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【武器世界物語】  作者: ezelu
柳瀬凌駕編
59/65

決勝戦

「いよいよ、武闘演戯も大詰め!!決勝戦の時間がやってまいりました!各部門の最強は誰になるのか!!!注目の一戦のスタートまで後少しです!」


武闘演戯もそろそろ終わり。

残り1試合、これに勝てば俺は最強の剣士。沖田剣に勝つためには、全神経を集中させてがむしゃらになるしかない。


俺は試合会場に上った。

そこで目にしたのは……。



「殺す…殺す殺す殺す殺す殺す…。柳瀬凌駕、お前を確実に殺してやる!!」


狂気に満ちた沖田剣の姿だった。


「先輩、何でそんなに怒っているのか俺には分からないですけど、負けるわけには行きません!俺は、この都市最強の剣士になりますから!!」


凌駕のこの言葉でより一層、沖田の表情が強張った気がした。


「いいや!!この都市最強の剣士は俺じゃなければならない!!やっと来年なんだよ、目的の年まで。なのに、こんなところでつまづいてなんかいられねえ!」


「沖田先輩、勝負でケリをつけましょう。 どっちみち、この勝負で終わりなんです。正々堂々と勝負して勝てばいいだけのこと!」


「ああ、そうだな。早くやろう!!」


沖田の様子が少しだけ冷静の方へ傾いた時、試合会場全体にブーザーが鳴り響いた。


「試合開始まで少し時間があるので、決勝戦の特別ルールを確認していきましょう!

決勝戦のルールは予選と本戦とは違って五本先取の真剣勝負になります!選手の方々には、基礎体力の多さも必要になってくるわけですが、大丈夫でしょう!

では、試合開始まで後一分を切りました。選手の皆さんは激闘を、観客の皆さんは歓声を宜しくお願いします!!」


長い説明も終わり、試合開始まで後一分ほどになったことを確認すると、凌駕は愛刀を取り出した。

妖刀-鳴神- 雷から作られたという至極の一刀。その刃で斬れぬものはない。とされている刀だ。


「俺の刀で沖田先輩を倒すしかない。この、鳴神で!」


「…………負けない…!!」


試合開始まで後数秒。

お互いが会場へと登ると、コートを覆い被さるように特殊な防壁が貼られた。決勝戦は、猛者同士の戦闘のために何が起こるか分からない。学園が観客側に安全安心で声援を送ってほしいというもので行なっていることだ。




「それでは、一年、柳瀬凌駕と三年、沖田剣の試合を始める!よーいっ!!」


凌駕は重心を低くして、腰の位置に刀を構える。居合の体勢だ。


「スタート!!!!」


試合開始と共に鳴り響くは金属音の連続。

開始早々、雷スキルで身体能力の速度を上昇させた凌駕は速攻で斬りかかった。

が、それは沖田に読まれていたようで簡単に止められてしまった。何度も何度も頃合いを見つけては斬り込むも全て防がれてしまう。



「クッソ!なんで全部読まれてるんだ…!」


「俺のスキルは相手の未来を見る、特殊なスキルだ。今のお前では取るに足らん!!」


沖田の剣戟は華麗に舞い続け、凌駕の防壁に次々と斬り込みを、ダメージを与え続ける。

このままでは、負けてしまう。

そう思った凌駕は次の瞬間、衝撃の行動に走った。



「ここで勝たなきゃ、ダメなんだ。柳瀬凌駕は柳瀬刃に近づくために剣で最強にならなきゃ!!!」


「な、なにを!?」


凌駕は自らの刀を自らの防壁に突き刺した。割れ落ちる防壁、その一つ一つが触ることの出来ないガラスの様な断片となって地面に落ちていく。




「もしかして凌駕……」


歩美はふと思った。凌駕が今何をしようとしているのかを。

死ぬ気で戦う覚悟を決めたものの姿を。



「血迷ったか。負けると思って自害なんざ、するやつだったとはーーーー」


ゾワリと感じる圧力。それが何なのかは言葉でも本能でも分からない。

ただ、その圧力がどこから出ているかは一目瞭然だった。



ーー柳瀬凌駕だ。



「((自分自身で防壁を破るなんて滅茶苦茶をした後になんだよこの圧力。大丈夫だ、俺にあいつが勝つには2点先取しなければならない。その点俺は一点でいい!だったら、あの技で終わりにしてやる。))」


全神経を一本の刀へ集結させると、彼の愛刀には禍々しいばかりのオーラが密集し、光溢れている。



「それでは、第2戦!スタート!!」


審判の言葉通り、2戦目は速攻で開幕し、速攻で閉じた。


雷が空気を焼き尽くす音と防壁が崩れる音。

それだけが開始早々の第2戦の終幕を告げる音だった。


「なっ……!?」


沖田の背後には防壁を簡単に斬り捨てた青年が立っていた。自身が生み出した速度による空気抵抗が原因で生まれた風に髪をなびかせ、彼は空を見上げる。

何を思うことなく、ただ真っ直ぐに相手を倒すことだけを決意して。



「((もう一度アレが来たらもう俺の負けは確定だ…。しかし、なんだ?あの人間離れした速度は……俺の能力ですら感知できないなんて……!!このままでは、来年訪れる俺の目的が、あいつに降り注いじまう!))」



「先輩、負けませんよ!俺は」


バチバチと空気を焦がす雷の音と共に凌駕は口を開いた。

その時ーー沖田は気づいた。凌駕が何をしているのか、なぜ人間離れした速度を手に入れたのかを。



「人間離れした速度を手に入れたのは自身の雷スキルを自分自身に流し込んで同化したためか……。今のお前は、剣と等しいわけだな。だが、そんなことをすればお前に来る衝撃は半端ではない。何故そこまで最強の座を狙う?」


「俺は父を越えるために剣を抜きます。俺の偉大なる存在であり、永遠のヒーロー。柳瀬刃の為に。」


「そうか。ならば、俺も本気を出すとしよう。過去のことに怯え、目的のためだけに戦う俺は自分自身を大切にして来た。今からなる状態には自分自身の寿命を削らなければならないというペナルティがある…!が、お前を倒すにはそんなペナルティ、安いものらしい!見せてやる、沖田剣の全力をな!!」



沖田の目が変わった。憎悪や苦しみ、妬み嫉み、悪い方向のある言葉が付き纏っているように見えた彼の目には清廉潔白な剣への愛情だけが一つとなって現れた。

自分自身の過去を否定せず、肯定して、復讐心を閉じて。



ーーそれは、剣を卓越した者のオーラ。



「俺も負けない!復讐でもなく、掴み取りたい勝利のために!!」


剣を構え、沖田はそう言った。

ここからが本番なのだと言い告げるように。


ーー


「それでは、第3戦スタート!!!」


凄まじい速度で凌駕は沖田へ飛び込む、自身が剣になっていれば自分の速度だけで防壁を貫くことなんて容易いことーーーーが、しかし、沖田の刀に寄って止められてしまった。



「俺の目は酷く曇ってしまっていたようだ。悪いものにな。だが、今はもう違う。お前がいくら早くても見切れる!!」


ぶつかり合う金属音、その速度はもう光を超えていた。雷の落ちる速度は光には乏しくも及ばない。しかし、凌駕のスペックの高さはそれさえも覆してしまうようだ。


また逆も然り、沖田自身も未来が見えているだけで現実的には自分自身がついていくことは不可能に近い。が、それを可能にしてしまっているという時点で彼のスペックの高さもだいぶ見受けられた。



「はぁぁぁぁぁっっ!!!」


「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


何度も何度も何度も何度も。

彼らの剣は激しくぶつかり合い、お互いが消耗し始めて限界が近づいて来た頃。



「…沖田さ…ん。ここは、剣士らしく居合でケリを…」


「ああ…実に剣士らしい。分かった…」



二人は立合う。剣士の居合勝負とは、一瞬。

とある青年と凌駕が前に戦った時も一瞬だった。ここまで長く試合が続くと、幾ら体力がズバ抜けていてもスペックが高くとも所詮は人間で、消耗しないわけがなかった。

彼らに振れるのは、もう一振りしかない。



「合図は投げたコインが地面に落ちた瞬間で……」


「おう…」


凌駕は親指でコインを弾いた。コインはクルクルと回転して空中を舞い、落下していく。

そしてーーーー。



地面に落ちた瞬間、両者が凄まじい速度で動いたかと思えば防壁が斬り破られた。



「クッソ…。負けちまった……。詠…。」


「ふぅ………勝ったのか…」


目の前で崩れ落ちる沖田の姿から視線を外し、刀から手を離すと空を見上げる。

自分がやっと剣で最強になれたんだ。父親に、刃に近づくことが許された。


「うおおおおおおおおおおおお!!!」


それだけで感激が心に轟いた。

凌駕は空へと拳を掲げて、勝利の雄叫びを喜びを叫んだのだった。


ここに剣術最強、柳瀬凌駕の姿アリ。

悲劇の青年として語り継がれる歴史には程遠い出来事。

彼を待つのは、終わり無き戦いの歴史だ。

ーー


武闘演戯編終了です。

これからは本編の時間に行き着くまでの凌駕最強伝説。これを書いていきたいと思います。

凌駕編が終われば、歩美、瑞貴、終、駿など、本編に出て来た人物の過去編を一通り巡りたいと思うのでお楽しみにしていただければ幸いです!


投稿速度ですが、本編連載時よりも大分遅くなっています。

気長に待っていただけることをよろしくお願いします。

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