開眼の力
「この気配、冷獣人!」
雁斗が気配を感じて外に出る。
「どんだけ居んだ……十は居んな……」
雁斗が戦闘体勢に入る。
「雁斗さん!」
「雁斗!」
「んだよ……二人共」
「冷獣人の気配感じて、じっとしてなんかいられないよ」
「雁斗だけじゃ厳しいだろうしな」
「わーたよ。……来るぜ」
構える雁斗達に、冷獣人達が襲い掛かる。
※ ※ ※
「ねえ、花。あれって例の化物だよね?」
「そうだね。何で学校に?」
教室の窓から顔を覗かせる花の視界が、戦っている男子を捉えた。
「紅君!? どうして」
花は混乱していた。冷獣人が学校に現れたこと、そんな冷獣人に斬牙が果敢に立ち向かっていることにも。
「このままじゃ校庭に行っちゃう!」
花の心は、ざわめいていた。
※ ※ ※
「今までの冷獣人とは比べ物にならないぞ」
「僕達の攻撃が効いてない!」
冷獣人達に圧され、校庭まで来てしまう。
「面倒だ。一気に片付けてやら!」
雁斗は踏み鳴らして、冷獣人の動きを止めると、一気に殴っていった。
「抹殺師、食う」
「効いてねえか」
冷獣人が雁斗の身体に襲い掛かる。
「抹殺師!?」
「抹殺拳!」
冷獣人の攻撃は、雁斗の身体をすり抜ける。その隙に雁斗の攻撃が入った。
「……抹殺師、食えない……」
「しつこくなりやがって。手間が増えただけか?」
「なに突っ立ってる! さっさと次を!」
斬牙が冷獣人の攻撃に苦戦していた。
「わーてる。よっ!」
雁斗の拳が冷獣人を吹き飛ばした。
「そっちこそ気を緩めるんじゃねえよ。こいつら、確かに今までの奴とは違げえ」
「抹殺師、食う」
「疾風斬」
甲多のクナイが冷獣人を刺し続けるが、冷獣人は何度も起き上がってくる。
「なんなの」
「抹殺師、食う」
冷獣人が飛び掛かる。
「させん!」
ダガーが攻撃を受け止めた。
「無事か、甲多」
「兄さん! 僕なら大丈夫だよ!」
「それを聞いて安堵した」
ダガーは光線を放った。
「……効かぬか」
「兄さん、今までの冷獣人とはレベルが違うんだ!」
「そのようだ。ここに来る前に戦ったヤツとは比べ物にならん」
ダガーが超高速で冷獣人を翻弄する。
(速さなら負けん)
「抹殺師、……食う」
「な!?」
冷獣人の体毛が針のように飛んでいく。
「兄さん!」
甲多は必死に風で吹き飛ばそうとするが、一本一本が重いのか、なかなか飛ばせない。
「……くっ!?」
光線で祓ったかに思われたが、それでもダガーの身体には針が突き刺さっていた。
「兄さん!?」
「我のことは構わん。戦いに集中するのだ」
ダガーが、突き刺さった針を抜くたびに血が溢れてくる。
「抹殺師、食う」
「抹殺拳」
甲多を狙っていた冷獣人に、雁斗が一撃を食らわせた。
「甲多、余所見は禁物だ」
「雁斗さん、兄さんが!」
「こんなの治癒術で治せば」
「やっている。が、効かん」
ダガーは治癒術を使うが、傷口は塞がれない。
「しゃーねえ。甲多、少しだけ耐えてろ。俺がダガーを治す」
「うん。お願い、雁斗さん」
「抹殺師、食う」
「僕なんか食べても美味しくないよ。突風斬」
冷獣人に突風を浴びせるが効かない。
「業火斬」
炎の渦が燃え上がる。
「……秋良が来てくれたが正直厳しいぞ。どうする」
「……攻撃が効かないんじゃ、どうしようも……!?」
甲多が突然、右目を押さえる。
「甲多!?」
「いきなり違和感があって……」
「甲多、目が緑だぞ!」
「え?」
甲多の視界が薄れてく。
(見え……ない!?)
「甲多!」
「抹殺師、食う」
甲多の耳は声を拾っていた。しかし、目は何も映さない。
(何も見えない)
甲多の脳裏に一人の笑顔が浮かぶ。
(美加も見れないの?)
甲多は、涙を流す。
「嫌だ! そんなの、いやだ!」
甲多の周りを強烈な風が包み込む。
「抹殺師、食う!」
「!」
「抹殺師……」
冷獣人の身体が、真っ二つに切れた。
「見える! 視力が戻ったよ!」
甲多は、投げ飛ばした武器を受け止めると、おもいっきり喜んだ。
「甲多、何をしたんだ!?」
斬牙が驚いている。
「解らないよ。解らないけど、勝手に身体が動いたんだ。この右眼なら相手を狙えると思えたんだ」
甲多の手には、巨大な手裏剣があった。




