20話反省と解体
やばかった。マジでやばかった。
取り巻きが6匹居たら死んでた。
これはまずい、迂闊すぎるでしょう。
穴からもっと射撃して数を減らすべきだったのが明らか過ぎる。
部屋に戻ったときから
フルプレートの男たちがこちらを見て呆然としている。
魔法がバレるより異様に思われてる気がする。腰がめっちゃ痛い。
コボルトならあの距離あれば倒せてた。
だが八層の狼がコボルトより遅いわけが無かった。
時間をかけて呼吸を整え、怪我を確認する。
打撲と少し捻ったぐらいで済んだようだ。
腰に手を当て「治癒」を念入りにかけておく。
MPが切れないギリギリでと、お願いしながら。
これがあながち効果がある。MPをチョイ残ししてくれる。
やさしみを感じる。
血抜きしながらうつ伏せに転がり、腰を擦っている俺を見て、
男たちが我に返ったようだ。
立ち上がり近づいてくる
「おい、大丈夫なのか?」
「大丈夫、腰が痛いだけだ。」
「そうか、それにしても…」
何か言いたいようだが、問題はこの狼をどうやって持って帰るかだ。
毛皮と牙と爪くらいは持っていくとして、
肉と骨の価値はわからない。
起き上がった俺は血抜きの終わったものから解体を始めた。
数時間かけて解体していく。
その間に、休息を終えたPTは出発していき、
解体を終える前に戻ってきた。
手足の鎧に噛み跡がいくつかあったが特に問題なさそうだ
それぞれ狼を運んでいるが、大狼はいなかったようだ。
魔法使いは傷一つ無い。なかなかの腕前らしい。
男たちは血抜きを始めつつ、
俺がまだ解体していることに呆れた様子だ。
居ない間に皮や肉を乾燥させたり、
骨を調べたりかなりチンタラやってるからな。
でももうすぐ終わる。
持ち帰るものに狼肉と大狼の大腿骨、肋骨を加え、
残りを捌いてその場で焼いて食う。
大狼の肉は臭くて硬くてキツいので腿肉だけ持っていく。
内臓は心臓と肝臓をちょっと焼いて食ってみる。
これはなぜかなかなか美味かった。
心臓はアッサリしていて、肝臓は濃厚だった。
寄生虫とか怖いのでしっかり火を通す。
大狼は雄で取り巻きは雌だった。ハーレムである。
真っ先にぶっ殺してやったぜ、ざまあwww
卑しい己の心に絶望する。
肉をぱくついていると、
鎧を脱いで準備をした男たちの解体作業が始まった。
魔法使いが鍋に湯を沸かし、手際よく作業が進んでいく。
俺が肉を食い終わり、片づけが終わる頃に解体もほぼ終わっていた。
九層を見ておきたいとは思ったが、余剰魔石が無いし、
荷物は一杯だし、疲れた。
不要部位をゴミ捨て場に捨て、準備を終えると
「それでは、さようなら。」と声をかけ、階段を上った。
七層階段広場でジャイアントアントの魔石を使い、
エレベーターに乗り地上へ帰る。
朝ダンジョンに入って今は深夜だ。
なんだかずいぶんと長いことダンジョンに居た気持ちになった。
八層にいたPTがまともな連中で助かった。
もう一踏ん張りだと気合を入れて、小屋に戻った。
小屋に戻ると寝床にダイブし就寝モードで即寝た。
ダンジョンで寝るのもここで寝るのも
安全度はさほど変わらない気もするが、
切り替えというものは大事だ。もう何もしたくないのだ。
起きたら昼になっていた。
地下に荷物を置き、討伐証明をしにギルドに向かう。
証明部位が価値のある素材の場合、
部位の返却を求めることも可能だ。
この証明が終われば中級になるわけだが、
騒がれておかしなことにならないことを祈る。
まあ、妙な流れ者であり、情報だけはある程度回っているはずだ。
それがある程度の成果を見せた。上から見ればそれだけのはずだが、
下からのやっかみ、と見せかけた
上から裏からの仕掛けみたいなのが発生したら嫌だな。
なんていう自意識過剰なメタ読みをしつつ到着。
「お、質問仮面だ」「最近大分喋れるようになってきたぞ?」
「今日も適当に教えて奢って貰うか?」「なんか持ってきてるぞ」
「しかもあいつ字書けるしな」「あいつの家ヘンテコだよな」
仕事もせずに集まってだべっている冒険者どもの声を無視して
討伐証明カウンターに向かい、さっさと済ませる。
「おっちゃん、これたのむ」
自分より年下の髭もじゃのおっさん受付に荷物を渡し説明する。
登録時に年齢をさば読みして登録したので俺は20台扱いだ、ははは。
狼は毛皮が証明部位のため返却希望で頼む。
「二層踏破してきたと思ったら、
いきなり大狼やってきやがったか!」
デカイ声でおっさんが暴露し、ギルドにざわめきが広がる。
「おい、でかい声で言うなよ、妬まれるだろ?」
俺は負けずにデカイ声で言い返した。
仮面で見えないので、うざいジェスチャーをつける。
やはり大狼はレアだったようだ。
清算を終え新しいランク章に付け替える。
一気に中級下位の一端の冒険者である。
通常PT単位で狩った場合、功績は頭割りであるが、
俺はソロで狩って清算したため、一発である。
とにかくこれで町に入れる。
ギルマスによる大狼の毛皮の確認があるため、
大狼討伐ぶんの正式昇格は後日となる。
毛皮の破損から攻撃の質を読ませないために
細工もしてある問題はない。
ちょっとした誤字修正。




