呼び出し
武術都市で作られる武器にはそれぞれ特殊な能力がある。正式名称を武器スキルという。
剣士の場合は、剣術スキルと呼ばれており、銃の場合なら銃撃スキル。
武器によって呼ばれ方は様々なようだ。
スキルの元とされているのが、"能力者"の体内にあるATB核と呼ばれるもので、ATB核を少量だけ武器を作る際に練り込むことで武器スキルを得る事を可能とする。
スキルには種類があり、自分のスピードを高めるものや破壊力を絶するものまでありとあらゆるものが存在し、ランクによって強いスキルを持つことが許される。
しかし、普段。学園外や使用が許可されてない場所でのスキルの使用は以下のものとなる。
"TBVに連絡が行き、都市を強制的に去る"
『この校則が見えませんの?なんであの場所でスキルを使うんです?もし、民間人の危険が……』
凌駕と歩美は職員室に呼ばれ武器主任の赤崎先生に説教を食らっている。彼らのランク=成績が高かったので今回は許されたが、次はないと警告された。
長い説教も終わり、彼らは授業に戻るため廊下を歩いていた。真っ白い床に真っ白い壁、真っ白い階段に真っ白い天井、清潔感を保つために学園内は大抵白くなっている。シンプル過ぎる部分が嫌だと思う生徒も居るらしいが、苦情が反映されることはない。都市の意向だからだ。
『悪いな…』
『いいよ、武器没収とかは無かったしさ』
教室へ戻る途中の廊下で凌駕は思わず謝罪をした。自分のした事が武術者として羞恥な内容だと改めて知ったのだろう。
『軽はずみな行動はやめてよね?凌駕は馬鹿なんだから!』
『馬鹿って…酷でぇなー…確かに馬鹿だけど…』
歩美が凌駕をからかうように話していると。あっという間に教室の前に到着していた。彼らは扉をあけて教室の中へと消えて行った…。
やがて学校が終わり、凌駕は下校途中に門の近くを通りかかったところで立ち止まった。
自分を待ち伏せている相手が見えたからである。
『まさか、剣城学園の剣術総合ランクSSSの"雷光ノ剣"が門前でスキルを使うなんて、如何なものかな?』
『うるせーよ、事情はいろいろあるんだよ!』
眼鏡をかけた黒髪の少年が眼鏡をたくしカチャリと上に上げる仕草をしつつ呟く。
『そうかなー、単に遅刻しそうになったからだろ?』
彼の言った一言はまさに図星といったところのもので。
『う…うるせ!じゃあな!』
顔を真っ赤に染めながらその場を去ろうとすると少年はこう言った。
『一週間後の武闘演戯。楽しみにしてるよ、次こそは負けない』
『あぁ、楽しみにしてるぜ』
背を向けながら手を振ると逃げるように立ち去った。
『ところで…あいつ誰だっけ…』
寮に帰る最中、凌駕は悩みに悩んでいた。どうしても先程の少年の名前が思い出せないのだ。
『ま、いいか』
ちょうど寮に着いたのか、中へと足を運んだ。石で作られた学生寮は、校舎よりも大きい。見た目だけでお金のかかったような、寮だが中身もしっかりしている。剣城学園の生徒だけが入れる特別な寮。八十神寮。約五千万人の生徒がここに住んでいる。
各部屋にはバスルーム、リビング、和室まで一つの部屋だけで高級ルームに見えるほどの設備だ。
また、食堂はとても大きく入居者全員が食堂に入ってもまだ少し余りの席が出る程。
ここの寮の一番の名所は、武闘場。
大規模な武闘場は何よりも広く、
本堂ではなく別棟に位置している。
様々な武術を自ら練習することができるのだ。毎日、多くの利用者が訪れている。
今日は風呂に入り、晩飯を食べずに就寝すると計画を立てればその通りに実行し夜を明かした。
朝目覚め、朝食を食堂で済ませると歩美との待ち合わせのため玄関へと向かう。
『おはよう〜』
『おう、おはよう』
凌駕が玄関へ向かうもいつも通り歩美の方が早く玄関前に居たが内心悔しそうにスマートな笑顔を振る舞うと学校へ二人で向かった。今日は遅刻ではなく、普通に登校し教室内へと足を進めた。
『凌駕様と歩美様、おはようございます!』
教室へ入るもSSSとSSの扱いは特別。まず、様付け。そして敬語。凌駕はこのスペースがとても嫌いだ。
『おう…おはよう』
『おはようございます』
クラス全員が自分達のことを尊敬しているらしく男女ともに文句一つ言わず、異常な扱いで接してくる。
中には媚を売って剣術を学ぼうとしてくるのもいる。普通にお願いすれば凌駕は了承するのにも関わらずだ。
畏まったような相手が凌駕は苦手なのだ。普通に接して欲しいという願望は彼らには絶対届かないと考えるしかない。