眷属。
まだ朝方のため、外へ出る。
楓の風の壁がある範囲までは動けるとし屋根の上に登り考え事をする。
『俺のこの剣は父さんの肩身…いつもこの剣と共に父さんの影を見ていたのかもしれない。スキルを雷属性にしたのは父さんのスキルだったからだ。昔、"閃光ノ剣"と呼ばれていた父さんを憧れてスキルを選んだのに…風スキルに変えるなんて出来ねぇよ…』
『居たぞ!あの屋根の上だ!』
武装し銃を持つ男性に叫ばれる。
『見つかった…?この辺は結界があるはずじゃ…』
『何をやっているのですか。屋根の上にまで結界を貼った記憶は存在しません。よって貴方はこの家に早く入るべきです』
『そんなこと言っても!っと…』
銃を連射され剣で弾いていて身動きが取れない。そんな状況に凌駕は居るのだ。
『どいてろ!』
男がそう言い放った時、緑色のビームが凌駕に向かって放たれる。
スキルを使おうとするも発動している時間もなく、それは凌駕に直撃し貫いているように見えた。
『凌駕、何をしているんだ?お前は俺の子供だろう?そんなもんで負けちゃいけねーよ』
正確には凌駕に直撃したのではなく、凌駕の父親に直撃し剣で弾かれたのだ。軌道を逸らしたため、凌駕に当たることはなく。
『父さん…!?』
真っ白い光を発しながら剣でビームを弾き天使のように凌駕の目の前に立っている。
『お前の命の危険を察知した場合、この剣に宿っていた少しの俺の力がお前を守るって役割を持っていたみたいでな。まさか、こんなことができるなんてよ。元気でな。』
父親はそれだけ言い残すと空気中に消えていった。
その瞬間、凌駕の心は哀しみに染まる。
『楓!お前の力を俺に貸してくれないか?いや、お前の力を俺に上書きしろ!』
『御意』
凌駕の言葉に笑顔でそう答えると、何やら言葉を唱え始める。
『私はこれから 柳瀬 凌駕の眷属として行動を共にすることを誓いましょう。如何なる強さがあっても敗北の哀しみがあっても気持ちを分かち合い私はこの人のために尽くします!』
凌駕の剣と楓が真っ白く光り始め、やがて黄緑色に変わっていく。
剣の柄の部分が緑色に染まると剣は風のスキルを持つ剣へと変わった。
『なんだアレは…』
『全ての真実を知る空、空より生み出されしその存在を我の力へと変え偽りの善を洗い流し奉る。
お前らの偽りの善を俺の悪で吹き飛ばす!』
巨大な竜巻が巻き起こり、その風は圧縮されやがて黄緑に光るプラズマに変わっていく、巨大なプラズマは全てを飲み込まんと凌駕の剣に纏う。
『これが俺の全力だ!』
凌駕が剣を縦に振り下ろすと縦の衝撃波がプラズマと共に放たれ武装集団を蹴散らしていった。
その夜、屋根にまで結界を貼るとテレビを点ける。やはり、自分のことが放送されているのだと少し嫌な気持ちを抑えながら飯を口に運んでいく。
『気にすることはありません。
今日、移動を実行します。』
『移動?どこにだ?』
『アテは幾つもありますので問題ないかと…』
凌駕達は丑三つ時にその場を離れ別の場所へと移った。
『腕も何とかなってきたしなァ、そろそろ行動を開始しねェとなァ』
剣城学園の屋上で終は何かを見つめながらそう呟いた。
『終、話がある。早くこちらへ来い』
『はい、父さん。』
普段の終とは全く違うような口ぶりで校舎内へと消えていった。