水爆ノ龍(前編)
"水爆ノ龍"と呼ばれ、銃を制した少年が居た。名は、水泡瑞貴。
彼の最強に辿るまでの所謂、過去の物語。
1年前。入学式。
有り余る元気と期待を膨らませ、俺はこの学園に入った。
なんの武術を学びたいとか、そういうのは決めず…流れに任せた。
流れが全てを決めてくれるから。全て嫌なことも楽しいこともみんな。水の流れのように決まっていく。
入った当初、友達は居なかった。
友達なんてものは流れで出来ると思ってたから話しかけなかった。
しかし、一向に友達は出来ない。
なんかもう、それで良いやって考えるようになった。
授業を受けているうちに、銃という武器に興味が湧いて俺は銃を使うことにしたのだ。
同じクラスの奴らも殆どが銃。
少し不安になったが、周りは関係無いと心に決め練習を尽くした。
最初から、というわけでもないが。
初めて打った時は、的の中心ギリギリに当たった。
しかし、二発目以降は絶対に中心。
いつしか、それが当たり前になっていった。
ある時、授業で実技テストがあった。俺は、百発百中で中心を外すことはなかった。
先生は、こう言った。
『水泡、お前。武闘演戯って知ってるか?』
『この学園で開かれる、各種の武術者最強を決める大会ですよね?』
『そうだ。俺はお前をこのクラスから推薦、シードとして出場させたい、どうだ?』
『あ…ありがとうございます!』
俺は嬉しかった。
一緒に喜べる仲間がいないのはしょうがない。俺にそういう"流れ"が来なかったんだから。
でも、怖かった。
嫉妬の目が、陰口が…。
俺は、その恐怖から目をそらした。
知らないと…。
武闘演戯一週間前だろうか。
俺は、あるニュースを聞いた。
それぞれのクラスでシードが決まったと……。
シードの名前は玄関前に貼り出されているらしい。
俺は見に行くことにした。
人がかなり群がっている。
しかし、身長の低い俺でも見える位置に"水泡瑞貴"と顔写真付きで貼られていた。
嬉しかった。
俺は思わずガッツポーズを独りでにしていれば背後から俺の名を呼ぶ者が現れた。
『君が水泡瑞貴?俺は、柳瀬凌駕だ!よろしくなっ!』
『柳瀬凌駕って…剣術のシードさん?』
『おう!俺はこの大会で一位を取るって目標があるんだ!お互いに頑張ろうぜ?仲間としてさ?』
『仲間…?』
『俺らは、もう友達だろ?だから、仲間ってな?』
『友達…仲間…』
その直後、凌駕は顔をグーパンで殴られ吹っ飛んで行った。
『ごめんね!あ、私は黒神歩美!凌駕の付き人みたいな感じかなー。っと、凌駕が突然仲間とか友達とか臭いセリフ言ってたから謝罪を代わりに…』
歩美の言葉を遮るように凌駕の声が空中に発せられた。
『何が臭いセリフだよ!俺はマジでそういったんだって!』
『だから、それが臭いっての!』
『大丈夫…臭くないよ。俺、君には負けたくないし!種目違うけど、俺が先に優勝してやるから覚悟してよ!』
『おう!負けねーよ!俺は!』
その後、凌駕と歩美と別れ教室に向かっていった。
努力した甲斐があった。
俺は幸せ者だ。
やっと。友達が出来た。
だから、俺は絶対にこの大会で優勝する!
俺は心に決めた。
瑞貴の過去編です!




