走馬灯(後編)
その後、十六歳の誕生日。
自分の実家でケーキを独り食べていた。
涙に埋め尽くされケーキの味は全く分からなかった。
ケーキを食べ終え、独り家で泣いていると。ピンポーンっと音がする。
『やべ…こんな顔じゃ…』
涙を必死に拭いていると、もう一度音が鳴り響く。
『はーい!』
鍵を開け扉を開けるとそこに立っていたのは、歩美だった。
『凌駕、どうしたの?その顔』
『いや、何でもないよ』
何でもないわけがなく、目が赤くなっていた。
『んで、どうしたんだ?』
『あぁ、あのね。凌駕の誕生日だからプレゼントと刄さんの命日だし、コレを』
『ありがとな』
プレゼントと供え物を貰うと、去ろうとする歩美に声をかける。
『あっと…上がっていかないか?』
『え?でも、私帰らないと…夕飯まだだしさ』
『だよな…じゃあな』
凌駕が残念そうに言うと、歩美は察したのか口を開いた。
『気が向いたから上がっていく!さぁ!ケーキ食べよ!』
笑顔で凌駕の家に入っていく歩美。
『ありがとう…』
『え?なんか言った?』
『いや、何でもねぇよ』
リビングで歩美がテーブルの上にケーキを広げている時。
凌駕は、刄の仏壇に供え物を置いてチーンと音を鳴り響かせる。
手を合わせ、"俺は父さんの居ないこの世界で二度とあんなことが無いように強くなって全てを守るから"心の中でそう呟いて立ち上がった。
歩美とケーキを食べ終わり、話をし始める。
『今年から剣城学園に入ったわけだけど、凌駕は寮で暮らさないの?』
『俺、金ないから無理だよ』
『えーと、それはなんとかなるよ!』
『何でだ?』
『武闘演戯で優勝すれば大丈夫になる!ていうか、SSSランクなんだからそういうのOKなはずだけど?』
『あー、そうだったな』
『もー、馬鹿じゃないのー?』
『うっせw』
その後はたわいもない話をし盛り上がった。歩美はやがて寮の門限の九時が迫ってきているのか帰っていった。
『寮か…』
翌日。
『学園の寮を?まぁ、SSSランクならば無料で寮に入れますけども今の家じゃなくて良いんですの?』
『良いんです、いつから入れます?』
『あらあら、分かりました。今日の放課後に寮に来てください。今の家から荷物は取らなくて結構です。此方で転送いたしますの』
『あぁ、ありがとうございます』
こうして、凌駕の寮生活はスタートした。
『色々と適当過ぎるだろ…この学園…』
その後、寮で一年過ごし様々な思い出を歩美とともに作った。
武闘演戯で優勝した結果、友達も増え生活も安定していった。
自分の人生に何も苦しいことはないくらいに。
しかし、友達が消えた。
自分は犯人扱い、能力者に出会い殺された。
自分の走馬灯は"今"に近づくにつれて倍速並みのスピードに変わっていき消えた。
走馬灯が終わると、今度こそ闇へとその魂は消えていった。
その頃。
『黒神歩美…この女が次のターゲットだ』
『御意』
真っ暗な場所に一つの灯火が付いている場所で空吹楓は一人の男の命令を聞いていた。
楓の真後ろには、磨崖狂の姿があった。
狂はニヤリと笑うとその場から消えた。




