終焉
「生憎様…俺はァ、雑魚には負けないんだよねェ…?それに俺は一人じゃねーしなァ」
「凌駕の気配が無いんだけど、まさか殺したのってお前?」
「さぁねェ…、後ろなんだけど、気ィ付けた方が良いんじゃねーの?」
終の忠告に瑞貴が後ろを振り向くと、彼には大きな拳が迫っている事実しか捉えられなかった。
拳の持ち主が「誰か」なんて。
「やめろぉぉぉぉ!!瑞貴は殺させねぇ!」
大きな槌を手に持った男が飛びつくように拳に迫り瑞貴を突き飛ばす。
「尊?!なんでだよ!」
殴られた男は尊と呼ばれ、人間として生きていた時代では槌一位の最強の男だった。
彼もまた被害者。
二度目の死を迎え、彼は蘇ることなき黄泉の世界へと旅立っていく。
「尊が…ってことは…皆、消えるのかよ。俺を残して…」
尊の突然の消滅に伴い、瑞貴を残した全員がその場から消えた。
意図は掴めないが、分かるのは一つ。
瑞貴が抑えていた理性を解き放ち…死んでいった仲間のために「復讐」という言葉に身を滅ぼされるように異形の姿へと変化したということだ。
「殺してやる…あの日から…昔の生活がどんだけ理想になったか…お前らは分からないだろ?ただ、強さだけを求めて力を手に入れて…俺らの全部壊していったお前らに…クッソ…殺してやる…殺して何もかも終わらせる…この世界からこの都市から能力者を消して二度とこんな結末を作り出さないように…俺が俺がぁぁぁぁっ!」
「じゃあ、今すぐ殺しに来……」
「殺しに来い?お前にそんなことを言う権利はないよ、死ね……」
「グチャグチャ」と肉が裂かれるような奇妙な音が辺りに鳴り響く。
一つの巨大な穴から溢れるように吹き出しな血液は瑞貴を濡らし地面を濡らす。
「なっ…」
「神守蒼梧さん。お疲れ様です、貴方の人生は…残酷でしたね」
同情の声が最終通告となった彼もまた被害者だ。
「瑞貴…久しぶりだね。」
「ん?まさか…慈水?どうしたんだよ、君は俺と同じように完全なる能力者だろ?尊達はクローンだったけどな…」
「クローンと言っても、一人が死ねば其れにつられて同じ生命体は死ぬ、意識だけは前の尊のようだったみたいだけど?楽しかったかい?」
「戦争のことかな?楽しいわけないだろ?さて、君はどうするの?能力者ならここで俺と殺しあうのが普通だけどさ?」
「殺らないよ……俺は自分の手で凌駕の元へ行く。じゃあな。また会おう」
「会える確率なんてゼロなのに何言ってんだよ……俺がこんなことをしても前の日常が戻るわけじゃない…でも、もし、神様が居るのなら…もう一度あの世界で俺らを……」
都市から能力者は一人残らず消滅した。彼らは二度目の死を終えて一生消えることのない罪を背負って生きていく。
過去も現実も未来も何が起こるか分からない。
過去を追い求め復讐を行う者、自分自身と向き合って身を滅ぼしてしまう者、強さを求めて力を手に入れた愚か者まで。
彼らの人生が狂えば、普段の日常が崩壊すれば……。
人間だって化け物になってしまうのかもしれない。
本編は完全に終了です。
ご愛読ありがとうございました。
また、これからは、今まで出てきた登場人物での武闘演戯編を開こうと思います。
最後まで楽しんでくれると幸いです。