集結
夏休みが終わり、新学期が始まった学校に子供達の声が戻っていた。
「見てくれサックー! オイラの焼けた身体を!」
イッチが、日に焼けた身体を自慢げに見せてくる。
「すっ……ごいね」
甲多が若干引いている。
「暑苦しいわね! まだ暑いんだから勘弁して!」
羅阿奈がジトッと見ている。
「いいね~、そのジト目。たまらん」
「ばっかじゃないの、変態」
「言葉ぜめもサイコー!」
「……ばか過ぎて言葉が出ないわよ」
羅阿奈が呆れる。
「元気でいいじゃないか?」
斬牙が教室に入ってきた。
「おはよう斬牙さん」
「よう、元気そうだな」
「結局、会えなかったね」
「いやな、すっかり忙しくてな。施設長の話しを聞かされたり、稽古に付き合ったり」
「稽古?」
「舞莉愛が空手を習っていてな。俺も舞莉愛からかじってるんだ」
「舞莉愛さんは?」
「もう来るだろう」
斬牙が教室から廊下を覗くと、ゆっくり歩いてくる黒髪の少女がいた。
「舞莉愛」
「おはようございます」
教室に入るなり、舞莉愛がお辞儀をする。
「そんな丁寧なのいいんだよ」
「ですが、こうして皆さんにお会いするのは初めてですので」
「気遣いは、程ほどにな?」
「はい」
舞莉愛は教壇横に立つ。
「お、もう来ていたの? ごめんね!」
担任が入ってきた。
「もう気付いてると思うけど、今日から同じクラスになる、黒崎舞莉愛さんだ。半年間だけど仲良くしてあげるように」
「黒崎舞莉愛と申します。わたくしの希望で、このような時期の転入となりました。短い間ですが、よろしくお願いします」
舞莉愛は深々とお辞儀をした。
※ ※ ※
放課後。
「雁斗くんと羅阿奈ちゃんは、仲が大変よろしいんですね」
「えー!? どうしてそうなるの!」
「わたくしには、判ります」
「気のせいよ? 私と雁斗は、ただの幼なじみ」
羅阿奈が訂正した。
「驚いた……もう、打ち解けていやがる」
「女子は波長が合いやすいんじゃないかな?」
「そういうもんかねぇ」
雁斗はランドセルを肩に掛ける。
「雁斗、冷獣の件だが……」
「電話で話したまんまだ。覚悟は決めてる」
「そうか。俺も、レクイエムとやらに会いたいが」
「じゃあ、来いよ。家に居るから」
「そうさせてもらう」
斬牙も、ランドセルを背負う。
「斬牙くん、お供します」
「舞莉愛には関係ないが?」
「それでもです」
「……そう、か。分かった」
斬牙が許可した。
「いいの? 舞莉愛ちゃんまで巻き込んで」
「舞莉愛は、多分知っている。それを承知で来るって言ったんだ。拒めないし、拒みたくないさ」
斬牙の背中を羅阿奈が見つめる。
「どしたの?」
クラス日記をつけていた美加が訊く。
「抹殺師の事で、ちょっとね」
「そうなんだ。……ごめんね、あたし、抹殺師じゃないから力になれなくて……」
「そんなことないよ。美加ちゃんが応援してくれているから、甲多くん、頑張れるんだよ。もちろん、私達もね」
「そうならいいけど」
「しょんぼりしない! 美加ちゃんは笑顔が一番!」
羅阿奈が励ます。
「んじゃ、行きますか」
雁斗達は教室を出た。
※ ※ ※
「どうしたのじゃ? 秋」
「思ったよりも静かなんだな、都会は」
秋良と燐が、タワーをバックに立っていた。




