勘違い。
『何故、君がここにいるんだい?空吹楓さん』
『貴方は、私達の目的のために邪魔な存在…排除します!』
『ほう?かかってきたまえ…』
血まみれの銃弾は、楓を貫こうと真っ直ぐに迫っていく。
『私の名前は、柳瀬薫よ!』
薫の言葉に反応したのか、そうだったのかと疑問になるが。
銃弾は、Uターンをするように男のほうへ向かっていく。
『柳瀬薫!?お前はあの時の戦争で死んだはずじゃっ…!?』
して、貫く。
薫は男へと拳を向け腹部へと叩き込む。
『私が本物の楓を殺したから…ねっ?』
襲撃されたTBV本部の全照明が落ちる。この時男は、人間の顔とは思えないほど歪んだ薫の顔を目撃することはなかった。
『剣城学園学園長…榊海道。貴方の人生は私の手によってバッドエンドへと向かったようね、さようなら』
なんの照明もない、真っ暗な場所。
そこで薫は顔を歪めず、真顔のままそう呟き走り去っていった。
雷ヶ峰終という犠牲者をその場に残して。
『キリが無いな〜!お前らいい加減死ねよ!』
地上では、磨崖狂が能力者と戦っていた。終の心臓が機能しなくなるまでは…。
『術者が死んだから、人形共は機能しなくなったのか〜?ま、いいぜ!』
磨崖狂が地上での戦闘を終えたことを自分の中で認識すると凄まじいスピードで地下の本部へと向かっていった。
その頃。
TBV本部、研究部屋では……。
『生命維持力向上!真異能体の完成まで後10分です!』
『ふむ、此奴が出来れば我らTBVに敵は無い!ハハハッハハハハハ!!』
『柳瀬薫!お前は私達TBVの最高傑作となるのだ!』
TBV研究員は勘違いをしていた。
本物は今、空吹楓として生きている。彼ら異能体として使っているのは空吹楓の身体だという事実。
知っているのは、空吹楓本人と柳瀬薫のみ。最強最悪の矛盾が彼らを襲うこととなるのか。結末については誰も知る由は無い。