表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
抹殺師  作者: 碧衣玄
75/80

現れた少年

「凄いよコレ! 力がいっぱい湧いてくる!」


 甲多の周囲を緑色の風が舞う。


「抹殺師、食う」


「お断りだよ!」


 甲多が巨大な手裏剣を投げる。


「ながっ!?」


「手に取るように解るよ。次の動きが!」


(跳んでくる)


「抹殺師、食う」


 甲多の読み通り、冷獣人が飛び掛かってきた。


「はあ!」


 巨大な手裏剣を扇の要領で扇ぐと、風がたちまち暴風となって吹き荒れる。


「そろそろトドメだよ」


 甲多の髪が、金から黒へと変色し、緑色の風が巨大な手裏剣へと集まってゆく。


(えーと。技名どうしよう? ……よし、決めた)


緑風りょっぷう斬!」


「まっ……」


 暴風を纏った巨大手裏剣は、あっという間に冷獣人を切り裂いた。


「よくやったと言いたいが、まだ残っているぞ」


 斬牙の炎を受けても冷獣人達はピンピンしている。


「抹殺師、食う」


 冷獣人達は、雁斗達を無視して校舎に向かっていく。


「ざけんな!? 俺達を食うつもりじゃなかったのか!」


「違う! やつらの狙いは変わっていない。あくまで狙いは抹殺師だ」


「どういうこった斬牙!?」


「狙いは、ラー嬢だ」


「!」


 聞くや否や、雁斗が校舎に向かって飛んでいく。


「雁斗、先走るのは危険だ」


「俺なら問題ねえ。それよりも傷は良いのかよ?」


「完璧な治癒だった。問題ない」


 雁斗とダガーが窓から教室に突っ込んだ。


「きゃあ!」


「バケモンだ!」


 教室中がパニックになる。


「抹殺師、食う」


「皆、教室から出てくれ」


「雁ちゃん。もしかして専門家だったのか!?」


「……イッチ、黙ってて悪かったな……。そういう訳だから安心して逃げてくれ」


「友達置いて逃げれるか! ……って言いたいけど、正直お邪魔だろ? 死ぬなよ!」


「ありがとな」


 教室が空になったことを確認すると、雁斗はガントレットを発動した。


「抹殺師、食う」


「させねえ」


 雁斗は、足を踏み鳴らし、冷獣人の動きを封じると、拳を振りかぶった。


「抹殺師、食う」


 冷獣人はガントレットを掴むと、雁斗を外へと放り投げた。


「雁斗!」


 斬牙が間一髪のところを救い出した。


「無茶をするな。レクイエムと融合しているとはいえ無謀だぞ」


「大王とも融合してんだ。少なくとも死にやしねえ」


「それでも傷を負う! 大王の再生力を持ってもだ!」


「斬牙……お前」


「お前はこの頃、死を恐れていない。死なないこと、傷知らずの身体を持った故の驕りだ」


「抹殺師、食う」


 冷獣人が二人に襲い掛かる。


「ぐぅ……何をしている!? 呑気に話をしている場合ではない筈だ!」


 ダガーが攻撃を受け止める。


「俺の驕り?」


「そうだ。その驕りのせいで大勢の人が巻き込まれている。甲多に任せとけば確実だったんだ」


「俺は過信してたのか」


「緑風斬」


 巨大手裏剣が冷獣人を切り裂いた。


「雁斗さん! 斬牙さん!」


「甲多、すまねえ」


「羅阿奈さんは?」


「皆と逃げた筈だぜ」


「あとは教室に居る二体だけだね」


「抹殺師、食う」


「何だ!? 揺れてる?」


 校舎が激しく揺れる。


「抹殺師!」


 冷獣人が窓から入ってきた。


「赤い!?」


 雁斗が驚く。


「抹殺師、死ねや」


 赤い冷獣人は、黒板に向かって光線を放った。


「なっ!? なんてことを!」


 甲多が巨大手裏剣を投げ付ける。


「くだらない」


 巨大手裏剣が簡単に受け止められてしまう。


「いい切れ味」


 赤い冷獣人は、背後から舞莉愛を見せてきた。


「舞莉愛!? なせだ! 何故、舞莉愛を連れている!」


「抹殺師だからだ」


 舞莉愛の腕には、羅阿奈のリストバンドがはめられている。


「ラー嬢はどうしたんだ!」


「誰のことだ」


 赤い冷獣人は首を傾げる。


「……まさか舞莉愛……わざと着けていたのか!?」


「どういうことだ? 何で羅阿奈のリストバンドを」


「ラー嬢とお前が長い間会えてなかったのを気にしていた。少しでも長く居られたら二人のためだと言っていた。それが、こんなことに!」


「抹殺師、死ねや」


 赤い冷獣人が、気を失っている舞莉愛の首を絞めていく。


(止めろ……止めろ!)


 斬牙の左目が青色に変わる。


「止めろおおおー!」


 青白い炎が、赤い冷獣人を燃やしていく。


「何だ?」


「離せ。今すぐ彼女を離すんだ!」


「抹殺師ぃぃぃ」


 赤い冷獣人が舞莉愛を突き飛ばす。


「舞莉愛!」


 斬牙が呼び掛けるが応答はない。


「まっ……さつ」


 赤い冷獣人は燃え尽きた。


「斬牙さん、眼が!」


「変わってるのか?」


「変わってるよ。眼は青いし、髪の毛は赤いし」


「自分じゃ分からないものだな」


「……斬牙……くん」


 舞莉愛が気が付いた。


「舞莉愛!? 大丈夫なのか!」


「はい。羅阿奈ちゃんは無事ですよ?」


「無茶、させてしまった」


 斬牙は優しく抱き寄せた。


「あーあ。やっぱ駄目だった。ま、いっか」


「誰だ!」


 斬牙が警戒する。


「うん? 特別な名乗りをしたほうがいいか?」


「何者だ」


「誰なの!?」


「どいつもオラを不審者扱いか~。参った、参った」


「漸くお出ましか、黒幕。浮いてないで降りてこい」


 雁斗の両眼が金色に変わる。


「雁斗!?」


「雁斗さんの眼が変わった!」


「偉そうに。誰だ」


「名前を訊くときは自分から名乗れって、親父から教わらなかったのか?」


「……アノン……。オラの名だ」


「アノンだと!? あれがか」


 ダガーが驚く。


「俺は、桜庭雁斗。抹殺師だ」


 雁斗の身体に金色の毛皮が出現した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ