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【武器世界物語】  作者: ezelu
第1章 武術都市の闇
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四人の休日

『お前等を呼んだのは、他でもない。これから武闘演戯が始まる。そして、今回の武闘演戯はいつものルールとは異なるのは知っているだろう?』


慈水が一旦間を置こうと口を閉じると次に口を開いたのは凌駕だった。


『あぁ、全武術共通演戯か。』


『そうだ、これによって僕達は敵同士となる。分かるな?全員、自分達の力を見せつけよう。第1位はそれぞれのブロックに一人ずつ分かれることになる。つまりだ、僕ら全員が決勝トーナメントに残る必要がある!まぁ、お前らじゃ問題ないだろう』


長々と慈水が喋り終わると全員が真剣な眼で返事を返した。


『よし、今日は解散だ。』


瑞貴と凌駕以外は疲れたように自分の心の赴くままに屋上を出て行った。夕方の屋上はオレンジ色に染まった夕陽がそこにいる二人を小さく惨めにするように綺麗な輝きを見せている。


『瑞貴は、負けるなよ?』


『負けるわけないよ…確信はないけどね〜』


『まぁ、そうだけどお前が負けるとことか見たくねーしよ』


『俺の心配してるけど、凌駕もだよ?俺と当たったら負けちゃうんじゃない?』


『負けねーよ、銃に剣が勝つ瞬間を見せてやっから!』


『へー?楽しみにしてるよ〜』


二人が決意を固め合い、目を合わせていると二人の頭に突然痛みが走る。痛みはゴツンという音ともに走ったものだが、二人は痛みの正体に気づいていた。


『二人とも?私を忘れちゃダメだよー?』


二人の後ろには指をバキバキと鳴らした歩美の姿があり、表情は強張っている。


『私二人に負けないよ!別にランクなんか関係ない!瑞貴にも勝っちゃうんだからねっ!』


『まぁ…歩美には負けねーようにしねーとな…油断したら斬られるからな、負ける気はねーけど』


『俺もだよ〜』


三人は屋上でたわいもない話で盛り上がった後、寮へ三人で帰っていった。

仲良し三人組、三人につけるならちょうど良いあだ名かもしれない。


次の日の朝。


凌駕の部屋の扉にノック音が鳴り響く。もう、5時過ぎを回っているのにも関わらず誰だとも時間的に叫べず、静かにドアを開ける。


大抵予想はしていたが、予想通りの人で凌駕は頭を抱えた。


『どうしたの?』


『別になんでもねーよ、つか。こんな朝からなんだよ!歩美!』


呆れた顔で、歩美を見つめながらドアの前でやや叫び気味に問いかける。


『いや、朝からって…まぁ今は5時だけど〜…うーんとお願いがあるの!』


というわけで、なぜか都市の大型ショッピングモールに強制的に連れてかれた凌駕。「お願いって言ったら一つしかないのは分かってたけど、予想的中しすぎて俺、超能力者にでもなれそう……」

肩を落としながら人集りの多い場所を歩く凌駕、幸いなことに久しぶりの街だったのか気が緩んで変装をして来なかった。失敗したなと思った矢先。


『キャー!あの人!柳瀬凌駕様じゃない?まさか、あの横にいるのって…黒神歩美様!?』


叫ばれた。なると思った…最悪だ。と心の中で今朝の自分を悔やみながら声を掻き分けて歩美の声だけを聞き取っていく。はっきり言って無理に近い。

俺は聖徳太子でも何でもないごく一般の男子高校生なんだよ。心の叫びは誰にも届かず声援は大きくなるばかりである。


都市内で最強の剣士は男にも女にもモテる存在なのだ。Sランクという肩書きだけなのにモテる、ブサイクでもモテる!!

それだけ強さが全てなのだと分かる世界である。


歩美の買い物に一通り付き合ったかと思えば、まだ半分ほど。

時間帯はお昼になっていて凌駕はフードコートの椅子に腰を下ろした。瞬間、ショッピングモールの店長らしき人がやって来て「すいません。このお店で買いたい商品等ありましたら、全部無料で良いので宜しければごゆっくりどうぞ」と告げてきた。


「えっ、いや、そんなことしなくても俺らで払うんで良いですよ」


特別扱いが苦手な凌駕はキッパリ断ろうとしたが、無意味なようで「いえいえ、お願いします。無料にさせてください!」とお店側から土下座でお願いをされたので仕方なく「お言葉に甘えて」と言ってしまった。実際はすごく後悔をしている。


「でも、ラッキーだったじゃん。凌駕ってなんでそういう特別扱いって嫌がるの?私は別に構わないよ?特別な扱いされてもそれだけ私達が頑張ったってことになるんだからさ!」


「まさにポジティブ発言…俺も別に瑞貴みたいなネガティブでもないけどさ、やっぱりそこは違くね?特別扱いはされたくねーよ、俺は変装して金払う!」


ーーその頃


「へっぷし!」

急に出た盛大なクシャミに対応出来なかったのか、隣にいた慈水にかけてしまった瑞貴。


「大丈夫か?風邪なら引き返して寝たほうが…」


「大丈夫だから!それよりごめん!!」

自信たっぷりに慈水へ告げると持っていたティッシュで鼻を抑え、目の前の光景に驚く。


「今日って、イベントやってんの?」

「さあ?」二人はそれぞれ眼鏡をかけたりして変装しているがショッピングモールの大混雑を前に疑問を覚えてしまったようだ。


ーー凌駕達一行。


「凌駕ってば、結局無料で帽子とジャケットと眼鏡拝借してるんだから意味無いって〜…そこまでしてお金払う必要ないんじゃない?私は無料でラーメンセット頼んだけどね〜♪♪」


「…ぐぬぬ」


昼飯前にかれこれあったが何とか昼飯を食べ終わると一息ついて買い物に戻ることができた。まあ、昼飯中も騒がれて気楽に食べることはできなかったのだが…。


買い物途中、歩美が店の中に入り、商品を見ている間暇だったので、凌駕は外で待っていると何やら人がさっきよりも増えていることに気づく、すると自分達みたいに騒がれている存在、二名を発見し声をかけた。


『なんで、慈水と瑞貴が一緒に居るんだ?お前ら、仲良かったか?』


『ん?!凌駕じゃん!だからこの大騒ぎかあ…。成る程ね〜。』


『いや、たまたま寮の食堂で会ってな。暇だからということで出かけることになってここに立ち寄っただけだ。ところで、凌駕。お前は一人なのか?』


『いや…一人でこんなところ来れねーよ!歩美の買い物に付き合ってるだけだっての…ところでお前ら変装してるのになんでバレてんだ?』


素朴な疑問を彼らに押し付けるも、彼らが今一番気にしている内容だったらしい。凌駕は三秒後に二人からの拳を受けた。


三人が話しているという、ごく普通のことなのだがそれだけでギャラリーはキャーキャー騒ぎスマホを取り出しカメラで写真を撮っている。モテない普通の男子からの目線では恨みが半分入っているように見えるだろう、しかしあくまでこの世界では男子にもモテているSSSランカー三人組は謎のホモ臭を感じ取り店の中へと逃げて行った。


『凌駕。お前はこういうのが苦手だったんじゃないのか?』


『苦手だよ、こう特別扱いってのは毎日されてても慣れねーってか、そんな感じなんだよなー』


『まぁ、俺は平気だけどね〜?こんな風にピースでもしてあげれば喜ぶ人もいるんじゃないかな?』


瑞貴は試しにVサインをしてニコッと笑った。その瞬間、ギャラリーのボルテージが上がりキャーキャーとあまりにうるさくなってしまった。


ともあれ、夕方近くになると四人はショッピングモールを出て歩道を歩いていた。


『まさか、慈水君と瑞貴が居るなんて…ちょっとびっくりしたよ。しかも、凌駕が何かに苦しむ顔で店の中へ入ってきて…でも、その理由は一瞬でわかったけどね』


『瑞貴のせいだ…』


『え?なんで俺のせいなんだよ!』


『お前のVサインニッコリポーズがギャラリー受けして凌駕が嫌なムードへと変化したからだろう』


『あ〜…そか。凌駕、ごめん!』


『別にいいけどなー…飯食ってかねー?』


『ご飯?ここでお金使わなくても食堂行けば無料で食べられるんだし良いじゃん。そこでみんなで食べればさ?』


凌駕は外食をしたいようだが、多数決で寮の食堂と決まってしまった。肩を落としながらトボトボと歩く凌駕を無視して彼らは寮へと足取りを早めた。


目的地の寮へ戻ると、全員が同じテーブルの席に座った。

四人共日替わり定食を頼み、待ち時間はたわいもない話で盛り上がっている。


『俺らが最強になってから、一年が経つのか…何か不思議な感じだなー』


『そうだね〜…色んなことあったけどこんな感じで楽しいこととか出来るなんて思わなかったし良かったよ〜!』


『嗚呼、来年は知り合い全員で何かの会でも開きたいな!』


『最強ね…今回の武闘演戯は凌駕に絶対負けない!負けなんて許されないんだからっ!』


そうこうしているうちに、定食が運ばれてくる。食べながら、色んな話で盛り上がった後、四人はそれぞれ解散をした。


それぞれが決意を固め、本気で武闘演戯へと挑もうという心が重なり合った気がした。

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