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抹殺師  作者: 碧衣玄
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生を脅かすもの

「おおお!」


 雁斗は空高く舞い上がり、強力な拳を突き落とす。


「じゃまだ」


 白い毛で覆われた獣が、雁斗に飛びつく。


「そっちこそ邪魔だ!」


 雁斗が指を組んだ両手を振り下ろす。


「がっ……ああ!」


 獣が地面に叩きつけられる。


「……白昼堂々とふらつきやがって! 進化した途端、野生の勘が鈍ったのかあ?」


「ぼくは、ちしきをえた。にんげんをこえた」


「なら、見せてみろよ……お前の知識を」


 雁斗が指を動かして挑発する。


「みせてやる」


 獣は鋭い爪を生やすと、雁斗に猛攻する。


「……どうした? そんなもんか!」


 雁斗が、獣の爪を切り裂いた。


「う、う、うおおー!」


 臆することなく猛攻を繰り出す。


「大振りだ。そんなんじゃ……」


 雁斗は獣の腕に乗っかると、そのまま獣の右肩を打ち付けた。


「ぐがあああ!」


 獣は肩を押さえて悶えている。


「面倒は御免だ。終いにする」


 雁斗は、一気に加速する。


「……ぼくは……にんげんを!」


「抹殺拳!」


 雁斗は、そのまま拳を獣に炸裂させた。


「……なんとかなったが……」


 雁斗が、少し離れた街を見つめる。


「冷獣人。厄介だ」


 雁斗は、街に向かった。


※ ※ ※


「突風斬!」


「うぐううう!」


 甲多の攻撃を受けて、冷獣人が膝をついた。


「甲多、とどめを差すんだ」


「分かってるよ、きょうさん」


 甲多はクナイを冷獣人に突き刺した。


「春になり、本当に活発になるとはな」


「街の人達が怯えて出てこなくなっちゃった」


「どちらに怯えているのか。普通的に見れば、抹殺師こちら冷獣人やつらも化物だ」


「それでも戦わないと。僕達が負けたら、皆、死んじゃう」


「その通りだ」


 甲多とダガーは動き出した。


※ ※ ※


「放火斬!」


 斬牙の炎が、冷獣人を燃やし尽くす。


「これで……五体か。キリがない」


「当たり前よ。冷獣を思いの外、倒せなかったもの。その分が進化してるんだから当然よ」


「キツいな、ラー嬢。現実逃避もさせちゃくれないとは」


「私達は、まだマシ。戦えない人達は、まるで地獄にいる気分でしょうに」


 羅阿奈が弓を構える。


「戦えない人達、か。そうだったな」


 冷獣人の大群が迫ってくる。


「……レクイエムの通りね。都心に吸い寄せられているかのようにゾロゾロと……」


 羅阿奈が矢を放つ。放たれた矢は上空に舞い上がると、一気に地上に降り注いだ。


「がああああ!」


「どう? 光の雨は」


 倒されていく冷獣人に羅阿奈が言った。


「やはり駄目か」


「冷獣人を倒しても……元に戻らない」


 冷獣人は、そのままの姿で息絶えている。


「救いがないな」


「気の毒なのは百も承知だけど、ここは割り切らないとやってられないわよ」


「……承知さ」


 斬牙は、冷獣人に手を合わせた。


※ ※ ※


「お次の方」


「簡易ですが、ベッドを設けました」


 病院では、看護師達が慌ただしく動いている。


「これ程までとな」


 ソファーに腰掛けているレクイエムが言った。


「冷獣人が現れて、早一週間。日本でも指折りの病院が満員を超えている。大なり小なり、被害者は増え続けている」


 壁に寄り掛かりながら、迅が言う。


「私は……取り返しのつかないことを」


「思い詰めるな。幸いにも死者は出ていない。機動隊も動き出している。味方はいるんだ」


「しかし!」


「起源はどうであれ、繁殖や進化は自然の摂理だ。人間には限界がある。自然に人間は抗うことは出来るが、逆らうことはできない。老いも、抗うことはできても、逆らうことはできないようにな」


 迅は、掌を見る。


「俺も歳を取った。周囲からは、まだまだこれからだと言われるが、身体は正直なんだよ」


「迅」


「レクイエム、お前の身体……やつれてるだろ」


「……目敏めざとい奴め」


「老いに逆らった代償は、それほどまでに大きいというわけか」


「ふふ。急激な若返りに身体が耐えられなかったのだろう。来年の桜を見れれば御の字か」


「……そう……か」


 迅は拳をつくった。


※ ※ ※


「舞莉ちゃん!」


 美加が舞莉愛を避難させる。


「ごめんなさい、美加ちゃん」


「いいの、いいの。無事ならね」


「にん……げん!」


 強靭な爪が二人を襲う。


「こんな住宅地にまで現れちゃって!」


 美加が舞莉愛を庇う。


「美加ちゃん!?」


「こんなところで、舞莉ちゃんを傷つけちゃったら、あたし、斬牙君に顔向けできない」


「じゃまだ」


 美加に爪が迫る。


「それは、わたくしも同じです! 美加ちゃんに何かあったら、甲多くんに会わせる顔がありません」


 舞莉愛も立ち上がる。


「舞莉ちゃん」


「中学生になったんです。これから楽しいことが沢山あるのに、こんなところで命を落としたくはありません」


 舞莉愛はハンカチを取り出した。


「!」


 タイミングよく、爪をハンカチで流す。


「こちらです!」


 ハンカチを持ちながら舞莉愛が駆ける。


「舞莉ちゃん!」


 美加もハンカチを取り出して走っていく。


「じゃまだ!」


 冷獣人の爪が、二人のハンカチを裂いた。


「やられちゃったわ」


 美加の視界に空き地が入った。


「舞莉ちゃん、こっちに!」


 美加が舞莉愛の手を引いて、空き地に走る。


「美加ちゃん!?」


「……あたし……少しだけ、剣道をやったことがあるのよ……」


 美加が、空き地に落ちていたバットを拾った。


「……軽い金バットで助かったわよ……」


 美加は震える手でバットを構える。


「じゃまだあああ!」


 冷獣人の爪が迫る。


「このー!」


 美加は渾身の力でバットを振りおろした。しかし、無惨にもバットは真っ二つにされてしまった。


「……あ……ああ……」


「美加ちゃん!!」


「……あたしに突き刺したのを……後悔なさい!」


 美加は裂かれたバットで冷獣人を刺した。


「切り口がイビツじゃ……刺されても……文句ないでしょう!」


「がああああ!」


 美加にバットでえぐられ、冷獣人が悶える。


「さあ、我慢大会といこうじゃないの!」


「!」


 冷獣人が爪を美加から引き抜き、刺されたバットで美加を殴った。


「美加ちゃん!!」


 舞莉愛が美加に駆け寄る。


「……だめ……きちゃ」


「じゃまだ!」


「美……加……ちゃ……」


「……舞莉……ちゃん!」


 舞莉愛が美加を庇うように、冷獣人に背後から爪で刺された。


「じゃまだ、にんげん」


 冷獣人が二人に、とどめを刺そうとする。


「ぐっ!?」


 冷獣人の周囲を業火と疾風が覆う。


「殺される準備は……」


「……できてるよね!!」


 斬牙と甲多が鬼の形相で冷獣人を睨んでいた。

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