16話ダンジョントライⅡ
冒険者証を首にかけ、ノペスとハロワを出ると昼を過ぎていた。
説明の結果、早速やってみる仕事も決めていたので、
ノペスは仕事は済んだとばかりに帰っていった。
言葉を聞きまくったからな、疲れたんだろう。
腹が減ったので小屋へ戻り、準備して、干し肉をかじりつつ、
件のダンジョンへ向う。
下位の依頼は殆どが常設依頼であり、ダンジョンが指定されていた。
ちなみにランクは文字が違うので巧く言えないが、
アルファベットでいうならばA級から始まりZ級まであるとのこと。
そして現在、Z級の冒険者は存在しておらず、予定も無い。
その力は天を突き、海を割り、大地を砕くと言われており、
古代から受け継がれる神話の中でのみ語られているが、
夜空に浮かぶ月の模様がその証拠であると言う。
あーなるほど。古代が超ヤバイことはよくわかった。
だから滅んだんだね。
俺はそんな風に納得した。納得は大事だ。
記録上実在した最高位の冒険者はS級といった所のようで
彼が言った至言にこうある「神話と比べるな。」だそうだ。
大体4段階に分けて、下位、中位、上位、超上位となる
Sランクでは超上位にはまったく届いていないわけだが、
Sランクですら現在存在しないらしい。
中位にあがれれば町への出入りは自由になるとのこと。
結構ハードル高い。
マールクさんは中位の最上級で上位寸前だった、
怪我さえなければもっと上へ行けたとノペスは熱く語った。
と回想しているうちにダンジョンに着いた。もう夕方である。
町の外に大きな石造りの建物があるのはとても不思議だが、
万が一の時は閉じ込めるための物らしい。
リアルな万が一とか見たくないものだ。
周囲にはスラムとはまたちがった出店やキャンプ、治療施設があり
臨時のPTを募集するものが立て札を持って座っている。
なんでも声で呼び込むのは禁止だそうだ。
混ざって判らない上に、五月蝿いからとのこと。
ただ、読み書きが出来なければ意味が無く、
そのおかげで信用度も高いという。
門番に冒険者証を見せて入場記録をつけてもらい、
ダンジョンへ踏み入った。
中は森のダンジョンとはまるで違い、
壁には松明が光る石造りの回廊というテンプレダンジョンだった。
しかも有料だが最下層までいけるエレベーターが存在している。
ダンジョンには種類があり、
管理ダンジョンと自然ダンジョンがある
細かいことはよくわからないが、
管理ダンジョンは人間の手によって核が管理されているそうだ。
それによって安全に運用できるらしい。とてもうさんくさい。
自然ダンジョンは強力な魔物やその死骸が核となり、
形成されると言われている。
これは古代の神話からの推測だそうだ。
ダンジョンの地図や、出現する魔物の情報などはすべて有料であり、
無一文の俺は買うことは出来ない。
よって、自力でチマチマと探索するしかない。
最初は多くの冒険者とすれ違った。
ゴブリンよりも人間のほうが多い。
すりこぎ棒を持った主婦のようなのまで居る。
腕章をつけているのは見回りだそうだ。
しかもそんなに広くなく、すぐにマップは埋まり、
次の階層へと進む。
二層はぐっと広くなったが、まだゴブリンしかいない。
食事休憩をとりつつ二層を踏破する。
ダンジョンというより沢山狩らせるための施設であり、
ひたすらに長い順路を歩かせられ、ゴブリンを狩まくった。
弾切れ対策にゴブリンの牙、指、角などを代わりにしてみたが
軸合わせが効かないため、精度がわるい上に威力もいまいち。
角が比較的マシだった。
三層入り口に着く頃にはゴブリンの耳と魔石で
ズタ袋が一杯になった。
耳を刈るのはこのダンジョン又は町近くで刈ったことを
証明するためである。
二層の入り口と出口の階段は扉を挟んだ壁で隣接しており
門番に通行料を魔石で払うことですぐに帰ったり飛ばしたりできる。
一層で通行料を稼ぎ、三層へショートカットするのが
セオリーであったようだ。
魔石の売買はギルドが管理しており、
個人の売買は逮捕案件だそうだ。
疲れたのでさっさとダンジョンを出てギルドへ帰った。
ギルドでゴブリンの討伐と、通行料を支払ったときに貰った
二層踏破証明を清算する。
二層踏破証明はランクアップ要件に含まれており、
これだけで一気に2ランクUPである。
それだけゴブリンを間引くことが強く求められているようだ。
大量のゴブリンの魔石と耳を換金し、
スラム酒場の食事代に換算すると100食分以上稼いだようだ。
食事問題はほぼ解決した。
受付の親父が何か言ってニコニコしている。
聞いてみると「やるじゃねえか」とのこと。
んなこと説明させんなっと引っぱたかれた。
弾丸を使う俺からすれば簡単すぎたが、
普通は武器が壊れるほどゴブリンと戦うため、
難易度は低くないそうだ。なるほど。
金は大体ギルドに預けてランク証を付け替え、酒場に向かう。これからは外食生活だ。