第1章 3
知れば知るほど、美果は自分が決めた団体が好きになった。ところが、どうしても好きになれない行事があった。コンクールだ。
座山高校吹奏楽部は人数が多い。どれくらい人数がいるかというと、全校生徒で九人に一人は吹奏楽部員、というくらいだ。その人数の多さから、コンクールはA編成とB編成に出場し、更にはそのメンバーは学年順ではなく、上手ければ一年生でも二年生を抜かしてA編成に乗せる、という実力主義だった。そして、その実力は、月に二回程度呼んでいる楽器ごとのパートトレーナーと、榊原の前で行われるオーディションで量られる。
定期演奏会の、温かく和気藹藹とした雰囲気に惹かれて入部した美果にとって、オーディションが近付くにつれて殺伐としてくる感じが嫌で仕方がない。加えて、技術が逆転したと判断されれば本番一か月前まで普通にメンバーが交代するから極度の緊張状態が続くのだ。オーディションは五月末で本番は八月中旬だ、たまったものじゃない。
美果はオーボエだから、オーディションは踏むべき手順であるだけでないも同然、半ば強制的にA編成に乗ることが決まった。そのようなパートがある一方で、クラリネットやトランペットでは熾烈な争いが繰り広げられている。そのような温度差が発生するのも、美果が嫌がる理由なのだ。