251.ラーマ食品加工 その4
「色が変わるまで、じっと我慢です。色が変わったら、鍋を回しながら、焦げ付かないように注意します。そして、これくらいの色になったら、残りの水をそっと入れます」
ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
「後は、全体が馴染むまで鍋を回してカラメルソースの完成です」
最後の水を入れたところで、結構、驚いた人がいました。
カラメルソースがかなり跳ねるので、火傷しそうですし・・・。
「味見したい人は・・・・・・全員ですか。午後から、プリンの補充分も作って下さいね。それと、今回は、1人プリン1口ですよ」
鍋の温度調節用のダイヤルを回して、出来上がったばかりのカラメルソースを冷やします。
順番にプリンをスプーンでよそって、カラメルソースを付けて味見していきました。
当然、不評なわけありませんよね。
「あたしも、カラメルソースを作っても良い?」
ワクワクした表情で聞いてきました。
「もちろんです。作れないと、説明が難しいですからね」
「私は、こちら側で作りますね」
ラクトさんは、空いている場所で、作り出しました。
「ジィッタもやるのー」
鍋を片手に持って、両腕を上に挙げて、参戦のアピールです。
出来上がりの結果は、ジィッタ、ラクトさん、クレアさんでした。
ジィッタのは、色と香ばしい良い匂いも完璧でした。
ラクトさんのは、若干、色と匂いが薄い感じです。
クレアさんのは、ほんの少し焦げた匂いがするかなぁって感じで、ギリギリ及第点だと思います。
初めてやって、これなら充分スゴいです。
「この娘・・・、ジィッタ料理長はほんとスゴいね。野生の勘とか天性の勘か分からないけど、勘が良いんだよね。あたしじゃ、料理の腕前で勝てる気がしないよ」
クレアさんは、お手上げ状態のジェスチャーをしてます。
「ボクもジィッタに純粋な料理の腕では勝てないと思いますよ」
「そうですよね。嫉妬するくらいの腕前ですよね」
ラクトさんも、ジィッタ腕を認めたようです。
「2人とも、ジィッタに勝てる部分で頑張って下さい。それに、ジィッタに負けていても、2人とも充分な腕前ですよ」
2人とも照れつつも、やる気のある感じです。
で、カラメルソースだけでは、意味がありませんので、本命のプリンを作ります。
今度は、説明しながら、一緒に作っていきます。
「玉子とバニラビーンズの匂いを付けた砂糖を混ぜます。ハンドミキサーの強さは最弱です。出来上がりの舌触りが悪くなるので、今回は絶対に泡立ててはいけません。そして、人肌に温めた生クリームと分離させていない牛乳を混ぜながら追加していきます。混ぜ終わったら、布で2回濾して、さっき、作ったカラメルソースを底に入れた容器に注いでいきます。後は、蒸してから、冷やして完成です」
蒸し器は良いのがあります。
ほとんど使っていませんが・・・。
元々フルフラットでは、パンと言えば蒸し過ぎパンです。
へにょへにょで、歯ごたえと味が無いパンです。
これが、主食だったんです。
ですから、蒸し器はそれなりに発達しています。
発達する方向を間違えたんですね。
道具じゃなく、食べ物を工夫すれば良かったんです。
でも、そのおかげで、こっちの世界で食堂を営業するだけでも食べていけそうです。
実際、食堂以外にも手を出しすぎてますけどね。
「蒸し過ぎると、舌触りが悪くなるので注意して下さい。室温は火の魔石で一定ですから良いと思いますが、食材の状況もあります。試食しても良いですので、蒸し時間を調整し、納品する分は、最高の状態のを作って下さいね。それがラーマ食品加工の信用に繋がります。失敗したヤツは、みんなで美味しく頂きましょう」
最後のセリフで、笑いが起こりました。
でも、次のセリフで笑顔が消えると思いますが・・・。
「クレアさん、ラクトさん、昼からは、アイスクリームとプリンを作れるだけ作って下さい。明日、みんなに配りたいので、最低でも各4,000個です」
いやぁ、みんな、凍りついた表情です。
見事に笑顔が消えました。




