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抹殺師  作者: 碧衣玄
7/80

違った青空

「ふわ~……ん? ……僕の部屋?」


 寝起きの甲多がボーと見ても、間違いなく甲多の部屋だった。


「母さん? 僕、なんで家に居るの?」


「夕方にね、雁斗君と雁斗君のお父さんが送ってくれたのよ? 甲多が気分が悪くなったからってね」


「そうなんだ……分かったよ。雁斗さんにお礼言わないとね!」


「甲多、もうすぐ晩御飯だからね?」


「うん」


甲多は自室に戻ると、右手首に着けている黄色いリストバンドを外す。


「……えい!」


「……はっ!」


「なんで変わらないんだー!」


 甲多が自分のベッドでジタバタする。


「……雁斗さんに教われば出来るかな?」


 甲多は決心すると、晩御飯のために下に降りた。


※ ※ ※


 翌日。


「母さん。ちょっと雁斗さん家に行ってくる!」


「気を付けてね!」


「はーい!」


 甲多は走り出した。


※ ※ ※


「はあ?」


「冷獣が全滅するまで戻ってくるな。以上!」


 迅が雁斗にキッパリ言った。


「戻ってくるなって!? ここは俺の家でもあるんだぞ!」


「だーかーら、お前が冷獣を全滅させればマルっと解決だろ?」


「親父も抹殺師だろがあ!」


「俺は俺で動いている。だからお前はお前で動けよ」


 迅は、雁斗の荷物を纏めたリュックを渡した。


「いやいや!? 流石に死ぬよ? 流石に死ぬよ!」


 雁斗は必死に抵抗する。


「早く帰ってきたければ、さっさと冷獣を全滅させるんだ。良いな?」


「……分かった。その代わり条件がある。……連絡は自由に可能にすること。……お袋の月命日には必ず墓参りに行くこと。……急用の時には帰宅を許可すること。この三つを飲んでくれたら、言うことを利いてやるよ!」


「良いぞ? 連絡できないと困るし、墓参りは毎月してるし、お前の様子は知っときたいしな」


「はあー。分かったよ。んじゃ冷獣を斬りまくって動物を救ってやるよ!」


 雁斗はリュックを持つと家を出た。


「……とは言ったものの……さて、どうするか」


「あれ? 雁斗さん。どうしたの? 冷獣の気配なんて無いよ?」


 甲多が雁斗と鉢合う。


「お前こそ、身体はもう平気なのかよ?」


「うん! それで雁斗さんに教えてほしい事が有るんだけど」


わりいな。今それどころじゃないんだ」


 雁斗が甲多を通りすぎる。


「困ってる事でもあるの? だったら相談にのるよ。家まで送ってくれたお礼に」


「話したって解決しねえよ」


「いいから話してよ。友達の悩みを軽くしたいんだ」


「ほんと頑固だなぁ……」


 雁斗は甲多に事情を話した。


「なーるほどー。かわいい子には旅をさせろってことだね」


「どういうこった? 甲多」


「迅さんは雁斗さんに強くなってほしいんだよ」


「まっ、なんだって構わないさ。今は俺の明日が大事なんだよ」


「それなら、僕ん家に来ない? 部屋なら父さんの部屋を使ってくれて構わないから」


「良いのかよ? 親父さんの部屋を使ってよ」


「使う時期が限られてるから大丈夫だよ」


「……甲多?」


「いいから行こ! 遠慮なんか要らないから」


「え……えっ!?」


 甲多に押しきられる形で、雁斗は甲多の家に向かった。


※ ※ ※


「……良いわよ? 雁斗君さえ良ければだけど」


「迷惑なんじゃ!?」


「私は歓迎よ? 甲多だって喜ぶしね」


「雁斗さん! 遠慮は要らないよ」


「……それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。……桜庭雁斗、お世話になります!」


 雁斗が土下座をした。


「ほらほら! 顔あげて。自分家と思って、くつろいでね」


 甲多の母親が言った。


「部屋に行こ! 雁斗さん!」


 雁斗と甲多は、甲多の父親の部屋に入った。


「甲多、ホントに良かったのか? 親父さんの部屋を使っちまって?」


「気にしないでいいよ」


「ならいいんだ……。窓、開けるな?」


 雁斗が甲多に確認して窓を開けた。


「空……いつもと違って見えるよ」


「そうかな?」


「今日の俺には、そう見える!」


 雁斗の視界には綺麗な青空が広がっていた。

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