表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
抹殺師  作者: 碧衣玄
50/80

砕かれた真実

「あ! 甲多お兄ちゃん。こんにちは!」


「こんにちは、螺雨くん。雁斗さんと迅さん、居る?」


「うん!」


「よかったあ! 案内しといて空振りだったら悪いからね」


 甲多がレクイエムを見る。


「私は空振りでも構わなかったよ?」


「何回も来るの大変だもん」


 甲多とレクイエムは歩きだす。


(今の人、誰だろう?)


 螺雨は首を傾げた。


※ ※ ※


「聞いてねえぞ!? 魔癒術に、んなデメリットがあるなんて!」


「そうなのか。きっと、お前に気を遣ったんだ」


羅阿奈あいつが気を遣う理由がねえ!」


「そうかねえ? 女の子のほうが精神的に大人だからねえ。案外、分からないぞ?」


「意味わかんねえ」


 雁斗は首を傾げた。


「ごめんください」


「おい、お客さんだ」


 迅が顎で雁斗を使う。


(自分で出ろや!)


「ごめんください。甲多です……あ、雁斗さん」


「甲多! どした? 何かあったか!」


「そんなに驚かなくても……」


「何でもなけりゃあいいんだ。入れよ」


「うん。お邪魔します」


 甲多が入る。


「……で、あんたは?」


 雁斗が警戒の目でレクイエムに訊く。


「名前を訊くときは、まず自分から名乗るものだ」


「ここは俺の家だ。つまり、主導権は俺だ」


「……レクイエムだ」


「……は?」


 雁斗が目を丸くする。


「レクイエムだと言っている。聞こえなかったのか?」


「……ざっけんな! 俺の聞いているレクイエムは、そんな子供じゃねえ!」


「人を見た目で判断するような子供に育て上げたのか? 迅」


「!?」


 迅もレクイエムを見た。


「本当に……レクイエムなのか!?」


 迅も目を丸くする。


「……呆れたものだ……。親子揃って、行動が同じとは」


「……雁斗、どうやら本人らしい。通そう」


「マジかよ!?」


 レクイエムも、中へ入った。


※ ※ ※


「レクイエム、一体何があった。話せ」


「十年振りの再会なのに涙も無しと?」


「お前の変わりように驚いて、それどころじゃなくなった」


「まあいい。茶をくれ」


 レクイエムが椅子に座った。


「客なら客らしく畏まれってんだ!」


「それが、お客に体する持て成しか? 紫」


「俺は紫じゃねえ! 雁斗だ!」


「なんでもいい。茶を出せ」


「さっき淹れたばっかのコーヒーで勘弁してくれ。緑茶は切らしてる」


「勘弁してやろう」


(こんのヤロー~!)


 雁斗はカップにコーヒーを注ぐ。


「話が途切れたな。さて、どこから話そうか」


「最後に会った日から話せ」


「と、言われても……長くは喋りたくない。ざっくり言うと……代償に若返った、だ」


「ざっくりしすぎだ。それに、何を代償に若返ったんだ? トンデモ実験の影響なのは想像つくが」


「寿命をちょいと減らしたんだ。なーに、二十年縮まっただけだ。余計な感傷は要らんよ」


「何のために若返った。目的もなしに」


「目的はある。冷獣を抹殺するためだ」


「……それなら俺達に任せとけば……」


「悠長なことを言っている時間は無い。あと……一 年で日本は滅びる」


「どういうことだ?」


「この間、都心で暴れちゃってたな。ご苦労なことだ」


「はあ!? あんた、あの場に居たのかよ!」


 コーヒーをもてなしながら雁斗が加わる。


「偶々だ。私も加わっても良かったんだが、いまいち気が乗らなくてね」


 レクイエムはコーヒーを飲む。


「こっちは命のやり取りだったんだぞ!」


「知らん。大体、あんなザコに手こずっている時点でダメだが」


「んだと!?」


「……雁斗、ちょいと退け。話が途切れた」


「……ちっ!」


 雁斗が椅子に座る。


「それで……あと一年で日本が滅びるとは何だ」


「冷獣が進化している、と言えば簡単か?」


「進化?」


「そうだ。猿が人に進化したように、冷獣も進化している」


「んなっ!?」


 雁斗が反応する。


「なんだ、紫。過剰反応だ」


「雁斗だ! あんたと同じことを言ってたんだ、ラグナロクが!」


「ラグナロク? へえ~、ヤツが」


「へえ~、じゃねえ! てか、やっぱりラグナロクと繋がってやがったか!」


「やっぱり?」


「俺達が都心でやりあってたのがラグナロクだったんだ。ラグナロクから水晶玉の元を渡された。そんで親父から聞き出した結果、あんたにたどり着いたんだ」


「随分と遠回りな」


「しゃーねえだろ……親父が抹殺師の事を何も話してくれなかったんだ」


「うん? 紫、お前は抹殺師なのか?」


「今更かよ!?」


「結局、遠回りとはいえ、迅から話を聞いたのだろう? よくそれで抹殺師を続けてられるな?」


「どういうことだ?」


「……宇美うみを冷獣に殺されているんだ。普通なら、恐ろしくて見ることも避けたいだろうに」


「レクイエム!!」


 迅が会話を遮る。


「誰だよ、うみって?」


「おかしな子だな? 母親の名前を知らないのか?」


「……な、なに言って……お袋は事故で……」


「事故? 迅、ちゃんと子供に伝えなければ駄目じゃないか」


「事故で……死んだんだろ!?」


「……」


 迅が黙る。


「宇美は、冷獣に殺されたんだよ。周りには事故死で通すと言っていたが、まさか息子にまでとはね」


「なんだよ……なんだよ!?」


「冷獣の存在を隠すためとはいえ、辛かったのは解るが、同じ辛さを息子にまで持ち込むな。早い段階で伝えれば、辛さが薄れていくのが早かっただろうに」


「雁斗には……冷獣に対して……邪念を持たずに向かってほしかった」


「親父!?」


「騙して悪かった」


「……他は……他には! 他に騙してることは!」


「冷獣の祖の行方を知らんと言ったが、本当は知っている。冷獣の祖は……俺が殺した」


「いつだ!」


「十 年前、宇美が殺されたときに。その場で」


「……ふざけんなあああ!!」


 雁斗がリストバンドを外して叩きつけた。


「雁斗さん!?」


 甲多は雁斗を追い掛けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ