雨の街
「ありゃりゃ。雨きちゃったん」
凖が病室から、外を眺める。
「失礼します。義手の調子はどうですか?」
医師が回診に来る。
「それなりに順調っす。ただ、こんな雨の日には神経が痛むん」
「気圧の関係かもしれない。雨の日に、頭痛が起きる人もいるからね」
「痛みは、生きている証。友人に言われたことがあるん。ウチ、絶対にリハビリを乗り越える! 先生、お願いします」
「その意気だ。頑張ろう、凖君」
凖は、リハビリに向かった。
※ ※ ※
「アキ!?」
「離れていろ! すぐに片付ける」
凖が刀を抜く。
「雲流白川空陣!」
地面に刀を突き刺すと、冷獣人に濃霧が包む。
「雲の様に白く、相手の視界を奪い……、川の様に透明に、術者の視界を聡明にする」
凖の刀は、冷獣人を素早く斬っていく。
「抹殺師、食う!」
冷獣人は、がむしゃらに暴れまわる。
「無駄だ。濃霧の範囲は、空の様に広い。相手が死ぬまで追い掛ける」
凖は、刀を鞘に納める。
「みえない……みえない」
「終わりだ」
凖の刀が冷獣人を斬った。
「アキ! 大事ないのじゃ?」
「ああ。にしても、さっきから何なんだ。ここんとこナリを潜めていた冷獣人が一気に現れた」
「嫌な予感がするのじゃ」
「しかも、オレにばかり襲い掛かってきやがる。誰かの命令を聞いているかのようだ」
秋良は、妙な違和感を覚える。
「アキばかり……! 抹殺師だけを狙っておる!?」
燐の顔が強張る。
「……だとしたらヤバい。この時間、雁斗達は学校の筈だ。仮に、抹殺師だけを狙っていたとしても、学校みたいな狭い場所なら巻き添えが出ても不思議じゃない」
「急ぐのじゃ! 雁斗達の気配は判るじゃろ!」
「ああ。出来ることはやるさ」
秋良と燐は、怯える人達を横目に走り去っていく。
※ ※ ※
「くっ!?」
迅を冷獣人の群れが襲い掛かる。
「抹殺師、食う」
「オススメしないよ? 俺、抹殺師だから」
刀鞘を振り回し、迅が冷獣人と距離をとる。
「まったく。とうとう痺れを切らしたかい? アノン」
「抹殺師、食う」
「アノンと会う前に死ぬわけにはいかない」
「食う!?」
迅の攻撃をくらい、冷獣人が吹き飛んだ。
※ ※ ※
「行かせん!」
「抹殺師、食う」
ダガーと冷獣人が、激しい攻防を繰り広げていた。
「我を食らう、か。……断る!」
ダガーは瞬時に間合いを詰めると、一気にダメージを与えた。
「目的は、学校か。甲多が危ないな」
ダガーが速度を上げた。




