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【武器世界物語】  作者: ezelu
第二章 5年後の武術都市
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管理された都市

全ての想いが集いし時、本当の結末への扉は開くもの…。


『武術都市に、もう野蛮な能力者は居ない!私は全てを変えた!全人類が待ち焦がれていた世界の創造!武術者が頂点の世界!私はこの世界を創るためならば死んでも構わない!邪魔をする奴は一人残らず…グチャグチャに潰してやる…楽しみにしてくれたまえ…我々を裏切った柳瀬凌駕、黒神歩美殿よ』


MAC創設者、神田宗一郎(かんだそういちろう)はモニターの光だけで部屋の明かりを担っているような暗い部屋で一人でに呟いた。


神田の背後に悪魔のような影がゆらりと姿を現した。神田自身は気づかなかった。不気味な音を立てて、神田の影にソイツが入っていったことなど。


都市全体で行われた戦争が終わり、あれから五年の月日が流れた。


数々の犠牲者を生み出した能力者。


その存在は、もう五年後の武術都市にはもう残ってなどいない。


唯一、残っているといえば武術都市の歴史である。


武術都市では五年前に戦争があったと言い伝えられている。


すっかり街の復興も終わり、都市全体が大きく変わっている。


TBVは、能力者開発をしていたとされMACに潰された。今の武術都市を作り、操っているのはMACという組織なのだ。


この都市は、今…。


都市に住んでいる人達の行動は全て監視され管理されているのだ。

全てが管理された世界。


武術都市。


変わってしまった、世界は…。

しかし、世界の空はいつも通り青かった。空は全てを見下げ、上から見つめている。


空に眼が存在するかは、この街では「ない」という考えよりも「ある」の方が多いかもしれない。


勿論、昔の武術都市ならば…の話だが。


今の武術都市の武器にはスキルが無い。スキル自体の存在があり得なくなったからだ。


能力者を生み出した都市が、能力者を否定してしまったならどうなるだろう。もう、この街で能力を持つ強者の存在など認められない。


『残酷な街に生まれ変わったものだ』


どこかのビルの屋上で誰かが言った。誰にも届かないその声を空だけはちゃんと聞いていた。


最も、空が聞いてどうにかなるのは知らないが…。


都市には、春の風が吹き。新しい物語の扉は開いた。勿論、この物語は平和ではありません。しかし、絶望の先にあるのはなんでしょう。


何がこの物語の登場人物達に降りかかるのか。そんなことは誰も知る由は無いのです。


この物語は今年から都市に訪れた一年生の真鏡刹覇(まかがみせつは)という少年の新たなる物語である。


『ここが剣城学園…!俺はこの学園で最強になるんだ!』


黒髪の少年は元気一杯に声を上げて、拳を空へと掲げた。


『今更…剣城学園って、お前馬鹿じゃねぇの?今は、撃滅学院の時代だぜ?剣城学園なんて、もう廃校寸前だろうが!』


見知らぬ生徒に煽り口調で話しかけられても刹覇はニッコリ笑いながら言った。


『んーと、あー。ソウナンダ〜』


まさに棒読み。

興味が無いと言わんばかりに、相手の男子生徒を見つめて剣城学園へと去っていったのだ。


『なんだあいつ…ムカつく!』


男子生徒は刹覇を見ながらそう言うと撃滅学院の方向へと消えていった。


撃滅学院。


剣城学園の真横に立つ学院は、金持ちのボンボンばかりが通っており、武術も最強と呼ばれている学院。


学園ではなく学院。


撃滅学院に人を奪われた剣城学園は全校生徒僅か25名というとても小さな学園と化してしまった。


刹覇を入れて26名。


今年の一年生は、刹覇のみ。


大きな体育館には一つだけのパイプ椅子に腰を下ろしている刹覇の姿があった。


学園長の話を礼儀正しく聞いていると。パリンッと音が鳴って体育館のガラスが割れた。


ガラスが割れた音の後には、ゴトンっと石が落ちる音が聞こえてくる。


しかし、学園長は何も無かったかのように話を続けている。


刹覇が体育館の外を覗けば、先程の男子生徒の姿があった。


近くに警備ロボがパトロールとして動いていても男子生徒が注意されることは無かった。


むしろ、警備ロボまで悪さに加担して腕からロケットを発射し校舎の一部を壊しているではないか。


入学式中だが、驚きの声を上げそうになりながらもなんとか抑えて学園長の話を聞いている。


その後、何回か攻撃が来たがようやく入学式を終えることが出来たのだ。


『入学早々の話なんじゃが…あの少年に目をつけられてしまったから君は退学じゃ…反論は認めん』


『えぇ!?!?』


『ほら、出て行きなさい』


入学早々、退学になるという悲惨な結末が自分には待っていたらしく。

仕方なく家へ帰ることにした。


家と言っても、小さな小さなアパートだが…。


『全くなんなんだよ…俺の最強への道が…』


ピンポーんっと聞きなれた音が自分の家に放たれる。自分の言葉を遮った音は連続して鳴らされていた。


刹覇が声を上げて返事をしようかと口を開けばドアは粉々に斬り刻まれて木っ端微塵に変わってしまった。


『お前…よくもさっきは……この俺様を小馬鹿にした態度を取ったな!覚悟しろよ!この撃滅学院、学院長の息子!入谷輔(いりやたすけ)様だと思ってやったんだよな?』


『撃滅学院の…学院長の息子!?』


『あぁ!そうだぜ?許してほしいなら…そうだなぁ。俺様の靴でも舐めながら許しを請えば許してやってもいいぜ?』


『別に許されなくてもいいよ、俺が君を倒せばいい話だし!』


『俺様を倒す?馬鹿なのか?お前ごときが俺様を倒せるわけが無いんだよ!』


瞬間、輔の内ポケットから取り出されたのは二丁拳銃。


輔は、何も持っていない刹覇に銃声を鳴り響かせながら銃弾を放つと銃弾は鮮明に刹覇の首筋を捉えており…。


無音のまま、刹覇の首筋にねじ込まれた銃弾は皮膚に弾かれたように、今度は輔の方へと向かっていく。


『え!?何で、銃弾が!?』


『何かしたの?』


輔の腹部と足に当たった銃弾は、輔の中の肉の間に挟まっている。


挟まっているかどうかは、肉眼では分からないが、それを証拠に血液が溢れ出ている。


『アレ?どうしたの?銃を撃ってその後に勝手に自分で…死んだ?』


『死んでねぇよ!まだ…な!お前…何なんだよ…』


『自爆する相手に、俺が負けるわけないよ!だから、ここは一旦病院に行ってくれないかな?ドアも直さないと…』


『…お前が今した行動は全部監視されている…だから…お前は俺の学園の生徒に潰されて死ぬんだよ…クッソが…』


輔はその場で意識を失った。二度と戻らない意識は何処かへ消えていったのかもしれない。


その直後、「MAC」というワッペンを腕につけている武装をした男達が輔の遺体を持って行き、俺に銃を向けた。


『抵抗せずに手を挙げろ!』


『MAC?俺が人を殺したから…か…この街に来て、こんな目に合うなんて俺ってついてないな…まぁ、仕方ないかな…』


ブツブツと独り言を言いながら、平然としていると武装した連中の一人が銃を撃った。撃ってしまった。


勿論、放たれた銃弾が刹覇に当たることはなかった。弾き返されたように銃弾は浮遊しゆらゆらと揺れながらも銃を撃った男の心臓を貫く。


『貴様!何をした!手を挙げろと言っているのがわからないのか!』


『分かりました。手を挙げるのでそんなに怒らないでください。俺自身何が起こったのか意味がわからないので…』


刹覇は、手錠をかけられ車へ乗せられてどこかへ連れて行かれてしまった。


刹覇の能力にまさか、気付く人間なんていない。何故か?


もう、この都市に。この世界に能力者は存在しない…ことになっているから。


刹覇は、車の中で笑った。

その笑いに気づく者は居なかった。


気付いていれば、死ななかったのに…。










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