172.火傷×火傷
依頼を終えて、冒険者ギルドに戻ると、『白龍王撃退』の冒険者のランク用のポイントが決まっていました。
いや、正確には決まっていないです。
ボクたちの冒険者ランクが決まっただけです。
そもそも、国への貢献度を分かりやすくしたのが冒険者ランクです。
国の周りを彷徨いていた野良白龍王を完全に無力化・無害化したのです。
もし、野良白龍王が敵対勢力になっていたと考えると・・・。
国が無くなっていても不思議じゃないです。
『白龍王撃退』は国が無くなるような危機を回避したという事です。
ロシテグループのお家騒動などの件と合わせて、国の存亡の危機を2回も回避したという事で冒険者ランク9ということになりました。
冒険者ランク1から、いきなりシンやティコアと同じ冒険者ランク9です。
これで砦の奪還作戦に問題無く参加できそうです。
ハルートさんとその上司に丁寧なお礼を言われて、ボクたちは冒険者ギルドを後にしました。
次からは冒険者ランクに合ったプリーブロックの冒険者ギルドを行くことになります。
「お嬢様、もうそろそろ、賄いを準備する時間ですけど、どうしましょうか? 新しいメニューにしますか? ストックしてあるのを食べますか?」
依頼諸々で午前中がいい感じに潰れました。
昼食まで後1時間、そこそこ手の込んだ料理も作れそうです。
「ラーマさん、美味しいの食べたいです。ラーマさんが作ってくれたモノなら何でも美味しいと思いますけどね」
「あたいはマスターが作ってくれるモノなら何でも良いです」
「私も旦那様が作ってくれるのなら何でも良いですけど、新しい料理を体験したいです」
「わらわは、カレー、カレーライスが食べたいのじゃ、野うさぎの唐揚げもまた食べたいのじゃ」
みんなの意見をまとめるとカレーライスを出しておけば満足しちゃいそうです。
そういえば、薬剤ギルドの在庫リストに色々なチーズがありました。
今日のお昼はそれを使っちゃいましょう。
「新しい料理を作りましょうか」
これから作る料理の味が思い浮かびます。
ボクの大好きな料理のひとつです。
思わず笑顔になっちゃいます。
「かしこまりましたです」
「はぁーい」
「了解」
「はい」
「新しい料理じゃと、これは楽しみじゃ」
という事で、厨房でお料理教室が開かれました。
生地、ソース、ガーリックライスを作りました。
ついでにオークのバラ肉の塩漬けも作っておきます。
ガーリックライスにカレーパン用のキーマカレーをかけて、さらにチーズをかけてオーブンで焼きます。
生地を適当な大きさに切り分けて、丸く伸ばします。
見様見真似で人差し指だけで器用に回転させて伸ばします。
やってみると見た目以上に面白いです。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつとお手玉のように回しました。
「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」」
厨房内の料理人やカウンターの外で見ているお客さんから歓声が上がりました。
自分の行動で、こうやって歓声が上がるとやっぱり気持ちいいです。
出来上がった縁だけ厚い生地の上にキーマカレーとチーズをのせたモノ、さっき作ったソースを塗って薄く切った干し肉とチーズをのせたモノなど色んなバリエーションのをオーブンで焼きました。
ジャ、ジャァァーン
「本日は、カレードリアとピザです」
「今日のも、美味そうだなぁ」
「ほんと、おかげでここ以外で食事ができなくなちゃったわよ」
シンとティコアはお昼も戻ってきて食べるようになりました。
『インダス』を使って作ったピザカッターを使ってピザを6等分ずつに切っていきます。
「このピザは熱いから気を付けて下さいね。上顎を火傷しますから」
「「「「「「アチィィィィ」」」」」」
「カレードリアも熱いから気を付けてね」
「「「「「「アチィィィィ」」」」」」
みんな、火傷しながらも、お腹いっぱい食べていました。




