第二戦
「なんで能力が効かないんだ……」
「私は神よ?貴方が勝てるはずないわ、もう昔の私じゃないの……私は能力者を超えたのよ!」
薫の言葉は巨大なエネルギーの塊となって駿へと放たれる。
肉の塊が破裂したような音が空中で鳴り響く。宙を舞うのは赤い液体、宙を舞うのは役割を失った肉片。
一つ、彼女に疑問が生まれる。
「ん?!何故、貴方が五体満足で立ってられるのよ!坂上駿!」
駿は、汗を流しながら空中に立っている。汗?いや、涙かもしれない。
目から汗が出ることなんてないのだから。
「狂を……狂をよくもぉぉぉ!」
周りに赤い空気が放たれた。悍ましい「ソレ」はまるで生き物のように蠢いている。
「何よ、そんな能力、私が封じてあげ……あっ…」
彼女が意志を持って放った最後の一言は空中に儚く消えた。
「もう、許さない。俺の唯一の理解者を……殺す殺す殺す」
骨が粉砕されていく無数の乾いた音と肉がはち切れていく気持ちの悪い音が混ざり合って世界を汚していく。
柳瀬薫は、一瞬でただの肉片へと成り下がった。一瞬で変わってしまった彼女の姿を嘲笑う者が現れた。
「終わったんだ……」
「化け物、お前の人生がな?あ、人じゃなかったね」
音も無く放たれた銃弾は、駿の心臓を貫いて体内のエネルギーを喰らう。
「能力者という化け物をこの世界から消せばオレ達の任務は終わりを告げる、そしたらまた別の世界で凌駕と歩美と出会えたらいいのにな……」
「お前、瑞貴ってやつ……じゃ……」
「そうだよ、俺は瑞貴。君は坂上駿だよね?ここまでお疲れ様。俺は俺たちの日常を破壊した能力者を殺して新しい世界でまた武闘演戯を開く!」
「能力者を殺す?だってよ、神守さんよォ」
「あはは、やれるものならばやって見せて欲しいですねぇ」
終と神守のペアが到着すると、瑞貴は顔をしかめた。
「お前ら!「雷ヶ峰終」発見!」
瑞貴の一言で全員が「本気」になった、なってしまった。
「お前らァ、生きてるってことは能力者だよなァ?」
「お前に答える義務はない、死ね、化け物」
瑞貴の一言はどこまでも冷酷で空気さえも凍てつかせてしまうようだった。




