乙女ゲームの世界なんて御免です!~「二度あることは三度ある」なんて、冗談じゃない!~
乙女ゲームの世界なんて御免です!~「二度あることは三度ある」なんて、冗談じゃない!~【2st】
匿名希望のユーザー様に続編を書いていただき、触発されて書いちゃいました(笑)
前作を読んでくださった方々、ありがとうございました。
おかげさまでランキングに作品が……!
続編を望んでくださる方がたくさんいてくださったので、急遽書いてみました。
またしても二時間クオリティーです。
誤字脱字などありましたら教えてくださいませ!
*タイトルの【2st】は、
「2(セカンド) story」という意味ですので、間違いではない……と、いうことにしといてくださいませ(苦笑)
ご指摘くださったユーザー様方、ありがとうございました。
『乙女ゲームの世界なんて御免です!~「二度あることは三度ある」なんて、冗談じゃない!~【2st】』
「本当に良いのね、リア」
「えぇ、お母様。
ーー今まで、本当にありがとうございました。
どうか、これからもお元気で」
「後悔だけはしないでくれよ、ユリア。
お前はいつまでも俺達の大事な娘だ。
困ったことがあれば、いつでも頼れ」
「わかりましたわ、お父様。
それに……。たとえ何があろうと、私の家はここですわ」
「行ってしまわれるのですか、あねうえ。」
「えぇ。行ってくるわ、エル。
風邪などひかないように、元気でね」
「「お嬢様!」」
「リン、ハンナ。
貴女達も、元気で。
エルのこと、私の代わりに頼みます」
「……お嬢様、馬車を正面に着けておきました」
「セバス。これからもお父様を頼むわ
それと……。今までありがとう」
私の名前は、ユリア・トールカレッタ。
トールカレッタ公爵家の長女であり、とある乙女ゲームの悪役令嬢。……でした。
『わたし』は過去に二度、乙女ゲームの世界に転生し、二度共悪役令嬢の立場に産まれ、そして死んだ。
一度目はセカイの強制力によって、記憶通りに。
二度目は……。
二度目は、ゲーム終了後、記憶にはなかった展開によって。
そして、今。
『わたし』は三回目の転生にして、三度目の悪役令嬢『ユリア』として生きている。
……でも、それも今日で終わり。
『トールカレッタ公爵令嬢』(=私)はこれから、病気のため公爵領にある別邸で療養するーーと、いうことになっている。
……表向きには。
何故かと言うと、トールカレッタ公爵夫妻、つまり『わたし』の四番目のお父様とお母様を説得して、旅に出ることにしたのだ。
元々『わたし』は旅が好きで、まとまった休みがあると必ずと言ってもいいほど、毎回旅行へ行っていた。
けれど、『悪役令嬢』となってからは一度も旅行をしたことがなかったのだ。
旅行する余裕すらないほど、死亡フラグ回避に全力を尽くしていたと言えばそれまでなんだけど。
今思えば、相当もったいないことをしたと思う。
その世界だけの「何か」を見逃してしまったのだから。
その何かっていうのは、例えば動植物だったり、景色だったり、料理だったり、そういったもの。
元々『わたし』も、その国その地域独特の「何か」を見たりする事が好きだった。
ただ、一人で旅をするには『トールカレッタ公爵令嬢』という肩書きは重すぎるし、かといって護衛を山のように付けて旅をするのも性に合わない。
だから、『トールカレッタ公爵令嬢』という肩書きを一旦置いておく事にしたのだ。
幸い、前世諸々の記憶を赤ん坊の私は受け止め切れなくて、良く体調を崩していたから、療養という話もそれほど不信に思われないはず。
お父様とお母様に旅をしたいと言った時、「いい(ぞ/わよ)?」と即答されたことには驚いたけど。
なんでも、お父様の家系には子供の頃から旅に出る人がたまにいるらしい。
実は父様もそうだった、なんて笑うお父様の言葉には衝撃を受けた。
剣の素振りの時、「重い」と言ってヘナヘナとした軌道を描いて降り下ろされる剣……につられて派手に転ぶお父様の姿も、実は偽りだったのですか!?
だとしたら、「お父様が見本を見せてやる」なんて自信満々に稽古中に現れたのにも納得できます。
何故下手なフリをしたのかは解りませんが……。
まさか、お父様が戦えたとは……。
見た目も役職も文官(宰相補佐官)なのに、お父様、ハイスペック過ぎやしませんか!?
なんて驚いたのも、今やいい思い出。
結局、お父様が戦えるというのは私の早とちりで、お父様は本当に剣が重くて振れなかったらしいです。
旅に出て、やはり絡まれていたお父様を颯爽と助け出したのが、お母様ーーのお師匠さま。
そのまま二人のなれ初めの話が続き、話し終わったのが夕食の時間の直前。
この日だけで、随分私の中での両親像が変わりました。
お父様が後衛の魔法職(基本妨害系)だったのはよしとしましょう。
見た目たおやかで儚げなお母様が、実はフレイルやらモーニングスターやらの使い手だったことは、実際にその姿を見せてもらうまで、半ば誇張だと思っていました。
人は見た目によらないって言葉は、お母様のような方のためにあるのでしょうね。
若干遠い目をして悟りを開いたかのような私に、ポン、と慰めるように私の肩に置かれたお父様の手。
いつもの優しげな笑顔で鎖鎌を振り回すお母様の姿に、まざまざと、この世の不思議を見せつけられた気がしました。
その日の夕食はろくに味がしなかったことを、今でも覚えておりますわ。
と、昔の話はこれまでにして。
「行って参りますわ、お父様、お母様、エル、みんな」
13年間過ごした家に背を向け、執事のセバスが手配してくれた馬車に乗り込みます。
必要な準備は全て終え、荷物は既に別邸に運び終えている。
旅の期限は私が18歳になるまでの5年間。
それが意味するのは……。
いえ、それはこれから家を離れる私には関係のないこと。
ーー私が家に帰る時には、既にゲームは終わりを迎えているのだから。
私が願えるのは、この世界の主人公が、どうか正しく在るように。
ただ、それだけなのだからーー。
暗くなってしまった思考を切り替え、窓の外を流れる景色を楽しみます。
人工物などない広大な草原に走る、踏みならされてできた街道。天高く聳え立つ、雪化粧の施された山が連なり、その間を蛇行する広大で澄んだ川。
天には様々な色の鳥達が飛び交い、稀に「空の馬車」と呼ばれるワイバーンの定期飛竜便が悠々と空の道を飛んでいる。
そのどれもが、『わたし』の世界では見られなかったであろう景色。
胸が踊るとは、こういう事を言うのでしょうか。
久しく忘れていた衝動に苦笑して、改めて決意しました。
もう、乙女ゲームの役割に踊らされるなんて御免です。
ヒロインに全てを奪われるのは、もう嫌。
私は、私の好きなように生きたい。
だからこそ、私は旅に出る。
ヒロイン達に対抗できる力を手に入れる為に。
今度こそ、幸せに生きていく為に。
ーー今にして思えば、全てはこの時から始まっていたのだろう。
やがてこの世界を巻き込むことになる、『わたし』の最後の人生が。
何故かプロローグ風に。
【3st】を書くとすれば、今度こそ来週以降になります(笑)
「二度あることは~」の続きを書いても良いって思ってくださる方がいれば、ぜひ書いてくださいませ。
絶対に見に行かせていただきます(笑)
4月7日 前書き追記