受け継がれる鼓動
「お前が……雁斗を!」
気配を追い、タワー前にたどり着いた迅達。そして、金色に輝く冷獣人を見るや否や、迅が構わず突っ込んでいく。
「新手か」
冷獣人は迅の刀を受け止めると、さらりと迅ごと投げ飛ばす。
「……小癪だ!」
迅は、刀を納めると一気に詰め寄る。
(一閃)
「うぐ!?」
冷獣人の身体が吹き飛ばされる。
(頭蓋衝き)
鞘で冷獣人の頭を地面に叩きつけた。
「……生意気に!?」
冷獣人が、馬乗りになっている迅を殴りにかかる。
(峰防)
襲い掛かる拳を峰で防ぐ。
「フン!」
そのまま刀を突き刺した。
「ぐがあああ!!」
「騒ぐな。楽にしてやる」
刀を刺した箇所に鞘を抉り込むと、冷獣人の眉間に刀を容赦なく突き刺した。
(振刀)
「あああああ!!!?」
刀に振動が起き、冷獣人の瞳孔が開く。
「滅べ」
冷獣人の頭蓋が破裂した。
「…………!!」
近くで様子を見ていた斬牙が嘔吐する。
「無理もない。斬牙のには刺激が強すぎる」
ダガーが斬牙の背中を擦る。
(……あれが迅さんの実力……!?)
「ダガー、こいつを消し去ってくれ」
「良いのか?」
「俺にコレを消し去る力はない。頼む」
迅が疲れきった様子で座り込む。
「了解した」
ダガーは、冷獣人の身体を跡形もなく消し去った。
「……迅さん……」
「王は、滅びた。それだけだ」
「……!?」
斬牙がタワーを見上げる。
「どうした? 斬牙君」
「……冷獣人が……融合してる!?」
「なに!?」
うちひしがれていた迅もタワーを見上げた。
「ウガアアア!!」
金色のオーラを纏いながら、冷獣人が雄叫びをあげる。
「なんだアレは!?」
「ウガアアア!!」
冷獣人は、タワーから飛び降りた。
「なんだ、お前は!」
「冷獣人の総意。鼓動を合わせし者」
「どこに居た!」
「お前が生んだのだ、人間。王を殺した罰を与えるために生まれたのだ」
「つまり、王の死が条件だったのか」
「王の身体をベースに冷獣人達が融合した。記憶も引き継いでいる」
「そんな筈はない! 王の身体は消し去った!」
「消し去ったつもりだったんだろう」
「……なんてことだ!」
迅が構える。
「王を殺した罪は大きいぞ!」
冷獣人のオーラが増していく。
「迅さん! こいつは危険です!」
斬牙は、炎で冷獣人を囲むと下がっていく。
「仕方ない!」
迅も後退していく。
「無駄だ! 逃げることなど許されない!」
冷獣人が炎を吸収して突っ込んでくる。
「はっ!」
ダガーの光線が当たる。
「無駄だあああ!」
光線も吸収してく。
「振空百艶流斬!」
秋良の刀が冷獣人を捉える。
「無駄だ」
「街中で人が死んでいた。キサマ等の目的はなんだ!」
「人間に代わり、人間になることだ!」
「!?」
秋良が吹き飛ばされた。
「人間は、自然に害だ。人間の進歩は、自然の衰退に繋がった!」
冷獣人が迅を叩きつける。
「……そのためなら……人間を殺してもいいのか!」
「自然を犠牲にしてまで、進歩が欲しいか! 人間!」
迅の身体が押し付けられる。
「やめろ!」
斬牙の短剣が冷獣人に刺さる。
「小癪な!」
冷獣人が短剣を引き抜いて斬牙に飛ばした。
「このぉ!」
その隙をついて、迅が刀を刺した。
(振刀)
刀が振動を起こす。
「弾けろ!」
「……無駄だ」
冷獣人は何事もなく迅を空中に放ると、刀を投げ刺した。
「迅さん!」
斬牙が駆け寄る。
「……うっ!?」
「肩なら治癒術でいける」
斬牙は、治癒術を施す。
「逃げることも出来ないとは……すまない」
「諦めちゃ駄目です! 抹殺師が諦めたら終わりです」
斬牙が迅を叱咤激励している傍で、ダガーと秋良が押されていく。
「我の攻撃が通じんとは! どうしようもない」
「オレの刀も……くそ!」
「大王を殺すことなど不可能。大王は、絶対の不死身だ」
大王のオーラが膨らんでいく。
「死ねえええ!」
大王のオーラが剣となり、振り落とされる。
「ぐっ!!」
「だあっ!」
ダガーと秋良が爆風で飛ばされる。
「ダガー!? 秋良!!」
「何てことだ」
斬牙と迅が駆け寄る。
「……誰だ……大王の攻撃を防ぐとは……」
「なんだって!?」
大王の言葉に驚き、斬牙が大王の方を見る。
「……さあ?」
「誰だと訊いている!」
大王の声が大きくなる。
「「!!」」
四人が一斉に驚いた。
「知らねえよ」
「からかうかあああ!!」
大王のオーラが刃と化した。
「やってみろよ? 大王さんよ」
「……雁斗」
斬牙が、その名を呼んだ。




