歩美の実力
更新遅くてすいませええええええん!!!
ーー武闘演戯前日。
「はぁぁぁぁっ!!」
金属と金属がぶつかり合い、高音が辺りの空気を揺らす。今日も凌駕は、稽古を開いていた。
「よし!今日はここまで!明日の武闘演戯、全員、良い結果が残せるように頑張ろうぜ!」
凌駕の最後の締め言葉と共に稽古は終わった。生徒達は、明日の武闘演戯に向けてゆっくり安眠を取るべく、各部屋に帰って行った。
「凌駕、明日は負けないよ。私、稽古ではいつも負けてばかりだけど誰よりも凌駕の剣筋理解してるから!当たったら覚悟しなさいよー!」
「おう!でも、それは俺も同じだ。絶対に明日優勝して、最強の剣士になってみせる。親父を超えるために・・・!」
二人の意気はぶつかりあい、宙へ消えていく。その名残惜しさもまた、一興。
彼らの戦いの火蓋は遂に切られた。
「それでは、武闘演戯を開催いたします!最初に試合がある生徒は、それぞれの舞台に登って下さい」
武闘演戯が開催される、この場所は、剣城学園切っての武闘場。
全部門二戦ずつ一度に行うための広さを誇り、それぞれのフィールドには周りに危害を及ぼさないように守壁が貼られている。
「はぁ………暇だなあ・・・シードって今日はすることないじゃん」
「あるぞ、歩美の応援!」
客席には、シードとして出場している瑞貴と凌駕の姿があった。
その二人の間には、第一試合出場生徒である黒神歩美が居る。
「大丈夫、サクッと勝って凌駕を今度こそ超えるんだから!」
「そうだな、頑張れ!」
「歩美ちゃん頑張って!」
瑞貴の声援に、ニコッと笑顔を振りまいて歩美は試合会場へ向かった。
「瑞貴、試合のルール分かるか?」
「うん、えーと・・・各部門ごとに試合が行われて、勝負は二本先取。剣術スキルによっての激しい攻防が予想されるから、生徒一人一人には体を傷つけないように守壁が付いてるんだよね。その守壁を割ったら一本先取となる。こんなもんかな、凌駕は知らなかったの?」
「昨日、ルールブック見て、字読むの怠くて寝ちまったんだよ。幸い、今日は俺の試合じゃなかった・・・」
瑞貴のルール説明を必死に耳で聞いて頭の中に入れていく姿は、必死さを感じさせた。"凌駕らしいな"と、この一ヶ月ちょっとの日数でより凌駕との距離を縮めた瑞貴はそう思った。
「生徒達の準備が整ったようです!第一試合の開催を宣言します!」
女性の声でアナウンスが会場内に流れると、歩美を含めた、各部門の第一試合出場生徒達は、武闘場の台に上った。
「よろしくお願いします。」
「は?なんで俺の相手がこんなガキなんだよ。クソ吐き気がすんぜ!」
歩美の礼儀正しい一礼を無視して、男は汚い言葉を吐く。黒いタンクトップ姿に学園の指定制服の長ズボンを着用している学園内でも悪い方に有名な男だった。
「こら!お前はまたそうやって・・・。しっかりやれ!」
見張りとして立っている教員と顔見知りのようで、教員は思わず怒りの喝を入れる。だが、男には届いていないようだ。
「へぇ〜。歩美ちゃんの相手なんだけどさ。名前は、暴月雷都。雷属性の剣術スキルを持つ、大剣使いらしい。性格は残虐で短気。少しでも自分のプライドを汚されれば、怒り狂うだってよ」
男のことが気になったのか、手に持っていた端末で学園名簿を開くと、男のプロフィールを流暢な言葉で、相手の武器に興味津々な凌駕に伝えた。
「大剣か・・・残念ながら歩美の使う剣種はレイピア。速い攻撃に特化した剣だ。勝負は決まったも同然だな」
ーーー
「両者共によーい、始めっ!!」
「どおりゃぁぁぁぁぁ!!」
開始直後。
男は、歩美の身体よりも明らかに大きな剣を横へ薙いだ。
「すごい攻撃範囲ッ…!でも、凌駕の剣よりも明らかに遅いし軽い!!!」
男の剣を上へ飛んで回避すると、雷鳴が轟。彼女の身体に火照りが見え、眩い閃光の如く。
男のシールドに素早く剣をーーー。
パリィンッ。
男の背後に着地を決めると彼女は長い黒髪を右手で直して、一礼挨拶を決めた。
「一本先取!黒神歩美!」
審判が白旗を上げ、歩美の方へ点が一つ与えられる。あと一つ、取れば完全勝利だ。
「あぁん?ふざけんなよテメェ…!この俺様に恥をかかせた罪は重い!ぶっ殺してやる!」
再び、男にシールドが形成され、男は悔しげにも怒りの叫び声を上げた。
「二戦目、開始!!!」
開始の合図と共に最初に仕掛けたのは、歩美の方だった。最初から飛ばして相手のシールドに一撃を入れるためだ。
「ちょこまかと動き回りやがって!!うぜぇんだよ!!!」
男の身体が火照り始め、身体に流れる全エネルギーが巨大な大剣に注がれているのが見てとれる。
男はそれを地面に突き刺すように振り下ろした。
「爆裂噴火大爆発〜〜!!!」
大剣が突き刺された辺りの地面からは、噴火の如く速度で炎が噴出された。
その攻撃範囲はフィールド内全域にも達している。
「お前は調子に乗りすぎたんだよ!!死ねやカス女ァ!!」
「そういう・・・」
歩美は高く飛び上がり、持ち前の速度と回避力で噴き出る溶岩を難なく回避すると、男へ視線を定めた。
「カス女とか!!私に勝ってから言いなさいよ!!」
落下速度と共に自身の速度を電撃スキルによって向上させると、携えている細剣で男を断ち切った。
「勝者!黒神歩美!!!」
勝利が確定したことを告げるように、観客席に座っている凌駕達へ笑顔でピースを決めた。
歩美に敗北した男は、苛立ちを隠せずに憤怒の表情で会場を出て行った。




