終の最期。
『早速だけど、今は歩美が別の場所にて任務を遂行中だ。俺ら四人は、とある施設を破壊する』
『施設?なんていう施設だァ?』
『あぁ、太陽の家って場所だ』
『太陽の…家だァ!?』
『何でここを破壊するか、分かる?終。勿論、お前が育った場所だからという理由はないよ…?』
『そんな任務遂行してどうすんだよォ!』
『榊海道を殺すんだ…俺のこの異能の力は能力者を破壊する力だ。元々は神守蒼梧の力だけどなー』
『嫌ならしなくてもいいよ、終。俺は、過去に囚われてる人間は好きじゃないけどね…』
駿の雰囲気が変わった時、空気の色が変わったように錯覚しただろう。
空気にもともと色はない。しかし、なぜか赤く染まったように見えたとしか言えない。
『分かったぜェ…やるからよォ…駿、いつものお前に戻れよォ…』
『いつもの俺?なんのことだか、分からないけどどうしたの?』
その場にいた全員は、理解した。坂上駿は二人いる…と。
『さて、行こうか!』
凌駕は気を取り直し、声をかける。四人は特に音も立てず、その場から消え施設へと向かった。
『皆〜!今日のおやつはドーナツだよー!院長先生が買ってきてくれたから皆で食べよう!」
複数の子供に女性の先生。太陽の家はいつもと変わらず、子供達の笑顔を絶やすことなく通常通りだった。
院長室という場所で、榊海道という男は椅子に座りながら机に置いてあるコーヒーを飲みながら自分の過ちの大きさについて深く深く…考えていた。
あれから、5年が経った。私が柳瀬薫に倒されTBVから離れ学園長をやめて、随分と時間が経ったものだ。
五年の月日は意外と短く、武術都市のさらなる闇が動き出し都市全体を変えてしまったという事実から目を背けて居たかった。
しかし、現実という存在から逃げることはできない。MACは、私を壊滅にまで追い込んだ。
私はもう、裏の世界に干渉することなく幸せの道を辿っていこうと。そう心に決めたのだ。
私に残された寿命は今日で尽きるということも自分自身で分かっていた。自分として罪滅ぼしができるのならもういいと。
瞬間、大きな音を立てて太陽の家中のガラスが割れた。
『来たか…』
『久しぶりだなァ、父さん』
海道の目の前に現れたのは、雷ヶ峰終。彼の顔にはどこか悪意を感じた。
『子供達には、手ェ出すんじゃねぇぜェ?てめェらァ』
『分かってるよ、終。早めに済ませてよ?時間は限られてるんだから』
『分かってるぜェ…駿』
後ろを振り向いて、全員に指示を与えると暫くして終は目の前の父親と向き直った。
『父さんよォ…あんたが俺を能力者開発適用者としてTBVに売ったのは分かってんだぜェ?別にそれに対して恨んでるわけでもねェ、取り敢えず時間もねェからさっさと殺されてくれよなァ?』
『あぁ、殺して構わない。私はもう、裏の世界の人間では無いからだ。私も殺すにも手はあるのだよな?この死ねない体を前にして…』
『あァ、あるに決まってんだろうがァ!凌駕ァ、さっさとしろォ!』
『わーったよ、けど今のお前、凄い酷でー顔してるぜ?』
終は泣いていた。無意識のうちなのかもしれない。仮にも自分の父親として自分を育ててきてくれたから。
そいつが目の前で死ぬなんて、見てられないってのは誰でもそうだ。
『あァ、また俺はこうやってェ…目の前で人を失うのかァ…凌駕に頼んだ俺でも…俺はもうこんな現実を生きたいとは思わねェ…凌駕ァ、俺を殺してくれねェかァ?』
『終…?』
『俺、もう十分だァ。人を殺すのはァ…もう良ィ。やめてェ。だからァ…頼むぜェ…』
『分かった…』
凌駕は終の右手を強く握った。すると、体は瞬間強く弾けて部屋全体に血飛沫が飛び散った。




