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21話メシとテロ

ちなみに大きいのは大狼、取り巻きサイズは魔狼だそうだ。

中級になれば町のギルドの資料室が使える

読めるなら、そこで調べろとのこと。

資料室で代読みは有料だ。世知辛い。


さて、これからどうしよう?


1、即刻資料室へ突撃する

2、帰って素材をいじる

3、帰って魔石を確認し、組み込む


1ははっきり言って無謀、言葉は会話中心に習得しており、

読むためにはしばらく学ぶ必要が有りそうだ。

2は資料を読んでから行ったほうが

より適切な結果が得られるかもしれない。

3が安定。少なくとも射程が延びるだろう。


よって312の順で消化する

素材がカビたりしないように保存処理を1の前に挟む。


大狼の魔石は射程75センチとなり、

オーガからざっと2倍近いMPという計算になるはずだ。

これまでと同じ手順で実験を繰り返しながら皮を燻したり、

肉の燻製を作ったり、雑草を刈ってほしたり、

貯まっていた雑事を行う。


80センチいくと思ったんだけどなぁ、なかなか厳しいなー。

ちゃっちゃと装備に魔石を組み込んでいく。

大きさや形が少し変わっても大丈夫なフリーサイズ設計だ。

これまでの実験から、魔法について色々推論を立てているが、

どこにも確証がない。

極論を言えば、俺が「こうあってほしい」と思ってるから

こうなのかもしれないのだ。

扱える範囲で扱っていくしかないわけだが、

資料室でこの世界の常識的魔法を知っておきたい。


一段落着くとすでに日が沈んでいたが、全然眠くない。

起きたの昼だしな。酒場で飯でも食うか。


酒場に着いた。一人なのでカウンター席に着く。

するとマスターが聞いてくる。

「おう仮面の、酒か飯か?」

「飯で。」

答えた途端に飯が出てくる。はやい、はやすぎる。魔法か。

代金を置く。

「まいど。」

親父が代金を持っていく。


今日のメニューは瓜だ。

皮を剥いてスープで煮込まれ、

半透明の色あいでテカっている。傍らにペースト状の何か。

そしてなにかの草を軽く茹でて水を切って塩降ったようなもの。

「ほう」

思わず感心の声が出る。スラム飯らしく少ない品数だが、

なんとも見栄えがいい。瓜の綺麗な半球形に草の黄緑が映える。

一口大に切り取り口に運ぶ。

噛むまでも無く、舌の圧力だけでつるりと崩れて

スープの味が染み出す。

ご丁寧に内側から筋が切られていて、まったく気にならない。

草のほうは茎ごと茹でてあるのに柔らかく、

歯ごたえ、塩気が丁度いい。

口をリフレッシュしたところで

今度は謎のペーストをチョトつけて瓜を口に運ぶ。

これはレバーに火を通してすり潰し、

獣脂と塩、ハーブを少し混ぜたものだ。

スープと溶けて旨味が口に広がった。

「うマホ」

おもわず日本語が口をついて出そうになるが

慌てて未開語っぽく改組する。


この酒場の親父、前から飯がうまいと思っていたが

スラムらしい荒っぽいものばかりだと思っていた。

だがこれはなんだ?

美しく繊細で巧妙。

そもそも技能がおかしい

この煮崩れ必至のウリをどれだけの数だしたのか?

瓜の水気で薄まるはずのスープは元はどんなだ?

なぜこんなところで飯を出している?


酒場の客の

「なんだよっ今日は肉がねえのか!?」

という粗野な文句が聞こえてくる。


マスターを見ると何か懐かしそうに笑っていた。


食事を済ませて酒場を出る。

メシテロしてみた。これもテンプレのひとつであるが、

俺なりに食事描写を密にしてみた。

せざるを得なかったというべきか。

所詮、美食などとは程遠いジャンクな生活を

送っていた身であるため、短いものだが。

どんなスープなら合うのか、どんな瓜が美しいか。

想像してみてもいい。胡瓜しか食べたことねえ人も。

何かいつもと違う特別な日だったのだろう。


満たされた気持ちと新たな謎を抱えてギルドへ向かう。

だが、途中で見知らぬ男に絡まれた。

「なあ、飯代少し貸してくれねーかぁ?」

酔っているのかフラフラとした足取りで近づいてくる。

「ゴブリンでも狩って出直しおわぁっ!」

適当にスルーしようとしたらナイフでつっこんできた!

「矢よけ」が強引にナイフの軌道を逸らし、

おれ自身も避けて通ろうとしていたおかげで回避できた。

チッと舌打ちして男が逃げて行く。

俺は土球をくらわせた


気絶した男を縛り上げ、担いでギルドに向かう。

舌打ちしたいのはこっちだった。

気分は台無し、面倒ごとの登場である。

予想できる可能性は3つ

やっと盗賊の件が動き出したか

スラムで中位になったことか、ダンジョン八層のPT関係か。

それ以外となるとあやふやなはずだが、


ギルドで、男を引き渡す。

「酔っ払いのフリをして襲い掛かってきた。

失敗した途端に逃げ出そうとしたが捕まえた。」

言ってみて疑問に思う。

なぜ酔っ払いのフリをしていたのか?

なぜ、二の手を打たずに逃げ出すのか?


ただのちょっと目立ってる奴を騙して刺し殺すことに喜ぶような

狂人ならまだいい、面倒が無い。

だが、俺を狙って行なったなら二の手が無いのはおかしい。

時間を置いて、また隙を狙う?

即効性が要らないなら、搦め手でもいいはずだが。


「よく調べてくれ。」

そういってほかのギルド員のところへ行く。


…これも油断だろうか?

小屋の地下室へ引きずり込み、

拷問して吐かせて処理するべきだろうか?

そうすれば人間の魔石も調べられるかもしれない。

だが、せっかくだから、人殺しは後回しにしておきたい。

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