291.女狩猟豹 その10
「お嬢ちゃん、行くぜ」
お姉さんは、そう言う前から、動き出していました。
先手の方が普通は有利ですからね。
特にお姉さんみたいなスピードタイプにはね。
それに、ルールは有って無いようなモノです。
盗み勝負で、勝った方に、負けた方が従う。
ただ、それだけです。
お姉さんは、手堅く武器狙いっぽいです。
簡単に盗れそうなモノは武器かネコ耳ニュケーションのセットくらいですからね。
フェイントを入れつつ、ボクの死角を狙っています。
これくらい動きなら目を瞑っていてもなんとかなりそうです。
お姉さんの右手が腰の短剣に向けて伸び始めました。
「【乙女流】の前では、動いたら負けなんですよ」
お姉さんは、ギルド長だけあって、それなりに出来そうな感じです。
でも、ボクから見れば隙だらけだったので、いつものつもりで、思わず、投げ飛ばしそうになりました。
だけど、今回は、そう言う勝負じゃ無いんです。
投げ飛ばしても意味が無いです。
仕方ないので、お姉さんの攻撃をギリギリのとこで、身体をひねりながら、かわすだけにしておきます。
お姉さんに、ボクの動きが見えるように、ゆーーーっくりと動きます。
「ちっ、ぬかせ! でも、この盗賊ギルドに来るだけあって、なかなか、やるな、お嬢ちゃん」
イヤイヤイヤイヤイヤイヤ、ストレスが溜まるくらいゆっくりな動作ですよ。
「大したことじゃ無いですよ。それに、お嬢ちゃんじゃなく、ボクは男です。さっき、言い間違いましたけど、名前は、ラーマ・オトメです」
やっと、性別と名前が言えました。
ボクのセリフで、一部の盗賊ギルドの構成員(?)たちの顔が青くなりました。
「やっぱり、本物じゃないっすか!」
「噂通り、マジで可愛いし」
「オヤビンじゃないけど、ネコ耳と尻尾、サイコーらおー」
「オレもファンクラブに入ろうかなぁ」
「オヤビン、本物っすよ。手を出したら、めっちゃヤバいっすよ」
ヤバいのは物理的ですか?
それとも社会的ですか?
まぁ、どっちもヤバいんですけどね。
「か、賭けは有効だ。だから、あたいが勝てば、全て丸く収まる」
そう言えば、そうですね。
この勝負をする事は、ボクもOKを出しています。
ですから、勝負自体にはお咎めがないでしょう。
「無理っすっよ。あのシンを軽くあしらえるって噂っすよ」
一時期はシンにボコられてましたけど・・・。
ボクの新しい弱点が見つかるまでは、しばらく安泰です。
いえ、これは、フラグじゃないです。
ずっと安泰です。
「噂は、噂だ。現に、あたいはお嬢ちゃんの動きが見えている。なかなかやるみたいだが、これくらいの相手なら余裕だ」
そう思われるように、手の内を見せてますからね。
「お姉さんには、手を出させませんから、手を出した時のお咎めは考えなくても大丈夫ですよ。お姉さんをボクが一方的にヤるだけです」
可愛くないって言われる性格を全力全開です。
【乙女流:生存術:武装解除MAX】
武器、上着、ズボン、聖衣の上下を順番に剥いでいきます。
聖衣は、ピンク色のフリルの付いた可愛らしいデザインでした。
そして、聖衣の下も使い込んでいるわりに、ピンク色・・・いや、なんでも無いです。
一瞬にして、お姉さんは、真っ裸になりました。
「お姉さんから、盗めるのは、後、心くらいしかありませんが、まだ、続けますか?」
盗賊ギルドの構成員(?)たちは、状況について来れずに口を開けてポカーンとしています。
お姉さんは、顔を真っ赤にしましたが、取り乱すことなく、両手で胸を、尻尾でクロッチ部分を隠しました。
あー、やり過ぎました。
ほんとに、やり過ぎました。
可愛くないって言われる性格を全力全開はマズかったです。
ここまでするつもりは無かったんです。
むっちゃ困りました。
「お前の勝ちだ。さっさと望みを言え」




