13話スラムギャング
君は鬼だぁ~と、叫びぃ~たいっ身包み剥いでみ~よぅ
腐り落ちた手、足にぃ~蛆がわぁ~いてるぅ~♪
そんな歌がぴったりなスラムの朝、
こんどは隻腕大男マールクが一人でやってきた。
分かりやすいジェスチャーしながらなんか言っている。
槍を持ってついて来いということだな。
だが荷物番がいないので困る…といことはない。
建築時に収納用の穴を掘っておいたのだ。
叩いたりしても空洞が分からないよう念入りに掘った。
そこに荷物をつっこみ蓋をして固めて偽装してしまえば、
そうそう開けられないし見つけられない。
荷物にも追跡用に色々仕込んである。
俺はいつもどおりの武器と防具を身に着けて、
ついていくことにした。
歩きながら考える、やっぱり一人は知り合いを作らないと
町でやっていけないよなと。
だが、スラムでマッチョに目をつけられるとか誰得だよ?
これが出版バージョンになったりすると、
美人だけど言葉遣いの荒い女シスターとか
赤毛の女戦士のアネさんとかになったりするんだ。きっとそうだ。
死んだ目をしながら俺は歩いた。
ついたところは上流に進み壁際を東に回った広場。
結構な数の男たちが木剣などを持って集まっている
俺をよってたかってタコ殴りにするつもり…
ではなく、訓練をするようだ。
一体全体この集まりは何なのだろうか?
よくみると男たちはずいぶんと若い。10代前半がほとんどだ。
子供にしか見えないものもいる。
おっさん(俺)の場違い感はんぱねぇーwww
めっちゃ肩身が狭いんですけど!
マールクのほうを見ると
先端にクッションのボロ布を巻きつけた長棒を渡してきた。
ああ、訓練に参加して、腕前を見せろってことですね。わかります。
自分の槍はカバーをつけて背負い木槍を振ってみる。
穂先が無い分少し軽い気がする。
これはあれだ昔カンフー映画で見て真似しまくったコン術の
振り回したり、地面にバシンと打ち付けたり、
小脇に抱えてスピンジャンプしてみたりするアレ。やりたくなる。
森でもやってみたが全然標的に当たらないし、
繋ぎも難しいし、目が回るしで、
引きこもりのオッサンが実践で扱えるわけが無かった。
よって自重した、自重できた。
なんか急に人が増えて浮き足立ってるからやばかった。
槍は場所を食うので、振り回さない動作の練習を並んで行う。
いきなり試合とかじゃなくて良かった助かった。
縦に構えたところから振り下ろし、上中下と突きまくり、
下から振り上げ、逆に構える
そこからまた繰り返しである。そんなのを昼まで続けた。
・・・俺まだ朝飯食ってないんですけどね?
ふらふらしてきたんですが?
昼になると手を叩いて休憩の合図。
薄い塩スープとカチカチのパンが運び込まれ振舞われた。
参加賞という奴だな。
子供たちは食い終わるとさっさとどこかへ帰っていった。
俺の仮面が気になるようでちらちらと見られていたのが恥ずかしい。
大人も半分くらいは帰っていく。強制参加ではないようだ。
じゃあ俺もと思ったところでマールクが一人若いのをつれてきた。
はい、試合ですね、畜生帰りたい。
硬化をしない土弾をいくつかこっそり用意する。
試合場に立ち、マッチョの合図で試合が始まる。
構えたところから、
開始と同時に俺は思いっきり真横に横っ飛びに飛びのき、
前回り受身し、転がり起きると
相手は槍を引き戻しながらこちらを見ている、
間合いの外だ
スキルとかあるんじゃないかと警戒して、大振りに避けたが
普通の突きだった。だが普通の突きだ。
戦いというやつは、はじめて3年程度ごときで
小さい頃からやってるような奴に追いつけるもんではない。
早さも鋭さも、動きの無駄の無さも言葉通りの段違いである。
俺は懐からソフト土弾を取り出すと、指弾に見せかけて発射。
同時に飛び出し、土弾が命中しパンとはじける、片手で突く。
土弾が太ももを叩き、防御の槍に力が乗っていなかったおかげで俺の槍が腹を捕らえた。
押されて相手は後ろに倒れた。マールクの掛け声がかかる。
マールクが倒れた若いのに駆け寄り
弾の当たった場所を確かめている。
土がついているだけだと分かりほっとしたようだ。
俺はもうひとつ作っておいた物を見せて渡し、
指ではじくジェスチャーをして見せた。
だが、なんだか腑に落ちてはいないようだ。
とにかくこれで終わりだと帰ろうとすると、若いのに捕まった。
もう一勝負しろと言われているようだ。
しかたない、俺自身もっと強くならねばならないし、
どのくらいできれば普通なのか知らなければならない。
マールク監視の下、出来れば寸止めという形で
日が沈むまで突き合った。
断じてホモではない。仮面は死守した。
ちなみに殆ど負けた。どうも防御が下手すぎるようだ。
課題である。
しかし、若手でこんだけ強いとなると
マールクはとんでもなく強かったんだろう。
そんなマールクがあの太っとい片腕を失うような相手とは
一体なんだろうか?
若いのは町住みのようで、軽く手を振って帰っていった。
俺は槍を杖代わりにヘトヘトになりながら
マールクとスラムに帰った。
マールクの機嫌は良さそうだった。
俺は小屋に入り即寝た。なにもかも明日やればいい。そう思った。