39.色あせた世界
ボクは考えても結論がでそうになかったので、素直に聞いてみました。
「赤の方々は、ボクにどうして欲しいですか?」
「少し待って貰っていいですか? 皆と相談したいので...」
「分かりました。待ちます」
シーマさんと他の冒険者さんたちは、離れた場所で相談し合っています。10分ほどして、シーマさんが冒険者さんたちを連れて戻ってきました。
「オレたち、高レベルの冒険者となると、依頼をこなしているときにしか生きている実感がない。依頼をこなしている時だけが世界が輝いて見えているんだ。それ以外の日常的な世界は色あせて見える。本当に退屈だったんだ。金を使ってイロイロやってもダメだったんだ。それが昨日から変わったんだ、シンがラーマちゃんさまが冒険者ギルドに連れて来てからだ。シンが始めたイベントは刹那の時間くらいは、この退屈な日常を楽しませてくれると思い、みんなノってみせた。当然ひとりで終わると思っていた。それが結局誰にもそのイベントを終わらせることが出来なかった。本当に衝撃だった、ラーマちゃんさまの登場は衝撃的だったんだ。そして、まだ、今もこの日常が輝いて見える。もしここで引いたら、ラーマちゃんさまとの関わりを無くしたら、きっと元の日常に戻ってしまう。あの色あせた世界に戻ってしまう。それだけは本当にイヤだ。ここに希望者から集めた金貨10万枚があります。ここから、ここの家賃分を引いた金額を毎年お支払いいたします。この宿屋を契約して、オレたちに警護の許可をお願いいたします。オレたちをあの色あせた世界に戻さないでください」
「「「「よろしく、お願いいたします」」」」
シーマさんの涙ながらの熱い言葉の後に、シーマさんを含めて冒険者10人が土下座のお願いをしてきました。
「ちょっとお待ちください。リシュケシュブロックの土地管理業者の代表として言います。ここの家賃はタダで構いません。ラーマちゃんさまがここにお住みになり、ラーマちゃんさまの許可次第だと思いますが、高レベルの冒険者がこの付近を真剣に警備してくれるってことですよね? もしそうなれば、ここの治安も良くなり、居住希望者も増え、家賃収入も増えます。普通に高レベルの冒険者に依頼をすれば、ここの家賃以上の費用がかかります。そもそも引き受けてくれないでしょう。元々、借り手のなかった物件です。こちらは家賃をタダにする以上のメリットがあります。状況によってはお支払いしてもいいくらいだと思います。シーマさま、家賃分を引かずに、そのまま、ラーマちゃんさまにお渡しください。そして、ラーマちゃんさま、ここでお住みになられて、シーマさまたちへの警護の許可をリシュケシュブロックの土地管理業者の代表としてお願いいたします」
土地管理業者の代表さんも土下座してきました。
家賃を払う所か、住むだけで年間金貨10万枚、日本円で10億円を貰えるんですよ。それに涙を流してまでの土下座のお願い。大丈夫だとは思いますが、土地管理業者の代表さんのお願いを断ったら、このブロックに住めないかも知れないです。メリットしかない、この状況で断れる人がいますか?
ボクは無理でした。
「分かりました契約します。シーマさんたちの警護も許可します」
「「「「「うぉお~~~~~~~~~~~」」」」」
みんな立ち上がり、腕を上げて喜んでいます。でも、続けないといけない言葉があります。
「皆さん、静かにしてください。まだ、言っておきたいことがあります」
場が静かになったので、言わなければならないことを言います。
「あと銀の方ですか? そちらの方と調整して警護の担当が平等になるようにしてください。銀の方々もきっと皆さんと同じ思いをしてるんですよね? 赤の方だけで独占しちゃうと大きな争いになると思います。もし赤の方の人が立場が逆だった場合、どうしようとしますか?」
「・・・・分かりました」
複雑な思いがあったと思いますが、理解してくれたみたいです。ですから、ボクは感謝の意味を込めて言いました。
「その代わり、今はマナと2人かいないので、確約はできませんが、離れの宿屋を開放して、皆さんをおもてなしできるようにします」
「「「「「うぉお~~~~~~~~~~~」」」」」
「ラーマちゃんさま、さいこーだぜ」
「おめぇなら宿代いくらだす?」
「金貨200枚でもいいぜ」
「そうだよな、それくらいはいけるよな」
「オークション形式でよくねぇか?」
「ナイスアイデアだぜ」
「貯めて、貯めて、貯めてこんで、記念すべき、初の泊り客を競り落としてやるぜ」
「オレも初の泊り客を狙うぜ」
「大きい部屋もあるから、1人じゃなくてもよくねぇーか?」
「うちのパーティ全員の金集めて競り落としてやる」
いや、あの、宿代無料でもよかったんですが...。盛り上がりすぎて、もう無理そうです。
スルーしていましたが、『10万枚、10万枚、10万枚』とマナはずっと呟いていました。




