだ昼だ。賭場が開くにゃまだ早い。
今のうちに賭場でどんなゲームが行なわれているのか調べよう。
近場の鍛冶屋に向かう。
ファンタジーに鍛冶屋は欠かせない。
だが、剣や槍はサンプル程度が飾ってあるだけで、
他にもナイフや鍋、釘が少し展示してある。
武器の数打ち品は騎士団や、兵士からの発注以外に存在しない。
冒険者の装備はその余剰や横流し品か、拾いものか、
オーダーメイドだ。
炉に火が入る一定期間のみ鍛冶仕事をし、
そうでない時は研ぎや受注など他のことをしている。
酒場で知り合ったドワーフの親父がそう言ってたから間違いない。
というかその親父の店だ。
「何の用だ酒弱仮面。」
「親父さんコンニチハ、ケツで酒飲むのは試したか?」
「試すわけねーだろバカ野郎!」
なんでも親父は酒で酔いつぶれたことが無いのが自慢だそうで、
なら酔いつぶれる方法を教えてやると
点滴とケツで飲む方法を教えてやったのだ。
「チッ、根性無しめ。酒を愛してるんじゃねーのか?」
「冷やかしなら帰れよ?」
ふざけすぎたようだ。
「いや、用はある。
賭場でどんな賭け事が行なわれてるのか教えて欲しい。」
「今日は質問仮面か。つうかここは鍛冶屋だ、どあほうが。
武器を注文しやがれ。」
「わかった。針をくれ。」
「しけすぎた注文だな。針なら作り置きだ、ほれ。」
俺は針を擦りつつ魔法で磁化し、糸で真ん中を縛った。
が、糸が太すぎて役に立たなかった。おいぃ。
「仮面野郎は頭がおかしいってのは本当らしいな。」
「うるせえ地元のちょっとした呪いだったんだが失敗した。」
「呪いだと?魔法か?店で変なことすんじゃねえぞ?」
「いや、大した呪いじゃないんだが…それより賭場のことだ。」
「もうどうしようもねえなコイツ。賭場な。一寸待ってろ。」
そう言ってごそごそと奥から何か持ってきた。
それはカードとダイスとメダルだった。
「うちで注文受けてんだよ。それでな…」
ルールとコツの説明を受けた。親父も賭場には良く行っている様だ。
しかし、金属カードかよ。まだ分厚く、透かしにくい。
眼球反射を見てもカードを伏せられたら読めない。
「イカサマ対策はどうなってる?」
「イカサマは気づかないほうが悪い。」
「罠に飛び込むとかバカじゃねーか?」
「それを見破って逆手に取るのが面白いんだよ。」
「それを傍から見てるだけなんだろ?そいつはどうせサクラだ。」
「確かに俺は見破ったことはねーがよ…」
つまり、イカサマで散々かっぱがれた挙句、
やらせのヒーローショーでイカサマを見破り、
賭場のヘイトを下げてるわけだ。
まあ勝てないだろうが、少し勉強させてもらいに行くか。
俺は鍛冶屋を後にした。




