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【武器世界物語】  作者: ezelu
第1章 武術都市の闇
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黒神歩美

指名手配犯となり学校から、日常から、普段から消えた凌駕の影響は大きかった。


クラスでは、泣く者もいれば嫉妬、妬みから愚痴を吐く者までクラス全体の雰囲気と空気は変わってしまった。


少なからず、自分自身も大きく変わってしまったのだとそう感じている今日この頃。


黒神歩美。凌駕の大切な友人、いやそれ以上かもしれない存在。


彼女の人生もたった一人の人物が消えたということだけで大きく変わっていた。

なんだか冴えなく苦しい毎日、門の前でスキルを発動するバカはもういない。


ふと、数日前のことを思い出す。


《指名手配されていた柳瀬凌駕容疑者が武術都市東区にて心臓を抜き取られ殺害されているのを地元の登山家が発見。通報したとのことで、現場からは凌駕容疑者以外の指紋及び血液は無く、TBVも捜索の目処が断たれている状況です》


街中の電光掲示板で流れていたニュース、たまたま通りかかって目撃した歩美はその場に泣き崩れた。


『嘘でしょ…!?』


嘘に決まっている、これは現実じゃない。夢だ。そうなんだ。そうであってほしい。自分の中で何かが壊れる音がした。


気がつくと大きな男が目の前に立っていた、男は歩美を見るなりニヤついてこう言った。


『君が黒神歩美さんだね、一緒に来てもらうよ』


後ろから何者かにハンカチのような物で口を押さえつけられるとそこで意識が途絶えた。

きっと催眠系のガスか薬がハンカチについていたのだろう。ゆっくり瞼を下ろした。


『…そろそろお目覚めかな?ハハハ!凌駕君は残念だったよ、我々に一人で立ち向かってきてね。勝ち目がないのは当たり前のことだろうに!!』


意識が戻ると違和感があった、薬の副作用か。頭が痛い。凌駕を健気に笑う男達が許せない!憎しみのこもった表情で瞼を開くとTBVという文字が肩に入った服を身に纏う男が数人ほど立っていた。

廃墟ビルの片隅、助けを呼んでも誰も来てはくれないであろうような場所。私の人生はここで終わる。そう実感するに値する現場。


だが、それよりも憎しみが勝ち誇った。自分なんてどうでもいい。ただ、凌駕を殺したこの人たちが憎い憎い憎い!

何で!何で!よくも!よくも!

声を出そうとしたが、声は出ない。

代わりに沈黙が訪れる。

だが、直ぐには消えて。


『ほらほら、どうした?んん?まさか…!ショックで声が出なくなったんじゃないのか?』


男達は視線をこちらに向けながら笑っている。


やめて。やめて。必死に心の中で呟くも声は届かない。手足を縛られ古めかしい椅子に座らされている。目は見えても声が出ない。なんの拷問だろう、歩美は思わず死にたくなった。

辛い現実から逃げてしまえば、大好きな凌駕に会える。やはり、現実は残酷で。


『お前は俺らのストレス解消の糧として働いてもらうとするか』


男達は歩美の座っている椅子を軸として円状に取り囲むと、ひたすら蹴り飛ばす。を繰り返した。

痛みのあまり、歩美は意識を失った。

正確に言えば、もう意識が戻らない状態になったといえば分かり易いだろうが。


歩美の死とほぼ同時に廃ビルの壁に大きな穴が空いた。当然、人間がどんなに頑張っても開けられるような穴ではない。


「来るのが遅かったな、化け物」


楓の目には血塗れで地面に横たわる少女の姿が映った。して、怒りが湧き上がる。


『私の仕事(さくひんそうさく)が無くなってしまったじゃない…どうしてくれんのよ!』


『まぁまぁ、そんなこと言わないでよ。俺らはうっかり手を滑らしちまっただけさ。ま、足だけどな!ははははははっ!』


男の笑い声と重なり、バキィッと音が鳴り響いた。男の腹部に楓の拳が突き刺さった音。直後、パンッと肉が弾け男の背中に大きな穴が開く。巨大な空洞から溢れる血液で床を赤く濡らしていった。


『…あら?どうしたの?私もあの娘と同じようにしてみなよ』


『のっ…能力者如きがぁっ!お前なんか俺らTBVにしてみたらカスなんだよっ…!!』


『そう?なら、カスな私を今ここで殺してみてよ?ま、私は死ねないけど…ねっ?』


男達は怯えながらも強がり、空気の中に鋭い刃物が飛んでいく場面を見過ごす。して。


『貴方達の運命は常にバッドエンドのみよ、この私に出会った時からねっ!』


肉を切り裂かれ激痛に耐え切れなく複数の男達の生命は肥え。血飛沫の合間に楓の笑いが見えた。


すると、真っ暗な部屋に突如光が灯され、大きなモニターのようなものが起動していた。


『遂に、裏切りを発見することが出来たなんてな〜!嬉しいぜ!この磨崖狂様が直々にお前を殺してやるよ覚悟しとけ!』


真っ白い画面には何も映らない。

しかし、声だけは聞こえるようで。


『元々、あんた達の仲間になったつもりはないわよ。私は私の目的を果たすために生きるんだからね』


彼女の姿は空気と混ざるように闇へ消えていった。


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