進化の王
「ラー嬢、二人を頼む」
「気をつけなよ?」
「気をつけてみるさ」
羅阿奈に返事をすると、二本の剣を重ねながら冷獣人に向かっていく。
「じゃまだ!」
冷獣人は、鋭い爪を出す。
「貧相な爪だ」
「にんげんに、なにができる?」
「……貴様を消し炭にできる……」
斬牙は、剣を重ねたまま冷獣人に突き刺した。
「さしたな。へいきだが」
「平気か?」
冷獣人を業火が包む。
「またか」
「さっきのは、あくまで確保用だ。今の炎は、お前を消し炭にする用だ」
斬牙が静かに剣を抜いた。
「甲多、打ち上げろ」
「うん」
甲多がクナイを振って風を起こす。
「なんだ……なになんだ」
冷獣人は、一気に上昇する。
「僕は、お前を許せない!」
上昇した冷獣人に、甲多が風を纏ったクナイを投げた。
「つらぬかれた。いたい」
冷獣人を貫いたクナイが、再び冷獣人を貫く。
「また、つらぬいた。いたい」
クナイは冷獣人に貫きを繰り返していく。
「疾風斬。クナイが風を纏い、気の済むまで敵を突き刺す技だよ。僕の気が済むまで、ね」
「があああ! あつい! あつい!!」
「業火斬だ。相手が燃え尽きるまで消えることはない。俺の怒りと同じようにな」
「ゆるさない……ゆるせない! にんげんんんんん!!」
冷獣人が、火の玉のように向かってくる。
「があ……ああ……」
甲多と斬牙の寸前で冷獣人は燃え尽きた。
※ ※ ※
「そんなものか? 人間の力は」
ビルや施設が崩壊した場所を威風堂々と冷獣人が歩く。
「撃て! 撃ち続けるんだ!」
特殊部隊が狙撃を繰り返している。
「ふっ。くだらん……くだらない」
崩壊したビルの瓦礫を軽々持ち上げると、特殊部隊に投げ込んだ。
「退避だ!」
「逃がさない」
冷獣人は、投げた瓦礫を殴り砕き、特殊部隊に当てていく。
「があ!」
特殊部隊は、力なく倒れていく。
「……惨いのじゃ……」
ビルの瓦礫の間に、燐が運よく隠れていた。
「……」
「!?」
燐の目の前に、虚しく倒れた特殊部隊員がいた。
「すまぬ。ワラには何もできない」
燐は手を合わせた。
「人間の気配」
(なんじゃ!? 瓦礫が揺れておる)
燐を囲んでいた瓦礫が退かされる。
「見つけた。生きてる人間」
「しまったのじゃ!?」
燐が冷獣人に見つかり足早に逃げていくが、冷獣人に簡単に捕まってしまう。
「離すのじゃ!」
「殺してやる」
「がっ!!」
冷獣人に殴られて燐が気を失う。
「腕を折ろう」
冷獣人が燐の右腕に手を掛ける。
「折るよ」
ゴキンと音を立てて燐の腕が折れた。
「次は……。誰だ?」
身体に痛みを感じて冷獣人は動きをとめる。
「燐!」
秋良の視界に、燐の姿が入る。
「痛かったぞ」
「ざけんな! 街をこんなにしやがって!」
弓を構えたまま、雁斗が言う。
「人間は皆殺しだ」
「一体、どういうつもりだ」
秋良が刀を構える。
「知識を得た以上、自由を得る」
「冷獣人に自由なんざない」
「だからだ」
冷獣人が瓦礫を秋良に投げるが、雁斗の矢が瓦礫を砕いた。
「お前、ほかの冷獣人と違うな。言葉は流暢だし、意思も持ってるみたいだしな」
「ワイは……冷獣人の王」
「王ねえ。王なら何してもいいわけじゃねえ!」
雁斗が光の矢を放つ。
「王は絶対だ」
鋼のように発達した身体が、光の矢を打ち消した。
「そんな絶対、俺が破壊してやらあ!」
雁斗は抹殺器をガントレットにする。
「燐の分まで、オレが叩きのめす!」
秋良は刀を強く握った。




