自分の中の自分
その頃。
『我々、TBVは本部が壊されても!能力者どもを撲滅するために!この都市を守る!』
TBVの北支部では、TBV最強のチームが全員集まり集会をしている。
『神守、お前の担当はアトリビュートという組織の撲滅だ。あの有名な無敵が居るが大丈夫だろう?』
『大丈夫だと思いますが、油断は出来ません。全力で行かせてもらいます。』
神守蒼梧。
TBV最強の男。未だ無敗のこの男は、都市外の暴れん坊を殺しまくっているエリート捜査官なのだ。
『我々、TBVは本部を壊され危険者まで奪われたが関係ない。我々は、治安を守る組織!特殊武術部隊なのだから!』
お偉いさんの一人がそう叫ぶと、その言葉に続いて叫び声が聞こえた。
『へぇ、アトリビュートの担当が神守君かぁ。僕ら潰されちゃうかなぁ〜』
モグモグと骨つき肉を頬張る巨体の男が一人。そう呟いた。
『まぁ、負けるわけないけどなぁ。』
ソイツは、肉を完食するとその場から消えた。神守は彼の動きをしっかりと肉眼に収めていて。
『へぇ、俺見られてたかぁ。もう、捜査官ごっこは終わりかねぇ。取り敢えず、あっち戻って報告しないとなぁ。』
都市のどこかのビルの上でそう呟くと、彼はその隣のビルへ移動する。
無音で、テレポートという能力の類に見えてもおかしくないように。
『能力者ですか…仕方ないですね、後で全員まとめて抹殺という方向に切り替えておきましょう…』
彼の様子を何処からか見つめていた神守は真っ暗な影へと去っていった。
『んでェ、あの面倒な神守がアトリビュートの担当になったんだってなァ?闇風ェ、てめェはこれで捜査官ごっこ出来なくなったなァ、身元バレしてどうすんだよォ!』
『悪い悪い。俺だってしゃあないじゃぁん?』
骨つき肉を頬張りなら謝罪をする闇風理一。
その様子を見て、駿は笑った。
『良いじゃん、そいつ殺せば捜査官として生きていけるわけだしさ?大丈夫。俺が殺すよ。』
『あははァ…そうかもしんねェけどもうちょっとやり方考えないとなァ?』
『じゃあ、やり方は考えてよ。俺はちょっとコンビニでも行ってくるからさ』
それだけ言うと、駿はその場から消えた。消える直後、ニヤリと微笑んで。
『なァ、最近。駿変わったかァ?』
『リーダーが変わった?いや、うん。確かにそうかもしれないなぁ…。』
駿の様子がおかしいことは、流石の終も感ずいていた。それはそうだ。
実際、駿は変わった。
無敵という異名をつけられた最強最悪の能力者は一段階進化を遂げたのだ。
『俺は、凌駕と歩美に接していた頃の俺じゃなくなってるみたいだよ、お前らはさっさとあっちに行っちゃってるけど俺は…。』
『もしかして寂しいのか?それじゃあ、無敵の名が泣くぜ?アトリビュートの創設者で俺自身でもある坂上駿君よぉ?』
自分の心の中で、誰かが話しかけてくる。もう慣れっ子だ。昔からずっとこんなことがあったから。
『まぁ、寂しいよ。正直、君が誰なのかは俺自身でも少し感づいてるけど。君はさっさと俺の力にならないの?』
『ならねぇよ、お前自身が俺を求めなきゃ意味ねぇっての。まぁ、今の段階じゃお前に敵無しって感じだからなぁ…俺もいらねぇか。』
『敵無し…ねぇ…』
コンビニの前で立ち止まる。
背後に五人、前方には四人の男達が武器を持ち此方を見ながらニヤニヤと笑っている。




