自由という欲望
『ここねっ!はぁ…はぁ…』
自動で開くドアの目の前で息を切らす薫。走り疲れたのだろう。
薫がドアに手を突こうとすると、後ろから誰かに腕を掴まれ突き飛ばされる。
『馬鹿かァ?このドアは俺の電撃が通ってんだァ、お前だって知ってるだろうがァ?急がずゆっくり行こうぜェ?彼奴のためによォ』
『うん…じゃあ、お願い!』
終がドアの電撃を消すとドアは開いた。中には、複数の白衣を着た人物が驚いた顔で薫らを見ている。
『空吹楓さんと雷ヶ峰終君、どうしたんだね?こちらに何か用で…も…』
白衣を着て眼鏡をかけていた研究員の一人が言葉を言っている途中で首を跳ね飛ばされる。
『空吹楓?私は、柳瀬薫よ!』
薫の言葉に、騒然の声を上げ始める研究員。
『柳瀬薫は、我々の最高傑作だ。お前は空吹楓。頭でもおかしくなったのか?アレを見ろ!』
薫は、男の指を指した方へと視線を向ける。円状のガラスケースの中に透明な液体と共に閉じ込められ酸素マスクを付けられている薫の姿があった。
『私の父と兄の才能が素晴らしいから私を選んだんでしょうけど、貴方達は私の正体を知らないようね…なら、コレで…いいかしら?』
パンっと音が鳴り響き、ガラスケースは割れる。機械の破損が影響で煙幕が張られ空気と混じる。
一つの部屋に無音が、静寂の世界が広がって定着しようとしている。
数分か、時間が経てば薫が裸の少女を抱き抱えこう言った。
『これで分かったでしょう?』
その姿は一目瞭然、薫は自分の本当の姿を何年かぶりに現したのだ。
『なんだと!?では、お前は何故!空吹楓に!』
『そんなの、自由という力が欲しかっただけよ』
薫の言葉と共に、バキボキと乾いた音が連続して巻き起こり、研究員達は白目をむいて倒れていった。