第1章 2
美果と座山高校吹奏楽部との出会いは、受験生になる直前の中学二年生の三月だ。友人に連れられて定期演奏会に行き、惹きこまれた。この中で演奏してみたい、と強く思ったのだ。それまで、美果は演奏に対してそれほど執着しておらず、友達と一緒にいるために部活動に出ているようなものだったから、自分に芽生えたその感情に戸惑い、戸惑いながらも初めてのその感情を大切にしようと決めた。
それから美果は、八月のコンクールまできっちり出てから引退し、それから受験勉強を始め、吹奏楽部に入りたいがために座山高校を目指した。当初、家から見える高校を志望しており、座山高校はそこよりもレベルが上だったため、親にも担任教師にも心配されたが、模試ごとに成績を上げ、遂に座山高校に合格を果たしたのだ。
合格が決まった後の定期演奏会にも勿論行った。前の年と同じようなサウンド、臨場感。美果の入部したい、という想いを強くするには十分過ぎる内容だった。
四月になり、当たり前のように吹奏楽部に入部した。入部して感じたのが、「生徒でつくっている」ということと、「卒業生との結び付きが強い」ということだ。一年生が入部した後、顔合わせ会をやるのだが、先生は隅の方で何も言わずに見ているだけだ。それに、何代も上の、先輩たちも同時期に活動していないような卒業生が来て、現役部員と交流する。すごいところに入った、と感じたものだった。