異世界に頭から落ちたぜこの野郎
高校を中退した俺を待ち受けていたのは理不尽な社会と言葉通りの「お先真っ暗」人生だった。
「馬齢を重ねる」。なんて言葉があるが俺の人生は全く持ってその通りだと自負している。文字通りの「無駄な歳を重ねる」ことしか無かった。一体俺は何をしていたのやら。そんな俺とは対照的に、真面目に社会の一員として君臨している元友人(仮)なんて知ったことか。そいつはそいつ。俺は俺だ。まあその言葉には多少無理があることは重々承知なのだが。
取り敢えず、最低限の金とネット環境の整った電子機器さえあれば、苦痛なく生きていける自信がある。
ごめんなさい。
もう既に、このページ開いた貴方が俺に呆れているのことを、なんとなく感じます。
親の寄生虫は社会の荷物ですよね。
だからだと思うが、10月に入って2度目の月曜日、太陽がもう少しで昇るといった矢先。俺に天罰が下った。
俺は異世界に頭から落ちた。
右を見ても左を見ても、上も下も俺の部屋では無いのだ。
灼熱ではないが、太陽の光を体全体が感じている。2年ぶりの外の世界。記念すべき初発の感想は「やめて、死ぬ。眩しい」だった。
いつものようにカチカチとパソコンを打っていたと思えば、いきなり画面にエラー表示がされ、保存していないデータが抹消した。そこでいつものように、くそうと涙目になって終わればよかったものの、今回ばかりは違った。大事な文献を打っていた最中だったのだ。しかもかなりの長文。ニート風情がそんな大事なもんねえだろなんて思うかもしれないが、大事なものは大事なものなんだ。どこかのR指定が付くような如何わしい文章を書いていたとか、決して外道な行為ではない。多分。
話を戻すと、その大切な文献が消えた俺は取り敢えず画面を殴った。今にして思えば、何故そんなことをしたのか分からないのだが、兎に角殴ったと思う。しかし画面を殴った感触はなく、そのまま画面に吸い込まれた気がする。多分。
ここらへんは頭が興奮していたのもあってあまり覚えてないのだが。
そして、その衝撃で地面に頭から落ちた。
本当に画面に吸い込まれたのかもしれない。
だとしたらここはコンピューターの中の世界なのかもしれないぜ、だったら俺体力も攻撃力も最強なんじゃね。と期待したのも束の間。
深呼吸をしたその時、答えは直ぐに分かった。
肺に思いっきり空気を食い込むと、慣れていないからか変な所に空気が入って全力でせき込んだからだ。本当に辛かった。
ここは正真正銘、リアルの世界だと思った。けれど日本でもない気がする。いやむしろ地球ではない。うーん、もしかしたら銀河系でもないかもしれない。
なぜなら、どう考えてもおかしな生物が目の前にいるからだ。
頭が牛で男の下半身を持ち、見るからに悪役極まりない生き物。
俺の姿を確認すると、そいつはこの世のものとは思えない形相で此方へ突進してきた。肩幅といい、筋肉といい、普通の人間の比じゃない。人間で言うならボディビルダーと互角かそれ以上だろう。
瞬間目が合った。鳥肌が全身を駆け巡っる。俺は得意の攻撃技「悟る」を俺に命令した。そう、某ゲームのピ○チューに語りかけるように。
産んでくれた母上、それと自分に塾等投資してくれた父上、最期までこんな息子で本当にごめんなさい。