17話スラムと管理ダンジョンの謎
それからしばらくはだれも来なくなったので、
思い切ってそこらへんの奴に話しかけ言葉を教わる。
ギルドなどにもいってひたすら聞きまくった。
おかげで「質問仮面」などというあだ名が付いてしまった。
おしえてくんは嫌われるのが世の常だが、
さすがに知らないことが多すぎるのだから仕方が無い
それでも、食い物を振舞えば多少は話を聞いてくれる。
難しい話は見かねたギルド員が教えてくれた。
このスラムどうにもおかしいと思っていたことがある。
おっさんしか居ないのだ。
スラムの孤女児を助けてプリンでも食わせて
餌付けするテンプレが出来んではないか!?
その謎の答えはこうだった。
スラム出身のマールクさんが怪我をして
引退することになったとき、スラムと壁一枚挟んだ町の下層街に
私財を投じて孤児院を立てたそうだ。
そしてスラムの改善のために立ち上がり、
様々な活動をしてきたとのこと。
スラムの若者は兵士や冒険者となり、若い女は町の男と結婚し、
おばさんは孤児の世話、スラムの家族は集合住宅地へ入り、
仕事を斡旋され、子供たちには簡単だが学ぶ機会があるという。
その結果、元のスラムにはグダグダのおっさんしか残っていない。
そろそろ町の施設もまとめてスラムは撤去され農地に変えるらしい。
グダグダおっさんたちはその強制労働に当てられるそうだ。
当然、スラムにはいろいろ悪い奴が巣食っていたし、
領主との癒着もあったようだが
邪魔者はほとんどマールクがぶっとばしたそうだ。
引退とはなんだったのか?
おかげでマールクは領主とはあまり関係が良くないらしいが、
町の税収は上がったので強くもいわれないとのこと。
無能領主ですか。面倒ごとが起こりそうだ。
マールクさんまじで立派すぎる。
おかげで俺も助かったけど、スラムテンプレは完全につぶされた。
孤女児を風呂に入れて洗えば、かわいくなるテンプレが。
まだ風呂が用意できてないが。
で、管理ダンジョンは本当に大丈夫なのか?と聞くと
まずダンジョンについて説明された。
ダンジョンは周囲の魔物を集める。規模はコアに比例する。
コアはダンジョン内の生物や、死体からエネルギーを得る。
エネルギーが満タンになるとコアは再生する。
つまり再生するためにダンジョンが形成されるらしい。
再生とはコアの元の魔物がよみがえるということだ。
当然強力な魔物であり、復活すればとんでもないことになる。
だから復活する前に空のコアに交換し、
貯まったエネルギーは吸い出して利用するそうだ。
なるほど、だから森のダンジョンには
ドラゴンさんがイラッシャッタンデスネ。
復活した場合、さらに活動可能になるまで
エネルギーを貯めるため、しばらく留まる。
それをダンジョンボスとか言うらしい。
管理迷宮にはボスが居ないが、
最下層はそれなりに強力な魔物が多く、
コアの守りは騎士団が固めているそうだ。
騎士団より魔物のほうが強そうwww
迷宮を作り出せる強力な核を代々受け継ぎ、
術を行使するものが貴族なのだそうだ。
ふーんって感じである。
ようするに、新しい核を手に入れるすべも無く、
失敗すれば森のように滅ぶ。
そういう仕組みらしい。
バカ貴族は領地がふっとんで自動的に死滅するわけだ。
巻き添えになるほうはたまったもんじゃないな。
この町も大分ヤバイんじゃないのかと言う気になってきた。
もし、マールクがおらず、ここがただのスラムのままだったなら
スラムと最寄の林を往復し、
冒険者にもなれず、ダンジョンにも入れず、
悪漢や冒険者と戦い、捕まえて無理やり言葉を覚える。
そんな日々が待っていただろう。
お尋ね者にならずに言葉を覚え、町へ入る金を得るのは難しく、
無駄な時間を浪費していたに違いない。
どっちルートがよかっただろうか?
うまく孤児を餌付けして言葉を習うパターンがあったとして
裏切られたら心が立ち直れない気がする。
さて、そんなこんなで1月かけて大分言葉も覚えた。
練兵場にも通った。
マールクに土器の茶碗を一つ譲ったりした。
間接的に助かったお礼である。
マールクの家はスラムの一番下流にあった。
子供の頃、村を襲われ、親とスラムに住み着いたとき、
こういう下流の端っこに住んでいたという。
開いた土地を勝手に耕し作物を作って売り、
その金でマールク一人を町に入れ
冒険者登録させたそうだ。
そう、今でも町で登録するのとスラムで登録するのでは
大分扱いが違う。
練兵場で腕を確かめ、直接人柄を確かめ、
中位に届く可能性があるとした上で、
やっと登録が可能になる。
登録後も、町への出入り制限は中位になってからだし、
ダンジョンで問題が起こればすぐに疑われる。
だが、スラムから町へ入らずとも
ダンジョンへ入れて依頼が完了できれば
チャンスは大きく広がるとして出張所を作らせた。
マールクが片腕を失ったのは領主の謀略であり、
暴動寸前までいった。
領主と癒着したギルド員を追い払い、
ボイコットと交渉の末、今の状況を得たという。
ボイコット中、騎士がダンジョンの魔物討伐を行ったが、
多くの騎士が失われ、
その装備を得た騎士系の魔物が発生し下層は大変危険だそうだ。
この町の領主がやばいことが明らかになった。