違った青空
「ふわ~……ん? ……僕の部屋?」
寝起きの甲多がボーと見ても、間違いなく甲多の部屋だった。
「母さん? 僕、なんで家に居るの?」
「夕方にね、雁斗君と雁斗君のお父さんが送ってくれたのよ? 甲多が気分が悪くなったからってね」
「そうなんだ……分かったよ。雁斗さんにお礼言わないとね!」
「甲多、もうすぐ晩御飯だからね?」
「うん」
甲多は自室に戻ると、右手首に着けている黄色いリストバンドを外す。
「……えい!」
「……はっ!」
「なんで変わらないんだー!」
甲多が自分のベッドでジタバタする。
「……雁斗さんに教われば出来るかな?」
甲多は決心すると、晩御飯のために下に降りた。
※ ※ ※
翌日。
「母さん。ちょっと雁斗さん家に行ってくる!」
「気を付けてね!」
「はーい!」
甲多は走り出した。
※ ※ ※
「はあ?」
「冷獣が全滅するまで戻ってくるな。以上!」
迅が雁斗にキッパリ言った。
「戻ってくるなって!? ここは俺の家でもあるんだぞ!」
「だーかーら、お前が冷獣を全滅させればマルっと解決だろ?」
「親父も抹殺師だろがあ!」
「俺は俺で動いている。だからお前はお前で動けよ」
迅は、雁斗の荷物を纏めたリュックを渡した。
「いやいや!? 流石に死ぬよ? 流石に死ぬよ!」
雁斗は必死に抵抗する。
「早く帰ってきたければ、さっさと冷獣を全滅させるんだ。良いな?」
「……分かった。その代わり条件がある。……連絡は自由に可能にすること。……お袋の月命日には必ず墓参りに行くこと。……急用の時には帰宅を許可すること。この三つを飲んでくれたら、言うことを利いてやるよ!」
「良いぞ? 連絡できないと困るし、墓参りは毎月してるし、お前の様子は知っときたいしな」
「はあー。分かったよ。んじゃ冷獣を斬りまくって動物を救ってやるよ!」
雁斗はリュックを持つと家を出た。
「……とは言ったものの……さて、どうするか」
「あれ? 雁斗さん。どうしたの? 冷獣の気配なんて無いよ?」
甲多が雁斗と鉢合う。
「お前こそ、身体はもう平気なのかよ?」
「うん! それで雁斗さんに教えてほしい事が有るんだけど」
「悪いな。今それどころじゃないんだ」
雁斗が甲多を通りすぎる。
「困ってる事でもあるの? だったら相談にのるよ。家まで送ってくれたお礼に」
「話したって解決しねえよ」
「いいから話してよ。友達の悩みを軽くしたいんだ」
「ほんと頑固だなぁ……」
雁斗は甲多に事情を話した。
「なーるほどー。かわいい子には旅をさせろってことだね」
「どういうこった? 甲多」
「迅さんは雁斗さんに強くなってほしいんだよ」
「まっ、なんだって構わないさ。今は俺の明日が大事なんだよ」
「それなら、僕ん家に来ない? 部屋なら父さんの部屋を使ってくれて構わないから」
「良いのかよ? 親父さんの部屋を使ってよ」
「使う時期が限られてるから大丈夫だよ」
「……甲多?」
「いいから行こ! 遠慮なんか要らないから」
「え……えっ!?」
甲多に押しきられる形で、雁斗は甲多の家に向かった。
※ ※ ※
「……良いわよ? 雁斗君さえ良ければだけど」
「迷惑なんじゃ!?」
「私は歓迎よ? 甲多だって喜ぶしね」
「雁斗さん! 遠慮は要らないよ」
「……それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。……桜庭雁斗、お世話になります!」
雁斗が土下座をした。
「ほらほら! 顔あげて。自分家と思って、くつろいでね」
甲多の母親が言った。
「部屋に行こ! 雁斗さん!」
雁斗と甲多は、甲多の父親の部屋に入った。
「甲多、ホントに良かったのか? 親父さんの部屋を使っちまって?」
「気にしないでいいよ」
「ならいいんだ……。窓、開けるな?」
雁斗が甲多に確認して窓を開けた。
「空……いつもと違って見えるよ」
「そうかな?」
「今日の俺には、そう見える!」
雁斗の視界には綺麗な青空が広がっていた。




