最強達の集会
自分等が挨拶を返し、席に座ると全員が笑顔で元に戻っていく。当たり前のことなのに、なぜかぎこちない。この空気に触れているのが辛い。そう感じてしまうほどに扱いが苦手だと改めて思った。
一年生の頃は気兼ね無く、誰でも話しかけてきてくれたものだが、今では誰もが特別扱いをやめてくれない。やめるように言っても良いように言われて終わりなので、彼は諦めている。
『そろそろ時間かぁ…ちょっと野暮用にラリってくるわ!』
『え?なんか今…』
教室にある時計に視線を移すと、そろそろ約束の時間だと言うことに気づいた。
凌駕は、後ろの席の歩美に向かって言葉を放つ。
しかし、思った通りに口が回らず、舌を噛んでしまった。口内に痛みが走ったが、痛みなんかよりも恥ずかしさに胸の痛みが酷い。
なんとか、痛みを抑えながら誤魔化そうと試みる。歩美は鈍感なのでなんとかなるだろうと思い。
『ん?どした?ちょっと行ってくるよ』
『うん、いってらっしゃい!』
やはり歩美は鈍感だったのか、歩美にはバレなかった。歩美には←。
隣の席で爆笑しているものが一人、坂上 駿。剣術総合ランクはSで俺を特別扱いしない、唯一無二の存在。性格上親しみやすくて良い奴だがなんか裏がありそうな雰囲気がある。
『凌駕wwww噛んだねw』
『え?噛んだ?』
歩美が駿の言葉に反応し自分の方を向いてくる。汗が止まらない。
まさに冷や汗。
『いや、何でもねぇよ!じゃあな』
そう言って凌駕は席を立ち、廊下へと出て行った。
すると、駿がひょこひょこと付いて来るのに対し後ろを振り返り、嫌そうな表情で疑問を問いかける。
『何だよ…』
『いやぁ、別に?カッコつけて行ってくるぜ!って言おうとしたらwラリってくるwwんで、どこ行くの?』
半分笑い堪え…笑いながら駿は自らの用事を問いかけた。
『慈水からの呼び出しだ。またな』
『あぁ、成る程ね。いってら〜』
駿と廊下で別れると屋上へと向かった。
これから授業なのに呼び出しと言って席を外して良い理由は他でもなく武闘演戯でSまでの実力を取ると将来性を感じられ授業に出なくても良いと許可が下りるからである。
しかし、出なくても良いというだけで出れないわけではないためか歩美は全部出ている。
彼女のマメな性格には度々驚かされる反面、助かっている部分もある。そんな歩美を凌駕は心の底から大好きだ。
ーー
屋上へ着くとまだ誰も来ていないようだった。
仕方ないので屋上の柵に腕を乗せながら気長に待つことにした。
『凌駕、早いね〜」
すると、扉の開く音と共に聞き覚えのある声が背後から聞こえてくる。思わず後ろを振り返り、その人物に言葉を紡いだ。
『瑞貴か。思いの外早く着いちまったようでよ〜。そんなに早く出た覚えは無いんだけどな…』
水泡瑞貴。銃術総合ランクSSSの実力者。友達をあまり作らない主義だが凌駕といるとお調子者に変わる少年だ。
『お前達、遅れてすまない。呼んでも来ない奴がいると思ったから一人一人呼びに行っていた。』
屋上に現れたのは、弓部門sssランクの天獄慈水だ。その後ろにはぞろぞろと各分野のsssランカー達が着いて来ていた。
『いきなりだが、出席を取るぞ。名前を呼ばれたものはその場で頷け。』
『剣術総合順位第1位"雷光ノ剣"柳瀬凌駕!』
『銃総合順位第1位"水爆ノ龍"水泡瑞貴!』
『槍総合順位第1位"疾風鬼神"速水 綾!』
『鎌総合順位第1位"漆黒ノ神"磨崖 神!』
『弓矢総合順位第1位"天使殺し"天獄 慈水!』
『槌総合順位第1位"破壊ノ鉄槌"獅子王尊!』
『鞭総合順位第1位"次元斬り"御喜 舞花!』
『杖総合順位第1位"魔術師狩り"佐々木 陸奥!』
『機械使い総合順位第1位"機械王"夜麻 陽介!』
『扇使い総合順位第1位"風来女"舞清 茜!』
『以下のものは前回の武闘演戯の結果によるものとして見なしランクは関係ないものとする!』
慈水の出欠調査に対して全員が頷き終わると、本題に入ろうと澄ました顔で慈水は続けた。