心の声
「雁斗!」
斬牙が呼び掛ける。
「……」
「斬牙の。なにやら様子がおかしい」
ダガーが何かを感じとる。
「死ねえええ!」
大王のオーラが刃と化して雁斗に襲い掛かる。
「……」
雁斗は、大王に飛び蹴りをする。
「無駄だ。痛くも痒くもない」
大王は、雁斗を押さえ込む。
「終わりだ」
大王のオーラの刃が雁斗を刻む。
「雁斗!?」
斬牙は大王を炎で囲み、雁斗の元に駆ける。
「雁斗……お前なんともないのか?」
斬牙は、傷ひとつ無い雁斗に驚く。
「……さっきから呼んでいたのはキミか……?」
「何を言ってるんだ? こんなときに、笑えない冗談はよせ」
「……悪いけど……キミのこと、わからない」
雁斗は、ポケットに手を突っ込んだまま、素っ気なく言った。
「雁斗、どうしたんだ!」
「俺が雁斗という名なのは、さっき聞いた。あとは何もわからない……覚えていない。そんなことより下がっていろ……来る」
斬牙の炎が破られ、大王が金色のオーラを輝かせる。
「悪あがきを! そんなに苦しんでくたばりたいか!」
金色のオーラが巨大な剣と化した。
「跡形もなく、塵のひとつも残してやらん!」
大王が剣を振りかざす。
「逃げるぞ! 悔しいが、勝てる見込みがない!」
「キミは、逃げろ。俺は、大王を片付ける」
「何言って……」
斬牙が言葉半ばで、雁斗に突き飛ばされる。
「……」
雁斗の姿勢は変わらない。
「ふっ! 口ほどにもなかった……な!?」
「どこ狙ってんだよ?」
「ば、馬鹿な! 確かに当たった筈だ!?」
「……やってみろよ……」
「かあっ!」
オーラの剣が振るわれ、それは確かに雁斗を斬った。が、剣は雁斗の身体をすり抜けていた。
「やれやれ。それが、大王のオーラの力か? だったら拍子抜けもいいところだ」
雁斗は、足をコツンと鳴らす。
「……うっ……!? 身体が……動かんだと!?」
「もう終わりか? なら、トドメといこう」
雁斗がポケットから右手を出す。
「大王だってあるだろう? 心臓」
雁斗の右手が、大王の身体を突き刺す。
「なんの……つもりだ?」
「不死身なんだってな。けど、心臓が無くなれば……」
雁斗の右手が大王の心臓を掴む。
「無駄だ! 心臓を潰しても、いくらでも再生する。いくらでも蘇るのだ!」
「潰しはしない。俺が使わせてもらう」
「な……に!?」
大王は身体を動かせぬまま、無様に心臓を引き抜かれた。
「……頂く!」
雁斗は、大王の心臓を自分の身体に捩じ込む。
「おい雁斗! なにやってる!?」
「……それは……こっちの台詞だ……」
「はあ?」
「さっさと……大王の身体を……滅っせ!」
「だが、大王は不死なんだぞ!?」
「いいからやれ!」
「……分かった……」
斬牙は、ダガーに頼み大王を消滅させた。
「雁斗?」
「終わったんなら……去れ」
雁斗の呼吸が荒くなっていく。
「何を言っている! お前も……!?」
迅が雁斗の腕に触れる。そして、迅は違和感を覚えた。
「迅さん?」
「斬牙君。ここは言う通りにしよう」
「え?」
「ダガーと秋良君もだ。行くぞ」
「親父さん、どうして! 貴方は、雁斗を見捨てるんですか!」
「あいつを助けたいなら、今すぐ離れるんだ!」
「……分かりました……」
迅達は、その場を離れていく。
「……やはり……そうくるか」
雁斗の身体を金色のオーラが包む。
「記憶が、こんがらがってるってのに」
雁斗の身体が冷獣人の姿へと変わっていく。
(この身体を簡単に渡すわけにはいかない)
(大王は、不死身だあああ!)
(ごちゃごちゃウッセーよ! 他人の中で好き勝手言いやがって! これは……俺の身体だー!)
一人の身体で、三つの心がぶつかり合っていた。




